はじめに-松村任三とはどんな人物だったのか

松村任三(まつむら・じんぞう)は、植物学者として日本の植物学の基礎を築いた人物です。また、「日本植物学の父」と讃えられる牧野富太郎(まきの・とみたろう)にも影響を与えました。

そんな任三ですが、実際はどのような人物だったのでしょうか? 史実をベースにしながら、読み解いていきましょう。

連続テレビ小説第108作『らんまん』では、任三をモデルにした東京大学植物学教室の助教授・徳永政市(演:田中哲司)が、小学校中退の槙野万太郎(演:神木隆之介)の植物学教室の出入りに強く反発する様子が描かれます。

目次
はじめに-松村任三とはどんな人物だったのか
松村任三が生きた時代
松村任三の足跡と主な出来事
まとめ

松村任三が生きた時代

松村任三が生きた時代、日本は開国し、本格的な西欧の学問の導入が始まりました。江戸時代にも蘭学によって、自然科学を中心に西欧の知識は導入されていましたが、開国後は法律や哲学など人文系の知識も学ばれるようになっていきます。

そんな中、植物そのものを研究の対象とする植物学も導入されました。植物の研究自体は、明治以前の日本でも「本草学」という形で存在しましたが、研究対象は主に薬草。また、厳密に植物の分類がなされていたわけではなかったのです。

日本の初期の植物学者たちはまず、西欧の植物学者が命名した分類群を理解するのに一苦労します。さらに、外国に行かなければ標本を見ることもできず、文献も不足し、独自に学術結果を公表できる水準にありませんでした。当初は植物の標本を外国の専門家に送って鑑定を依頼していましたが、標本の数が増えると回答を得るのが難しくなっていきます。

このような時代背景もあり、日本人の手によって日本の植物を分類できるようにすることは、喫緊の課題だったのです。

松村任三の足跡と主な出来事

松村任三は安政3年(1856)に生まれ、昭和3年(1928)に没しました。その生涯を主な出来事とともに見ていきましょう。

植物の世界に飛び込む

任三は安政3年(1856)に、常陸国(茨城県)松岡藩の家老の長男として生まれます。3歳の頃から両親に漢学を学び、9歳になると『史記』や『三国志』なども読むようになりました。当時の社会情勢もあって、15歳の頃には英語を学ぶ必要性を悟り、独学で英語の学習を始めます。

やがて、その優秀さを認められた任三は、明治3年(1870)には東京の大学南校(今の東京大学)で学ぶようになりました。明治6年(1873)には開成学校(今の東京大学)に進んで法律学を修めます。

しかし、卒業後、任三が飛び込んだのは、法律学とは全く異なる世界でした。明治10年(1877)に東京大学小石川植物園に就職します。この頃から任三は、植物の研究をしていた東京大学教授の矢田部良吉(やたべ・りょうきち)に師事するようになり、植物学を学ぶようになったのです。

良吉の助手となった任三は、一緒に全国各地の植物を採取して周りました。その回数は約200回にも及びます。また、同時期に任三は、日本の近代考古学と人類学にとって極めて重要な大森貝塚(東京都品川区)の発掘にも参加しました。

矢田部良吉の肖像

植物学者としての活躍

その後も任三は、植物の研究を続けます。明治16年(1883)には、東京大学の助教授となり、これまでの研究を『日本植物名彙』などの本に集約。

明治19年(1886)には、私費でドイツに留学。ハイデルブルク大学およびヴュルツブルク大学で植物分類学と生理学を学び、ヨーロッパ各地をまわってから、明治21年(1888)に帰国します。

帰国後は、東京大学の植物学教室の主任教授に就任し、数多くの植物学の書籍を出版(『日本植物名彙』『帝国植物名鑑』など)。植物分類学を担当し、業績をあげています。他にも、入手が難しかった学術雑誌や著作物の収集、植物の標本の採取、顕微鏡的な植物解剖学の教育などを行いました。東京帝国大学さく葉庫の基礎も作っています。

また、150以上の新種の植物を発見し、学名をつけました。それらの中で、ソメイヨシノやフジアザミなどは今も用いられている学名です。他にも、明治天皇の前で食虫植物やサボテンについての講義を行っています。

大正11年(1922)には教授を引退、昭和3年(1928)には東京・本郷の自宅でなくなりました。

牧野富太郎とのつながり。次ページに続きます

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