一向宗の寺院に潜入した家康

時々見せる真顔がちょっと怖い藤吉郎(演・ムロツヨシ)。(C)NHK

I:ここに木下藤吉郎(演・ムロツヨシ)がやってきます。鷹狩と称して、三河領内の不穏分子の取り締まりを元康に内緒で行なっていたという設定でした。

A:信長(演・岡田准一)が相変わらず、家康へのあたりが強かったですね。そして三河を統一するように厳命しました。この流れの中で、今週のテーマ「一向一揆」の話題に進んでいきます。「戦費がかかってしょうがない。どこかに新たな収入源はないものか?」 「そうだ、不入の権ということで、年貢を免除されている寺院からとったらいいのではないか」という流れでした。

I:宗教の問題は現代でも世間を騒がせていますし、税の問題も古くて新しいテーマですよね。そうした中で、元康が農夫に身をやつして潜入したり、瀬名も物見を兼ねて寺内町に入る様子が描かれました。一向宗の寺院を中心に「寺内町」を形勢している様はうまく描かれていた印象です。ちょっとコミカルすぎる感もありましたが(笑)。でも、松本潤さんの農夫姿、意外にはまっていましたね(笑)。

A:農夫姿を見て、物語の終盤で「秀吉主催の仮装大会」が出てくるかな? と期待が高まります。「松潤家康」がどんな仮装をするのか楽しみです(笑)。さて、本證寺の場面では2回にわたって「進めば往生極楽 退けば無間地獄」の旗が映し出されました。広島県にある長善寺に遺されている軍艦旗を参照したのだと思われます。コミカル重視とはいえ、さりげなく挿入されていました。

I:巫女の千代(演・古川琴音)も台詞で語っていましたね。

A:この時代の一向宗は既存の勢力にとっては恐ろしい存在だったと思います。北陸加賀では当時すでに一向宗の勢力が一国を掌握し、現在金沢城が立つ場所に「尾山御坊」を築いて拠点としていました。この後も現在の大阪城のある場所にも石山本願寺が拠点を築き、信長とも十年戦争を戦います。本作で描かれるかどうかわかりませんが、信長の弟らや一族も一向宗との戦いで命を落としています。

I:空誓上人(演:市川右團次)も蓮如のひ孫という毛並みの良さですからね。次週どういう展開になるのかわかりませんが、家康にとって一向宗という宗教勢力と対峙した経験が、後にキリスト教に対する苛烈な取り締まりの根底になったのでは、と想像されるだけに一向一揆と家康がどう描かれるのか注目したいです。

民衆を煽る空誓。(C)NHK

なぜトマトではダメなのか?

A:ちょっとコミカルな展開が多かった第7回ですが、「オッ」と思うシーンがありました。酒井左衛門尉忠次(演・大森南朋)が瀬名への土産に茄子を持ってきた場面です。

I:後に「一富士 二鷹 三茄子(なすび)」ということがいわれるようになりましたが、茄子は家康の好物。さすが徳川四天王の筆頭と思いました。しかも酒井忠次が持っていた茄子は実際に家康が好んでいたという「折戸なす」のようでした。昨年TBSの『世界ふしぎ発見』でも取り上げられていました。

A:清須城の描写だったり、火縄銃の連射など「考証」が物議を醸していますが、こういう細かい考証に目配りしているのはさすが「大河ドラマ」という思いです。「歴史へのリスペクト」があり、「大河愛にあふれた」スタッフの方々によるこだわりのお仕事なのでしょう。

I:見映え、色映えがいいからといって「トマト」を持って来られても困りますものね。

A:トマトは江戸時代初期に日本にもたらされたといいます。赤なすとも呼ばれたそうです。「どうせ数十年後には日本に来るんだし、もしかしたら記録に残っていないだけでもうトマトが上陸していたかもしれないから、トマトでもいいんじゃない?」となったらたいへんですし、それだけですべてが台無しになってしまいますよね……。おっと、脱線してしまいました。

I:さて、家康は、一向宗への態度を強めていきます。瀬名はそれに対してやんわりとたしなめますが、家康は意に介さないようです。

A:次週どのような展開になるのでしょうか。農夫姿の家康は、本證寺寺内町で渡辺守綱(演・木村昴)とばったり会いました。彼も「徳川十六将」に数えられる勇将です。家臣団の団結はどうなるか、戦いの後、ほころぶことはないのか? 家康の人生最大の危機の乗り切り方は、現代を生きる私たちにとっても参考になることがたくさんありますからね。

I:繰り返しになりますが、制作陣がどう描いてくるのか? 注目ですね。

家臣たちから慕われる瀬名がもらう様々なものの中には、家康好物といわれた折戸なすもあった。
(C)NHK

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康  戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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