公暁が隠れていたという大銀杏の謎

3代将軍実朝暗殺の舞台となった鶴岡八幡宮の社殿に至る大階段は現在、61段ある。長年の年月を経て、境内整備の段階で当初とは段数は1段減っているが、全体の高さは変わらない。

公暁が隠れていたという大銀杏は、その頃すでにあったのかどうかは、はっきりしないと加藤さんはいう。

「銀杏は日本に在来しない樹木で、中国から渡ってきたものです。恐らく、鎌倉初期に日本に臨済宗を伝えた栄西の頃にもたらされたのだと思います。現在地に社殿が造営された際に植えたとしても、公暁の頃にはまだ30余年しか経っていないので、大銀杏、というには無理があるかと思います。江戸時代に創作されたエピソードではないですかね。少なくとも『吾妻鏡』には、どこで事件が起こったのか、具体的なことは記されていないんですよ」

長らく八幡宮のシンボルのように愛されてきた大銀杏も、平成22年の強風で倒れた。しかしその後、倒木した大銀杏から新芽が芽生え、今も成長している。

鎌倉の歴史、その盛衰を見守って来た鶴岡八幡宮は、鎌倉幕府が滅亡した後も鎌倉府や小田原北条氏、さらには徳川家の崇敬を集め、令和の現在も毎年多くの参拝者を迎えている。大河ドラマの舞台となった今年は、頼朝、頼家、実朝の源氏3代の鎮魂のためにお参りする人も多いのだという。

構成/『サライ.歴史班』一乗谷かおり

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