はじめに-徳川家茂とはどんな人物だったのか?

徳川家茂(いえもち)は、江戸幕府の14代将軍です。紀州藩主・徳川斉順(なりゆき)の子として生まれますが、家茂が生まれる前に斉順は亡くなってしまいます。そのため、叔父・斉彊(なりかつ)の養子となります。しかし、その後、斉彊も亡くなってしまったため、家茂はわずか4歳で家督を継ぐことになったのです。

家茂が紀州藩主になってしばらくした頃、13代将軍・家定(いえさだ)に跡継ぎがいなかったことから、将軍継嗣問題が発生してしまいます。次期将軍を家茂にしようとする南紀派と、一橋家の養子・慶喜(よしのぶ)にしようとする一橋派とで対立し、家茂自身もこの争いに巻き込まれることとなりました。

将軍職に就任した後も、幕政に振り回されていたイメージの強い徳川家茂ですが、実際にはどのような人物だったのでしょうか? 史実をベースにしながら、紐解いていきましょう。2023年NHKドラマ10『大奥 Season2』では、将軍としての責任感が強く、周囲との信頼関係を築いていく聡明な家茂(演:志田彩良)の様子が描かれます。

徳川家茂像(徳川記念財団蔵)

目次
はじめに―徳川家茂とはどんな人物だったのか?
徳川家茂が生きた時代
徳川家茂の足跡と主な出来事
まとめ

徳川家茂が生きた時代

徳川家茂は、弘化3年(1846)に生まれます。家茂が生まれた頃は、幕政の脆弱さが明るみに出始めた時期にあたります。日本の周辺に度々出没するようになった外国船に対し、幕府は十分な対策を講じることができなかったのです。

江戸幕府がいよいよ終焉を迎えようとしていた頃に、家茂は将軍職に就任することとなったのでした。

徳川家茂の足跡と主な出来事

徳川家茂は、弘化3年(1846)に生まれ、慶応2年(1866)に没しました。その生涯を、出来事とともに紐解いていきましょう。

4歳で家督相続、紀州藩主となる

徳川家茂は、弘化3年(1846)、紀州藩主・徳川斉順の子として生まれました。幼名は菊千代で、後に慶福(よしとみ)と称し、将軍職に就任する際に「家茂」を名乗るようになります。家茂が生まれた時、すでに父・斉順は他界していたため、叔父の斉彊の養子として育てられることとなりました。

斉順の代わりに、斉彊が紀州藩主に就任しましたが、彼もほどなくして亡くなってしまいます。そのため、嘉永2年(1849)、家茂はわずか4歳にして家督を相続し、紀州藩主になったのです。

14代将軍に就任する

幼年にして家督を相続した、家茂。彼が紀州藩主になった数年後、13代将軍・家定の治世が始まりました。しかし、家定は病弱だったため、跡継ぎの子どもを授かることができなかったのです。そのため、次期将軍に誰を指名するべきかという問題が生じてしまいます。

次期将軍には、頭脳明晰として知られていた一橋家の慶喜、そして、紀州藩主の家茂が、候補として挙げられました。その際、慶喜を支持する一橋派と、家茂を支持する南紀派の間で、激しい争いが勃発します。

次期将軍の座を巡って、対立を深めた一橋派と南紀派。安政5年(1858)、彦根藩主の井伊直弼(なおすけ)が大老に就任したことで、両者の争いは決着がつきます。直弼は、家茂を支持する南紀派の筆頭でした。そのため、大老の権限を行使して、家茂を次期将軍に決定したのです。

その後間もなく、家定が亡くなったため、家茂は14代将軍に就任することとなりました。この時、家茂は13歳という若さでした。

和宮を正室に迎える

13歳にして、将軍職を継承した家茂。当時、大老の直弼が、朝廷の勅許を待たずに無断で外国と条約を締結したことで、幕府と朝廷の関係性が悪化していました。直弼は、悪化した朝幕関係を修復するべく、皇女の和宮を、家茂の正室にしようと画策します。

当時の天皇で、和宮の兄にあたる孝明(こうめい)天皇も、これ以上幕府と対立することは望ましくないと考えていたため、直弼の提案を許可しました。この時、和宮には既に婚約者がいましたが、家茂の正室として、急遽江戸城の大奥に向かうことになったのです。

そして、文久2年(1862)、家茂は和宮を正室に迎えることとなりました。

和宮(『幕末・明治・大正回顧八十年史』より)

長州征伐を指揮、悔いが残る最期。次ページに続きます

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