サプライズ出演で台詞のない演技をした大竹しのぶさん。(C)NHK

ライターI(以下I):『どうする家康』第47回。大坂冬の陣後の和睦交渉の場に、大蔵卿局が登場していましたが、演じていたのがなんと大竹しのぶさん。昨年の『鎌倉殿の13人』でも歩き巫女のおばばを演じていましたから、2年続けての大河出演となりました。

編集者A(以下A):台詞がなかったのが気になりましたが、カメオ出演なのですかね? こうなったら来年の『光る君へ』、再来年の『べらぼう』にも登場願いたいですね。ところで、大蔵卿局は茶々(演・北川景子)の乳母。浅井家時代から茶々に仕えていたということになります。秀頼(演・作間龍斗)の側近として登場している大野修理(演・玉山鉄二)の母でもあります。乳母とその一族が重用されるのは、昨年の『鎌倉殿の13人』で認知が深まりましたが、大坂城で権勢を振るっていたのが浅井家時代ゆかりの人物というのは感慨深いですね。そして……

I:どうしました?

A:大竹しのぶさんと大河ドラマについて少し語らせてください。大竹さんは40年前の昭和58年の大河ドラマ『徳川家康』では主人公家康の母於大の方を演じていました。『どうする家康』では松嶋菜々子さんが演じていた役どころです。当時はまったく気にしていませんでしたが、家康役の滝田栄さんが1950年生まれなのに対して、母役の大竹しのぶさんは1957年生まれという「7つも年下なのに母役」というアクロバティックな状況を難なくこなしていました(※家康の少年時代は子役が演じた)。

I:そんな歴史があったのですね。

A:そして、大河ドラマのオールドファンにとって忘れられないのが1980年の『獅子の時代』。脚本家の山田太一さん唯一の大河ドラマ作品で、菅原文太さん演じる会津藩士平沼銑次と、加藤剛さん演じる薩摩郷士苅谷嘉顕が主人公。いずれも架空の人物というチャレンジングな作品でした。

I:私も好きな大河作品の一作です。

A:オープニングでパリのリヨン駅でのロケシーンが登場する斬新さ、会津藩が移封された下北半島での屈辱的な暮らしぶりを描くなど、大河ドラマ史に輝く名作で、私が全話DVDを購入した唯一の作品です。大竹しのぶさんは、菅原文太さんの妹の平沼千代役で、最終盤で加藤剛さんのもとに嫁ぐという重要な役どころでした。

I:なるほど。

A:今でも憂い深い表情で演じる平沼千代の姿が強烈に思い出されます。大竹さんは『獅子の時代』の3年後に於大の方を演じているのですが、こちらも憂い深い表情が印象に残っています。40年前に於大の方を演じていた大竹しのぶさんの登場はうれしいことでしたが、12月に入って『獅子の時代』の脚本を書かれた山田太一さんの訃報が報じられました。私はたまたまNHKの「ニュースウオッチ9」を視聴していたのですが、流された映像が『ふぞろいの林檎たち』。「なぜ『獅子の時代』を流さない」と衝撃を受けました。

I:『男たちの旅路』も流れたような気がしますが、大河ドラマファンにとっては『獅子の時代』に触れて欲しかったということですね。

A:はい。別番組ですが、訃報を伝えるニュースの際に、三谷幸喜さんが山田太一さんと『獅子の時代』に言及されていました。「さすが、三谷さんは大河ドラマファンの心がわかっておられる」と感動しましたよ。

「自由にやっちゃって」と言われた

I:さて、その大竹しのぶさんからコメントが寄せられました。まずは、「大蔵卿を演じるにあたり、どんな気持ちで臨まれましたか?」という質問に対する答えです。

去年の大みそか、(松本)潤君が「紅白歌合戦」に出演する直前に、私のラジオ番組(R1「大竹しのぶのスピーカーズコーナー」)に出てくれたんです。その時、皆さんより一足先にドラマのDVDをもらって第 1 回を見たのですが、彼がこの大河ドラマの主役を演じるにあたって、相当な覚悟を持ってチャレンジしていることがわかったので、ぜひ応援したいな、私にできることはあるかな、と考えていたんです。ですから、こうしてお声がけいただいて、潤君が一生懸命取り組んでいる作品に出られることを、友人としてとてもうれしく思いました。

A:応援したいということで、わざわざ時間を作って役を用意してもらったんですね。欲をいえば何回か登場してほしかったですね。ちなみに私が大蔵卿局で特別印象に残っているのが、1980年の『風神の門』で大蔵卿局を演じた初井言榮さんですね。この時は大野修理を伊丹十三さんが演じていました。

I:いずれも昭和の名優ですね。さて、大竹しのぶさんの話は「出演が決まった際に松本潤さんと何か言葉を交わしましたか?」「セリフがなく、目線と表情だけのお芝居はいかがでしたか?」という質問への答えに続きます。

セリフがある役でもないですし、1シーンだけの役なんですけれども、「自由にやっちゃってください」みたいなことは言われましたね(笑)。セリフがないお芝居というのは、すごく面白いですね。セリフがないからこそ、あまりやりすぎず、臭くならないようやりたいなというのもありますし、私が出ている前のシーンからの流れと、その次のシーンへの流れも考えて、お芝居を作ることができればいいな、と。監督から、それほど細かいリクエストはなかったのですが、「最後のほう、ガッカリ……みたいな表情を出してください」と言われたので、そこは意識しました。

I:あ、私、この場面は「がっかりした表情」を印象深く見ていました……。こんな背景があったんですね!

A:全48回のうちの第47回でこのようなサプライズ配役があるとは驚きの大竹しのぶさんの登場でしたが、これは次回最終回でも何かありそうな予感がしますね。

I: え?  そういうのあるんですか?  何も聞いていませんが。 あるとしたらいったいなんでしょう。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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