江戸時代から明治初期にかけて、一大情報ツールであった浮世絵。世相が色濃く映し出された浮世絵に、しばしば登場する動物たち。浮世絵の豊かな動物表現からどんな世相がうかがわれるか、興味深いところです。

この夏、動物大集合の浮世絵展が開かれています。(9月25日まで)

葛飾北斎「雨中の虎」
絹本着色
嘉永2年(1849)
太田記念美術館蔵(後期展示)

本展の見どころを、太田記念美術館の主幹学芸員、赤木美智さんにうかがいました。

「浮世絵にはあらゆる動物が登場します。ペットの猫や犬、暮らしを助けた馬や牛、縁起の良い鶴や亀、舶来の象や豹、はては地震を起こすとされた鯰や、擬人化された動物まで。まさに浮世絵は、動物表現の宝庫といえるのです。
前期・後期合わせて約160点をご紹介する本展では、バラエティに富む作品を存分にお楽しみいただきます。

月岡芳年「風俗三十二相 うるささう 寛政年間処女之風俗」
大判錦絵
明治21年(1888)3月
太田記念美術館蔵(後期展示)

『風俗三十二相 うるささう 寛政年間処女之風俗』では、飼い主と溺愛される猫の姿に現代人も共感しきりではないでしょうか。

歌川国芳「木菟と春駒」
間判錦絵
文政後期~天保初期(1826~32)頃
太田記念美術館蔵(前期展示)

一方で『木菟と春駒』は、疱瘡除けのまじないとして親しまれた『疱瘡絵』であり、ミミズクに特別な力があると考え、病気から子供を守りたいという江戸っ子の願いを伝えてくれる作品です。

歌川芳藤「兎の相撲」大判錦絵3枚続
明治6年(1873)3月
太田記念美術館蔵(前期展示)

また『兎の相撲』は、明治時代初期、破産者が出るほど加熱した兎ブームが生んだ1点。
かわいくて、ちょっとヘンテコな浮世絵の動物たち。その多彩な姿が語りだす、当時の人々と動物たちとの、多様で濃密な関係にもぜひ触れてみてください」

生き生きと描かれた動物たちがあなたを待っています。ぜひ会場に足をお運びください。 

鈴木春信「猫に蝶」
中判錦絵
明和2~7年(1765~70)頃
太田記念美術館蔵(展示期間:7月30日~8月14日)

【開催要項】
浮世絵動物園
会期:2022年7月30日(土)~9月25日(日)
前期7月30日~8月28日 後期9月2日~9月25日
会場:太田記念美術館
住所:東京都渋谷区神宮前1-10-10
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時30分から17時30分まで(入館は17時まで)
休館日:月曜日(9月19日は開館)、8月30日~9月1日(展示替え)、9月20日(火)
公式サイト:http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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