江戸の長屋にごろんと横たわる6尺(約180cm)の巨大な張り子。実はこれ、江戸時代の唐辛子売りの部屋(左)をCG再現したものです。

CG制作/中村宣夫

現代でもおなじみの七味唐辛子ですが、もともとは両国橋西側の薬種問屋や医者の間で知られていて、「七色唐辛子」と呼ばれていたそうです。それが江戸っ子が好きなそばとの相性がよかったため、急速に広がりました。

唐辛子売りはこの巨大な唐辛子の張り子を肩から下げ、中に七色唐辛子の小袋を入れて、「とんとん唐がらし、ひりひりとからいが山椒の粉、すはすはからいが胡椒の粉、七色唐がらし」と売り歩いたそうです。値段は1袋3文(75円)程度でした。

明和2年(1765)には市村座で沢村喜十郎が張り子の大唐辛子を背負い、荒事を熱演したことにより、この張り子を背負う唐辛子売りが流行しました。

*  *  *

この唐辛子売りを始め、江戸の花形職業「大工」や「傘張り職人」といった職人の長屋内部、さらには湯屋、高級料亭まで、落語や歴史小説でおなじみの空間を完全CG再現したサライ・ムック『サライの江戸 CGで甦る江戸庶民の暮らし』が発売になりました。

前巻『江戸城と大奥』に続く、この「サライの江戸」シリーズの目玉は、なんといってもリアルなCGです。特に今回の巻頭企画で紹介する「大江戸日本橋の風景」の美しさは必見で、人々が往来する日本橋と、その遙か向こうに浮かび上がる富士山の姿は、まさに江戸時代にタイムスリップしたかのようです。

CG制作/中村宣夫

CG制作/中村宣夫

特別付録には「新版御府内流行名物案内双六」を収録。これは、歌川芳艶によって嘉永年間(1848~1854)頃に描かれたもので、蕎麦・すし・天ぷらなど、江戸で流行していた名物が具体的な店名とともに描かれています。裏面には現代字訳と解説を掲載していますので、これとあわせて絵柄を見れば、当時の風俗をより深く理解できます。

当時の食生活や物価など、江戸庶民の暮らしのすべてがわかる決定版『サライの江戸 CGで甦る江戸庶民の暮らし』。ぜひお手にとってご覧ください。

『サライの江戸 CGで甦る江戸庶民の暮らし』
サライ編集部/1,700円/中A4判/128ページ
2018年8月7日発売
ISBN 978-4-09-103554-7

試し読みできます!
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