数多くのテレビドラマや映画に出演し、81歳の今も第一線で活躍し続け、2023年5月12日公開の映画『それいけ!ゲートボールさくら組』では主演を務める藤竜也さんにインタビュー。インタビュー後編では、元気に、そしてアクティブに日々を過ごす秘訣について伺いました。

【前編】最新作はシニアのスポコン映画! 藤竜也さんの仕事を続ける秘訣は「面白がれるかどうか」はこちら

俳優は定年のない職業。社会との関わりもできるし、とても恵まれていると思う

――一昨年は朝ドラ「おかえりモネ」が話題になりましたが、作品選びは年齢によって変わってきましたか。

自分というより、来る役が変わってきますよね。大体10年サイクルかな。30代、40代、50代……いわゆる節目でもって、要望から何から全部、変わってきます。来る役の年齢で否応なく変わっていく。妙に若くても困るわけです、順調に歳をとってくれないと。段々、若返っていくんじゃ、話にならないよね(笑)。

年を取るってことは、お役目がだんだん少なくなってきているってこと。居場所がなくなって、狭くなってくる。今の世の中はそういう仕組みになってるから、その中でつつがなく年を取るっていうのはなかなか難しい場合もありますよ。

たまたま、こういう仕事をやっていて、俳優は定年っていうものがない職業ですから。体が丈夫ならば、お仕事もいただける。そこで社会との関わりができるわけで、とても恵まれたことだと思いますね。

何もしないとあっという間に日が暮れ、仕事が入ると1日がものすごく長い

――体が丈夫であるために、普段から心がけていることはありますか。

サプリメントとかその類のものはまったく摂らず、基本的にはトレーニングをしています。運動やウォーキングをする程度ですが、公園に行く時間は大体決まっています。

運動はずっとやっていました。でも、コロナが始まる前は1日3箱、タバコを吸っていましたからね。コロナが始まって、1、2か月でやめたんです。当時は倉本聰さんの「やすらぎの刻〜道」に出ていて、迷惑をかけてはいけないと思いました。歳をとると感染しやすく重症化しやすいと散々聞いていたので、家族のこともあり、スポーツクラブとタバコをやめて、切り抜けようと思いました。矛盾していますけど、体に何が良くないのか、わからないままやめたんです。だけど、今は50段の階段を駆け上っても息切れしません。

――仕事を続けていく上で、理想のバランスはありますか。

何もしないと1日が矢のように過ぎますね。あっという間に日が暮れるんです。少年の頃はね、1日が長かったですよ。悲しいけど、1日が短いんです。朝、食事して、パソコンなんか覗いたりして、ちょっと本を読んだりしていると、何もしていないのにあっという間に晩飯で、晩飯を食ったらもう眠くなっちゃう。これが仕事が入ると、1日がものすごく長くなる。

仕事に入ると“ああ、いつ終わるんだろう”っていう気持ちになります。もう遠いんですよ。時間が延びるんですよね。映画は撮影期間に1か月くらいかけるので、気を失うぐらい遠く感じちゃうんです。そこがまた旅から帰ってきた帰宅感みたいなものがあって、いいんですよね。サディストなんでしょうね。いやマゾヒズムなのかな(笑)。

架空のキャラクターだろうと、その中に入り込むわけですから、怖いんです。人の中を旅する楽しさもあるんだけど、気味が悪いです。終えるとそこから抜けていく安堵感があります。仕事が終わったら、多摩川を渡って、自分の街に帰っていく。それが良かったのかもしれません。東京のど真ん中で、いつでも仲間たちと会えることになっていたら、きっとどっぷりハマっていたでしょう。

前置詞の勉強を始めたい。「YouTube、面白いですよね」

――『それいけ!ゲートボールさくら組』の台詞に「人生には遅すぎることなんてひとつもない」とありますが、これから始めようと思っていることはありますか。

一昨日ぐらいから、YouTubeのお世話になって、前置詞の勉強をしようと思っているんです。Onとかatとか。YouTubeを見ていたら、関連動画を見つけて、面白いなぁと。そうか、intoはこういう感じなのかって。

――YouTube、ご覧になるんですね。

YouTube、いいですね。私は飯を作るのが好きなんです。材料とか、参考になります。料理は50歳くらいから始めました。その頃はYouTubeなんてなく、料理本しかないので、見ながら作って。当時は家内の母も私の母もいて、家内がいない時に「年寄りには和食がいいだろう」と作ると、「美味しい」と言われるからね。褒められるとうれしいものですよ。そうは言っても、空で作れるのはいくつもないです。ハンバーグを作るにしても勘ではやりません。レシピを先に見て、分量を参考にしてから、あとは自分流に。煮物だけは自分の感覚で作れます。大体、1:1:1でやれば大丈夫ですよ。足らないものがあれば、少しずつ増やせばいいんです。

幸いなことに映画(『しあわせのかおり』)で中華料理人の役をいただいて、5か月くらいシェフについてマンツーマンでトレーニングしたんです。徹底的に教えていただいて、今でも台所はピカピカです。作ったら、使った鍋やフライパンをどんどん洗っていく。最後は使う食器だけが並ぶ。キッチンに立つことの多い方にとっては勝手をやられて嫌でしょうね。最近は家内も歳をとったから台所に自由に入れてくれますが、前はうるさそうな顔をしていました。「余計なことをしないで」みたいな(笑)。

――夫婦でいつまでも仲良くいられるコツはありますか。

「ありがとう」ですね。「ありがとう」と言っていれば間違い無いです!

人にとって一番辛いのは、不必要となること。考えすぎず、一介の俳優としていつも明るく、健康でいたい

――藤さんは年齢を意識しますか。

私、今、81らしいんです。そうすると、81という数字にプレッシャーで負けそうなんです。「81なんだから、大人しくしなきゃ」とか、「81なんだから、脇に寄ろう」とか。どうもそうなっちゃう。それもいいのかもしれないけどね。この映画のお年寄りたちみたいに、「ジジババですが、何か?」っていう感じもいいなって思いますね。

人生100年時代という割に、そこまで生きられたら困るのでしょう。社会そのものがそういう仕組みになっているからね。新陳代謝、入れ替えがなきゃ困るからそれも仕方がないことなのでしょう。でも、みんな長生きになっちゃってるんだから、もう少しなんとかならないのかなと思いますね。不必要になってしまうということが、人は一番こたえる。何も要求されてない状態は、一番辛いことだと思います。

多くはないけど、ぼちぼち仕事はいただいていて、いい仕事をさせていただいているから、ラッキーですね。これは本当に運です。62歳の時にバイパス手術をしたんです。お医者様が「終わったら、フルマラソンでもなんでもやってください、大丈夫です」って言っていたから、そういうものなんだなって思って。で、タバコも吸い続けていたんですけど(苦笑)。今、健康ですから。明るいのがいいなって思いますね。光がある。闇じゃない。僕は宗教学者や哲学者でもなく、一介の俳優ですから。哲学じみたことはあまり考えないです。

藤竜也(ふじたつや)
1941年8月27日、神奈川県生まれ。1976年の映画『愛のコリーダ』で報知映画賞最優秀主演男優賞を受賞、2003年『村の写真集』で上海国際映画祭最優秀主演男優賞を受賞、2015年『龍三と七人の子分たち』で東スポ映画大賞主演男優賞を受賞。ほか、1978年『愛の亡霊』、2002年『アカルイミライ』、2019年『台風家族』など100 本以上の映画に出演。

●藤竜也さん主演映画

『それいけ!ゲートボールさくら組』

(c) 2023「それいけ!ゲートボールさくら組」製作委員会
配給:東京テアトル
公開日:5月12日(金) “笑顔満開”ロードショー

藤竜也
石倉三郎 大門正明 森次晃嗣 小倉一郎 
田中美里 本田望結 木村理恵 / 赤木悠真 川俣しのぶ 中村綾 直江喜一
特別出演:毒蝮三太夫 友情出演:三遊亭円楽 / 山口果林

監督・脚本・編集:野田孝則
主題歌:Rei「Smile!with 藤原さくら」(Reiny Records/Universal Music) 
音楽:安部潤
特別協賛:ドクターリセラ株式会社
協力: 公益財団法人日本ゲートボール連合 千葉県ゲートボール連盟 学校法人作新学院
企画・制作プロダクション:ファーイースト 配給:東京テアトル  
(c) 2023「それいけ!ゲートボールさくら組」製作委員会
公式サイト:https://gateball-movie.jp/

取材・文/高山亜紀 撮影/小倉 雄一郎(小学館)

 

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