「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努力をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶力の鍛錬につながると言われています。
「脳トレ漢字」第160回は、「悋気」をご紹介します。やきもちという意味を持つ「悋気」。小説などによく使用されています。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「悋気」とは何とよむ?
「悋気」の読み方をご存知でしょうか? 「のんき」ではなく……
正解は……
「りんき」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「男女間のことなどでやきもちをやくこと。」と説明されています。「やきもち」「嫉妬」という意味を持つ「悋気」。女性は嫉妬しやすいという意味の「悋気嫉妬は女の常」や、女性の嫉妬は男性を振り向かせるための武器であるという意味の「悋気は女の七つ道具」ということわざもあります。
また、江戸時代には結婚した女性たちで集まり、夫の愚痴や愛人の悪口などに花を咲かせる「悋気講」という無尽講が開催されていたそうです。現在では、男女関係なく嫉妬する気持ちのことを指す「悋気」ですが、当時は主に女性の嫉妬を表現する言葉だったのかもしれません。
「悋気」の漢字の由来は?
「悋」という漢字には、「やきもちを焼く」という意味が含まれます。また、「物惜しみする」という意味を持つ「吝」に、心の動きに関する漢字を構成する「りっしんべん」がつくことで、「物惜しみする気持ち」という意味になるのがわかります。
この「物惜しみする気持ち」が転じて、「妬ましい気持ち」を意味するようになったのではないかと考えられているのです。
六条御息所の「悋気」
主に、恋愛関係での嫉妬を指す「悋気」。嫉妬深い人物と聞くと、『源氏物語』の登場人物・六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)を思い浮かべるという方も多いのではないでしょうか? 彼女は、夫と死別し、7つ年下の光源氏と恋仲になった人物です。
身分が高く、教養も十分あった六条御息所。その隙のなさゆえに、光源氏から次第に距離を置かれてしまいます。光源氏のつれない態度に傷つけられた六条御息所は、生霊となって彼の正室やほかの愛人たちを苦しめることになるのです。
嫉妬に狂った結果、生霊となった六条御息所。しかし、紫式部の歌集である『紫式部集』には、「亡き人に かごとをかけて わづらふも おのが心の 鬼にやはあらぬ」という和歌があります。物の怪に憑りつかれたことを亡くなった人のせいにしているが、本当は自分自身の心に潜む鬼ではないかという意味です。
紫式部は、相手に対して後ろめたさや罪悪感があるから、その人が生霊や物の怪になって憑りついているように思えてしまうのではないかということを伝えたかったのかもしれません。
***
いかがでしたか? 今回の「悋気」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 「悋気」には、恋愛関係における嫉妬心という意味があることがわかりました。
嫉妬深い人物として知られている、六条御息所。しかし、嫉妬から生まれたとされる彼女の生霊も、本当は彼女に対する罪悪感を抱えた光源氏の幻覚だったのかもしれませんね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB