新発見の『江戸始図(えどはじめず)』から、徳川家康が築城した初代江戸城の実像が浮かび上がった。それは通説を覆(くつがえ)す、実戦に備えた最強の城だった。

CGで再現した初代江戸城の天守。大天守と小天守によって囲われた空間は、およそ2400平方メートル(80×40m)に及ぶ。白漆喰総塗籠の大天守の高さは約68mと推定され、織田信長の安土城や豊臣秀吉の大坂城を優に上回る。

通説を覆す、実戦に備えた最強の城

2017年2月、画期的な史料発見のニュースが島根県松江市から伝えられた。松江歴史館所蔵の『極秘諸国城図』全74枚の中に、最古級の江戸絵図『江戸始図』が見つかり、これまで謎に満ちていた徳川家康が築城した初代江戸城の真の姿が判明したというのである。

『極秘諸国城図』は、もともと松江藩に古くから伝えられていた史料。松江市に長く所蔵されていたが、特段の注意が払われることはなかった。

ところが、長年にわたり城郭研究に取り組んできた奈良大学の千田嘉博教授が『江戸始図』の存在に気づいた。改めて詳しく調査してみると、記載された大名・旗本の名前や官職から、慶長12~14年(1607~09)頃の江戸城を描いた絵図であることがわかったという。

徳川家康が築いた慶長12~14年頃の初代江戸城の様子を伝える、最古級の江戸絵図『江戸始図』。『極秘諸国城図(しろず )』(全74枚)の中から発見された。石垣や濠などの構造が、正確かつ詳細に描き込まれている。松江歴史館蔵

初代江戸城の大きな特徴は3つ。次ページに続きます

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