寺内町の遊び女おふう役の天翔愛さん。(C)NHK

ライターI(以下I):藤岡弘、さんといえば、かつて『草燃える』で三浦義村、『おんな太閤記』と『春日局』では織田信長を演じています(そのほか多数出演)。今年も出番は少なかったものの織田信秀役で登場してくれました。

編集者A(以下A):圧倒的な存在感でした。もっともっと登場するのかと思っていましたが……。

I:その藤岡弘、さんのふたりの娘さんが大河デビューをはたしました。天翔愛さんと、天翔天音さん。役どころは遊び女。一向宗の寺内町ではたらいているという設定で、巫女の千代(演・古川琴音)とともに舞を披露していました。

A:大河ドラマだけではなく、ドラマデビューだそうです。時代劇には、武士の子女、貴族の子女などが多く登場しますが、遊び女は所作が異なるので意外に難役かなと思ったりしていますが、華麗に演じ切りました。

I:くねっとしたり、ささいな所作でずいぶん印象が違ってきますよね。なんだか本当に美しくてうっとりしてしまいましたね。その「天翔姉妹」からコメントが寄せられました。まずは姉の天翔愛さんのお話からどうぞ。

出演が決まった時は、大河ドラマへの出演は、俳優としてひとつの目標とさせていただいていたことでしたので、このようなタイミングで出演させて頂けることに、大変光栄な気持ちと感動でいっぱいになりました。父もとても喜んでくれました。父から学んできた武士道精神を生かすことができるお役をいただけたことに、大変魅力と喜びを感じております。昨今のように、時代の変わり目のような時代を命がけで生き抜いた、遊び女の生き様や覚悟を込めました。遊び女の表現などは、父が自ら指導してくれて、自然な表現が素晴らしく、改めて父を尊敬しました。

I:そして妹の天翔天音さんのコメントです。

本当に感謝でしかありません。 10 代というタイミングで、いつか必ずと夢みておりました時代劇、大河ドラマで、父から学んできた『武士道精神』を生かし、演じることが出来ることに、本当にやりがいを感じております。自分の中でどんな遊び女おりん役を描いて演じることができるのか楽しみでした。このような大きな作品で、父と出演をすることが出来るとは思っていなかったので、純粋に嬉しかったです。

A:なんだか泣けてきますね。父をリスペクトする思いがひしひしと伝わってきます。

I:私は実の父と疎遠になっているので、天音さんのこのコメントがじわじわ心に響いてきます。

父が演じた織田信秀のシーンをみて、一言を発した瞬間から心に響く、体に染みわたるような深い声に震えました。画面から溢れ出る力強さと、眼力と迫力のあるお芝居、そして、溢れ出るパワーから本物の侍を観ているようで、全身が震えました。時代劇、大河ドラマなどで多くの役をやってきた父から、時代劇でのありかた、日本の所作、そして時代の歴史の背景など沢山教えていただきました。収録の1週間前から 、声を響くようにするための発声練習を毎日行なったり、実際に台詞の言い方などを父と一緒に練習しました。

A:このコメントに触れて、不覚にも涙が滲みました。父と娘の絆だけではなく、大河ドラマという日本最高峰のエンターテインメントドラマに出演するということがどのようなことかいうことをストレートに表現してもらったようで、ちょっと感極まっています。

I:決して台詞や出番が多かったわけでもないのに、万全の準備、家族の思いを抱いて出演している。制作陣の方々は、こうした出演者の熱い思いをかみしめてほしいです。

A:そして、もっと感極まるのが次のコメントです。お姉さんの愛さんのお話です。

今まで着たことのない、天女のようなお衣装が予想より重く、舞う時の体や袖の動かし方、動く際にどうやったら美しく見えるのかなど、それぞれのシーンごとに、妹と共にお互い提案しながら研究し合ったりしました。当時の時代を体感とともに実感することができ、より一層、日本文化や歴史に深く興味を持つことができました。また、素晴らしい諸先輩の表現を学ばせていただいたことで、表現をすることの楽しさが私の中で大きくなって参りました。とても感謝でいっぱいです。

I:私たちも、ともすれば見逃してしまいがちなお話がこの中にありました。演者は皆、鍛錬に鍛錬を重ね、大河ドラマに出演しているという誇りをもって、頑張っているんですよね。

A:その頑張りを私たち視聴者もしっかり受け止めたいと思います。「天翔姉妹」がまた近いうちに私たちの前に登場してくれることを期待したいと思います。

可憐な舞を披露した遊び女おりん役の天翔天音さん。(C)NHK

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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