関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。

***

今回の依頼者は、壮一・祐美子夫妻(仮名・ともに70歳)。ふたりともいかにもビジネスパーソンといった雰囲気で、東海地方で大きな会社を経営しています。

「外資系銀行に勤務する息子(34歳)とこの3か月間、連絡が取れない」と私たちのところに、連絡があり、相談を受けたのですが、肝心の息子さんは6年も前に退職しており、住んでいたマンション(所有物件)にも人の気配がありませんでした。

メールの履歴から、手がかりを集め、息子さんがいるであろうエリアに私たちが赴くことにしました。

【その1はこちら

牛丼弁当を2つ購入して帰宅する

息子さんがいるであろうエリアは、いわゆる“下町”で、小さな商店がひしめき、昼からお酒の匂いをさせている人もいました。

息子さんが住んでいるエリアの、コンビニの店員さんに聞き込み調査をし、写真を見せたら「最近はみんなマスクをしているから、写真を見せられてもわからない」と言われました。

ペアの探偵が「男性で一人暮らしで、料理もしている気配がなかった。母・祐美子さんはかなり衛生に厳しいとみたので、個人商店で彼は買い物をしないんじゃないかな」と言うので、チェーンの牛丼屋さんに行ったのです。

ちょうど昼時だったので、私たちも食事をして、終わったころに店員さんに聞こうとしたところ、カウンターの正面に息子さんにそっくりな人が牛丼をかっ込んでいました。あっという間に食べ終わって、お金を払って出て行ってしまったので、私は注文をしたけれど、一口も食べずに、ペアの探偵に託して後を追いました。

牛丼を食べている顔を見ても思いましたが「かなり太ったな」という印象です。それまでは中肉中背で、どちらかというとほっそりした男性だったのに、今はかなり丸くなっている。

お腹も妊婦さんのように突き出ており、お尻も大きい。後を追いながら動画で撮影し、壮一さん・祐美子さん夫妻に送ると「息子で間違いありません!」と喜びの返信が来ました。

歩く姿や仕草のクセというのは、親は見ているものです。

息子さんの住んでいるワンルームマンションを特定してから電話をすると、「私達が話したら、彼はきっと驚いてしまう。そのまま様子を見ていただき、彼が何をしているか調べてください」とおっしゃっていました。

その夜18時に、息子さんは昼間よりはパリッとした姿で出てきて、プレハブ小屋の中に入って行きました。

外から覗くと、そこは経済的に余裕がない家の子供を集めた塾で、息子さんが生き生きと教えている姿を撮影して送信。

23時くらいに、別の牛丼チェーンの持ち帰り弁当を二つ購入して帰宅。24時に部屋の電気が消えました。

【探偵は本人と話すことができたのだろうか。次ページに続きます】

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