ライターI(以下I):さて、『どうする家康』第33回で、家康にとって、因縁の相手である真田昌幸が登場しました。演じるのは佐藤浩市さん。1981年にTBSで放送された『関ケ原』で三國連太郎さんが演じた本多正信に風体が激似ということを当欄でも紹介しましたが、ほんとうにほんとうに似ていて驚きというか、感動というか、嬉しい登場でした。
編集者A(以下A): まさにオールドファンにとって感涙の場面。実際の真田昌幸は家康より年下なわけですが、「そんなことは些末なこと」と一蹴できるだけの貫禄がありましたね。すももを頬張るだけで絵になるその存在感たるや……。
I:木曾山中に秀吉の弟秀長(演・佐藤隆太)が訪れました。
A:徳川と真田の対立というのは、本能寺の変の後に混乱した東国のゴタゴタに端を発したものです。武田遺臣だった真田家はいったん徳川家に与します。ところが家康は、小田原の北条氏に上野国(こうずけ)を譲ってしまう。上野国沼田に拠点のある真田にとって驚天動地の出来事だったと思います。真田からすれば当時の徳川は「大勢力」。長いものには巻かれろということにはならず、真田は反徳川の旗を掲げます。
I:このあたりは2016年の『真田丸』や1985年の『真田太平記』でわりと詳細に描かれているようですが、『どうする家康』でもせっかく佐藤浩市さんをキャスティングしているのですから、もう少し背景をじっくり描いて欲しかったという声は上がってくるでしょうね。今後の徳川とのやり取りがどうなるのか楽しみです。
A:「小」が「大」に対して反旗を翻して、戦っていくというストーリーは人口に膾炙するものです。判官びいき的な傾向が顕著な日本人のこころの琴線に触れるストーリー。
I:その真田昌幸を佐藤浩市さんが演じるわけですから、いやがおうにも期待感が高まるわけですよね。昨年の『鎌倉殿の13人』では、上総広常を演じて、その粛清劇は前半最大の見せ場となりました。
A:佐藤浩市さんの大河ドラマ歴は、1990年の『翔ぶが如く』での坂本龍馬から始まります。1993年の『炎立つ』では源義家、2004年の『新選組!』では芹沢鴨を演じました。
I:印象に残っているのはどんな場面でしょうか。
A:個人的に心に刻まれているのは、『炎立つ』の源義家です。主人公の藤原清衡とのやり取りが強烈に印象に残っています。そのほか大河ではありませんが、2007年の『風の果て』の桑山又左衛門役も懐かしいです。『炎立つ』は現在NHKオンデマンドで公開されていませんが、もう一度じっくりみたい作品です。
I:さて、真田昌幸とともにふたりの息子も登場しました。碁に興じていたわけですが、『鎌倉殿の13人』第15回で梶原景時と双六に興じているシーンを思い出しました。
A:去年は双六で今年は碁というわけですね。たったそれだけのシーンなのですが、魅せてくれますよね。
I:今週はやや顔見せ的な登場でしたが、今後の展開が楽しみでしょうがありません。
A:1981年のTBS『関ケ原』での本多正信の映像を「土スタ」あたりで見せてくれないですかね。
I:またそういうことをいう(笑)。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。
●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり