ライターI(以下I):『どうする家康』後半戦の主要キャストが発表されました。今回は当欄注目の登場人物について語りたいと思います。まず、豊臣秀吉(演・ムロツヨシ)の弟秀長に佐藤隆太さんが決まりました。
編集者A(以下A):秀長は、人たらしで奔放な性格の秀吉と異なり、冷静に物事を判断する名参謀として知られています。大河ドラマでは過去8作で登場していますが、印象に残っているのは『おんな太閤記』(1981年)で西田敏行さんの秀吉に対して配された中村雅俊さん。そして『秀吉』(1996年)では竹中直人さんの秀吉に対して高嶋政伸さんが配されました。
I:ムロツヨシさんの秀吉は大河ドラマ歴代秀吉の中でもっともクセの強いキャラクターです。「ムロ秀吉」と渡り合う秀長として佐藤隆太さんは最適なのではないでしょうか。さて、その佐藤隆太さんのコメントです。
時に暴走する秀吉を諌め続け、兄の天下取りに貢献した弟ということで、責任重大だなと。作品の中で秀長の功績が常にクローズアップされることはなくとも、この弟あっての……という兄弟間の呼吸を作れればと思います。
I:佐藤さんの大河ドラマデビューは2007年の『風林火山』。平蔵という、武田に恨みを持つ元村人で後に足軽になった架空の人物でした。当時のインタビューがNHKアーカイブス(人物)に残っています。
山本勘助役の内野聖陽さんからは、とても刺激を受けました。勘助と平蔵は敵対しながらも会えば心を開くという関係だったのですが、いつお会いしても内野さんの熱量がすごい。撮影に臨むときだけでなく、空き時間も含めてストイックなまでに役に向き合っている。その姿勢には感動すらおぼえましたし、大河ドラマの主演というのは計り知れないものがあるなと思ったことを覚えています。
A:あれから16年の歳月が流れたのですね。今や佐藤隆太さんも押しも押されぬ手練れ俳優。「松潤家康」「ムロ秀吉」との絡みでどのような化学反応をみせてくれるのか。
I:楽しみですね。
石田三成は中村七之助
I:さて、続いての注目キャストは、石田三成役に配された中村七之助さんです。主演の松本潤さんとは親友だそうです。こんなコメントを寄せてくれています。
『どうする家康』出演にあたって、やはり友達である松本潤が大河ドラマ初出演で初主演ということで友達としても嬉しいですし、少しでも彼の力になり良いドラマになるように石田三成を一生懸命演じていくつもりです。
A:友人としての参戦を喜んでいるコメントですが、家康と天下分け目の一大決戦を交えることになる石田三成役です。
I:どんなやり取り、どんな絡みをみせてくれるのでしょう。最近の回は演出もキレキレの印象ですから楽しみですよね。
A:七之助さんは1983年生まれですが、1988年の大河ドラマ『武田信玄』に信玄嫡男の義信の幼少期の役で大河デビューを果たしています。1999年に父の中村勘九郎さん(当時/後に十八代目中村勘三郎)が大石内蔵助を演じた『元禄繚乱』で内蔵助嫡男の大石主税を演じるなど、大河ドラマは4作目の参加になります。
I:兄の中村勘九郎さんが茶屋四郎次郎役で登場していますから、兄弟での参加になりますね。兄弟の絡みはあるのでしょうか。
重要キャストで参加の佐藤浩市さん
I:さて、最後に『どうする家康』に佐藤浩市さんが参加することにも触れねばなりません。昨年の『鎌倉殿の13人』では、上総広常役を演じて、その粛清は前半戦の「神回」と称されました。
A:その佐藤さんが演じるのは、真田昌幸です。本作では、武田信玄、勝頼親子が主要なキャストとして登場していますが、真田家は武田家家臣として長篠・設楽原合戦にも参加して昌幸の兄・信綱が討ち死にして、昌幸に家督が回って来たという流れになります。
I:佐藤浩市さんが演じるということは、真田家も主要な場面で登場することになるのですよね。その佐藤浩市さんから寄せられたコメントを紹介します。まずは、真田昌幸の印象についてです。
真田昌幸は、いわゆる「策士」と言われている人で、面白いエピソードがいくつか残っています。たとえば関ケ原の合戦のとき、敵方の伝令から「城を通してほしい」と言われて、面白いからとそのまま通過させたとか。ただ、まことしやかなそういう噂が本当のことだったかどうかは、実際のところはわかりません。でも、ドラマを見る方がどういうふうに受け取るかも含めて、楽しく見せたいと思っています。皆さんが持っているイメージを膨らませるのか、逆に全く違った見せ方にするかっていうことが、僕らの仕事なので。そういった遊びができるかどうかは、もちろん脚本次第ではありますが、従来とはどこか違った真田昌幸の側面が出せたら面白いかなと。皆さんが期待しているであろう、昌幸の老獪さは、十二分に感じていただけると思います。
A:佐藤浩市さんが、真田の知略をどのように表現してくれるのか? それを思案するだけで、俄然盛り上がりますね。そして佐藤浩市さんは、2年連続で大河ドラマに出演することについても語ってくれました。
2年連続での出演依頼があったときは驚きました。ただ、座長の松本潤さんのことは昔から知っていますから、何かご縁があればお手伝いできたらなという思いはありました。ですから、お話がきたときは「微力ながら参じます」と、そういう気分でした。これまで僕は、三谷さんの作品では『新選組!』で芹沢鴨を、『鎌倉殿の 13 人』で上総広常をやっていますが、それとはまったく違った出方の中で、お客さんに楽しんでいただければと思います。
I:松本潤さんと佐藤浩市さんは、これまでテレビ番組でもご自身の口から言及していますが、家族ぐるみで親しいお付き合いがあるようです。番組を見た印象でいうと「まるで親戚みたい」な付き合いです。その佐藤さんが真田昌幸役で登場とは本当に楽しみです。
A:本当ですね。スリリングで手に汗握る「これぞ大河ドラマ!」という演出を期待したいですね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。
●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり