信長(右/演・岡田准一)に対する不審を募らせる家康(左/演・松本潤)。(C)NHK

ライターI(以下I):義弟の浅井長政(演・大貫勇輔)の裏切りにあって、越前から京へと退却を強いられた信長、秀吉、家康がなんとか京に戻りました。「金ヶ崎の退き口」と称される有名な退却戦です。冒頭で合戦シーンがありましたが、次の場面では既に秀吉、家康ともに京に戻っているという演出となりました。

編集者A(以下A):この撤退戦で何が起こっていたのか、越前と若狭の国境付近に位置して朝倉攻めの際に織田軍の最前線陣地だった国吉城の大野康弘館長(若狭国吉城歴史資料館館長)にリポート(https://serai.jp/hobby/1124220)してもらっています。なるほどと納得の新説です。

I:信長軍は金ヶ崎からおよそ10km離れた国吉城まで逃げればよかったという話ですね。難攻不落といわれた国吉城跡では、5月5日には国吉城まつりが開催されるようですよ。さて、京に戻った秀吉(演・ムロツヨシ)、家康(演・松本潤)らですが、秀吉が大げさに〈ひとりで!〉を4度も繰り返すなど武功を強調しました。1996年に竹中直人さんが主人公を演じた『秀吉』もキャラクター先行の感がありましたが、視聴率的には絶大な支持を受けました。『どうする家康』では、家康に〈くずじゃな〉と罵られるなど、ムロツヨシさんならではの圧倒的な存在感で回を追うに連れて癖になっています。今週も信長(演・岡田准一)から思いっきり蹴られるなど、秀吉のキャラがかなりデフォルメされています。視聴者の皆さんはどう受け止めていらっしゃるでしょうか。

A:藤吉郎の初回登場時に「こんな藤吉郎みたことない!」と言及しましたが、じわじわとその妖しい魅力に引き寄せられる感じがします。ただ、この時期の秀吉は織田家中の京都奉行としてそれなりの地位にあったということは、秀吉の名誉のために補足しておきたいと思います。

I:そんなやり取りのあとに信長が家康にコンフェイトを4粒渡します。厳しいけれども優しい側面もある上司像が描かれました。

A:4粒のコンフェイトで家康家族に束の間の幸せが訪れました。何はともあれ、家族が笑って過ごしているシーンっていいものです。

金ヶ崎の退き戦で殿(しんがり)をつとめた藤吉郎(演・ムロツヨシ)。(C)NHK

家康陣中に鉄砲が撃ち込まれる

家康は浅井長政(演・大貫勇輔)に義があるというが……。(C)NHK

I:さて、姉川の合戦では、家康が、浅井長政に味方をしようかと逡巡する姿をみせました。〈わしは浅井長政につく〉〈織田信長を討つ〉と言い出したり、〈わしは浅井につきたい〉〈理由は……浅井殿が好きだからじゃ〉などと発言します。すぐさま酒井左衛門尉忠次(演・大森南朋)に〈一度会っただけで何がわかると申されるか〉と叱責されました。家臣団の言う通り、1回しか会っていない人物にこれほどまでに影響されるとは、いったいどれだけ優柔不断なのかという演出でした。

A:その後の歴史を知っている向きには「あんな家康ありえない」「荒唐無稽だ」と感じてしまいがちですが、当時、信長をめぐる情勢はけっこう緊迫していましたから、実際は劇中のように逡巡していたのかもしれませんよ。ただ、左衛門尉の言う通り、1回しか会っていない人物を〈好きだからじゃ〉という展開に「家康どうしたの?」と思った方もいたかもしれません。

I:劇中では、信長の陣から家康の陣めがけて鉄砲が撃ち込まれました。「こばやかわ・ひであきか!」と叫んだ人もいたのではないでしょうか(笑)。

A:家康が浅井長政にシンパシーを感じて、ぎりぎりまで悩んでいたという設定は斬新といえば斬新で、面白かったです。ただ、その一方で、『常山紀談(じょうざんきだん)』に収録された姉川合戦の際のエピソードや、本多忠勝(演・山田裕貴)の奮戦なども取り上げて欲しかったという思いも捨てきれません。『常山紀談』には、家康軍の第一陣が酒井左衛門尉、第二陣が榊原小平太(演・杉野遥亮)で、家康軍が川をわたって敵軍を攻める際に、岸が高くて攻めあぐねたと記されています。ところが第二陣の榊原軍の兵らが、「無二無三」に押し上げて進軍した。それを見た第一陣の酒井の兵も「榊原に負けるな」と競って進軍した結果、浅井朝倉軍に勝利したというエピソードです。

I:「無二無三」というのは、しゃにむにという感じですかね。なんか合戦場の情景が目に浮かんできそうです。

A:酒井、榊原軍の様子を見ていた家康は、第二陣の榊原軍の働きを絶賛したそうです。本作は、せっかく家康家臣団に実力派俳優を配しているのですから、こうした家康家臣団の人間模様や、榊原小平太を絶賛しながら全軍を鼓舞する家康の姿や本多忠勝の雄姿なども見たかったなとは思います。

I:雄姿といえば、姉川合戦を描いた「姉川合戦図屏風」を所蔵している福井県立歴史博物館が5月7日まで屛風を公開しているそうですよ。

A:おっと、これは見に行きたいですねぇ。

井伊虎松が登場!「徳川四天王」が出そろう。次ページに続きます

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