最近、パソコンやスマートフォンの普及により、自ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか「読める、けれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く力が衰えたと実感することもあるでしょう。記事を読みながら漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。
「脳トレ漢字」第137回は、「濃紫」をご紹介します。「濃紫」とは、聖徳太子が制定した有名な制度にも登場する色のことです。
この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能力を高く保つことにお役立てください。
「濃紫」は何とよむ?
「濃紫」の読み方をご存知でしょうか? 「のうむらさき」「のうし」ではなく……
正解は……
「こむらさき」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「濃い紫色」と説明されています。やや暗めの濃い紫色という意味である「濃紫」。「深紫(こきむらさき)」と呼ばれることもあり、聖徳太子が制定した「冠位十二階」では、最高位の色として定められるなど、濃い紫色は古来より高貴さを象徴する色とされてきました。
「濃紫」の漢字の由来とは?
漢字からわかる通り、「紫の色が濃い」という意味である「濃紫」。同じく濃い紫色の実をつける植物・「小紫(こむらさき)」と色が似ていることから、「小紫」と記載されることもあり、植物に関連した名前であることがわかります。
また、シソ目クマツヅラ科の落葉低木・小紫の和名は「小式部(こしきぶ)」で、植物の「紫式部」を小さくしたような姿をしていたため、このような和名になったと言われています。
高貴で特別な色、「濃紫」
先述の通り、紫色は聖徳太子が定めた「冠位十二階」の中でも最高位に位置づけられるなど、古来より高貴さを象徴する特別な色として考えられていました。紫色は、「ムラサキ」という植物の根を乾燥させることで採取することができます。奈良時代の聖武(しょうむ)天皇の代では、既に各地で栽培が行われていたそうです。
紫根(しこん)と呼ばれるムラサキの根は、昔は大変高価なもので、多くの紫根を使用して染め上げられた濃い紫色である「濃紫」は、あらゆる色の中でも特に贅沢な色とされていました。そのため、濃紫の衣服を身に着けるということは、貴族などの権力者にとって、一つのステータスでもあったのです。
また、濃紫は貴族の未婚女性が身に着ける袴の色でもありました。そのため、明治時代に女学生用の袴を作ることになった際、高貴な身分の象徴である紫色を避けて、黒みがかった赤茶色である「海老茶(えびちゃ)」を使用したそうです。
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いかがでしたか? 今回の「濃紫」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 見慣れた漢字だからこそ、間違えて読んでしまっていることに気付きにくいものです。改めて意味や由来を確認し、知識を定着させていきましょう。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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