服部半蔵(左/演・山田孝之)と本田正信(演・松山ケンイチ)のやり取りがおもしろい。
(C)NHK

ライターI(以下I):於大(演・松嶋菜々子)と久松長家(演・リリーフランキー)夫妻が子供を連れて岡崎にやってきました。子供たちは元康(後の家康/演・松本潤)の異父弟になりますが、以前お話した通り、この異父弟の中からも大名が出るんですよね。

編集者A(以下A):伊予松山藩や松平定信が養子に入った白河藩なんかが異父弟松平(久松松平)ですね。白河藩は移封して幕末には桑名藩主です。

I:歴史に刻まれる藩も元康の異父弟たちが源流だったりするんですね。

A:さて、今週の大テーマは駿府に残されたままの瀬名(演・有村架純)らの奪還作戦です。酒井忠次(演・大森南朋)が、〈田植えの始まる前に戦を始めねばならぬ〉と言っていました。以前、合戦の場面でどこどこの村のなにがしが討死、などと戦況を整理するシーンが挿入されていましたが、平素は農作業に従事する雑兵だと思われます。農繁期に戦をしたら彼らを動員できませんし、無理に動員したら農作業に支障が出てしまいますものね。

I:なるほど。さりげなく「戦国のリアル」を挿入してきたということなんですね。

本多正信の登場

I:さて、第5回のトピックスは本多正信(演・松山ケンイチ)と服部半蔵(演・山田孝之)の登場でしょう。2012年の大河ドラマ『平清盛』で清盛を演じた松山ケンイチさんですよ!

A:『どうする家康』と『平清盛』は制作統括が同一人物ですから、そういうご縁もあったのでしょう。

I:縁といえば、元康が、〈そなたらの縁者か?〉と本多忠真、平八郎らに問いかけましたが、〈あれは偽本多じゃ イカサマ師じゃ〉と否定していました。さらに酒井忠次、石川数正らからも誹謗の限りを受けました。〈三河武士の恥じゃ〉など、そこまで言わなくてもと思いました(笑)。

A:本多平八郎家としては「同族視されるのは勘弁してくれ」というところなのでしょう。実際には、系譜をさかのぼると同族なんですけどね。

イカサマ師呼ばわりの本多正信に頼るしか術がない元康(左/演・松本潤)。(C)NHK

山田半蔵で早くもスピンオフへの期待

I:そのはみ出し者の本田正信に駿府にいる瀬名と嫡男竹千代奪還の相談をしているわけです。家臣団でも打つ手なしだから正信に打診してみるという窮余の一策という状況が描かれました。

A:本多正信は策士として知られていますから、武闘派が多い元康家臣団とは相容れない感じなのですが、ここで正信は服部一党の名を出し、結果瀬名奪還の作戦は正信と服部一党に任されることになります。

I:服部半蔵といえば、江戸城半蔵門にその名を残し、地下鉄にも半蔵門線があり半蔵門駅もあります。元康の家臣団の多くは江戸時代に譜代大名家として存続しますが、服部家は大名としては残りませんでした。

A:山田孝之さんがキャスティングされているということは、今後も重要な場面で出番があるのでしょう。劇中で半蔵は〈忍びではない。武士だ〉ということを強調していましたが、これは「忍び」がその働きと比しても身分的には、下に見られていたということです。しかし、正信と半蔵のやり取りはそれぞれ手練れの俳優だけあって、スリリングでしびれる展開になりました。

I:ほんとうですね。なんだかキリっと締まりました。

A:服部半蔵といえば、千葉真一さん主演の『服部半蔵 影の軍団』(1980年)が有名ですが、同じ1980年には、NHKの水曜時代劇枠で三浦浩一さんが霧隠才蔵を演じ、小野みゆきさんがくノ一のお国を演じた『風神の門』が放映されました。司馬遼太郎さんの原作を徹底的にコミカルにアレンジした、いま振り返るとかなりインパクトのある忍者物ドラマでした。

I:早くも山田孝之さんでスピンオフをやってほしいって思っているのですよね?

A:はい。まだ第5回ですが、こういうことは早めに言っておかないと。当欄では、「大河ドラマは壮大なるエンターテインメント」と考えていますが、本多正信と服部半蔵のやり取りはまさにエンターテインメントの真骨頂。さぁ、どうやって瀬名親子を奪還するのか、手に汗握るシーンになりました。

I:まさか、『服部半蔵 影の軍団』のような展開を期待したのですか?

A:さすがに『影の軍団』のテイストはどうかと思いますが、前述の『風神の門』のような感じになるのか、あるいは、1985年に放映された池波正太郎さん原作の『真田太平記』で展開された忍びが重要な役どころを演じ、シリアスでスリリングなテイストになるのか、前週の予告で服部一党の登場が告知された時から注目していました。

半蔵の合図で集まってきた服部一党。(C)NHK

瀬名奪還作戦のために服部一党28人が動員。次ページに続きます

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