坂東彌十郎の緩いキャラに秘されていた「北条時政の恐ろしい野望」発覚！ そして、義時三人目の妻の「裏表」衝撃場面【鎌倉殿の13人 満喫リポート】34

ライターＩ（以下Ｉ）: 第３代鎌倉殿に就任した実朝（演・柿澤勇人）に対して有力御家人がそれぞれの得意分野を伝授する場面が描かれました。八田知家（演・市原隼人）は薙刀、和田義盛（演・横田栄司）は弓、大江広元（演・栗原英雄）は政（まつりごと）の講釈、三浦義村（演・山本耕史）は、処世のすべだそうです。〈後腐れのない女（おなご）との別れ方について〉という三浦義村の講義はご愛敬というところでしょうか。

編集者Ａ（以下Ａ）：別れ方はともかく、「閨（ねや）の作法」は誰かが伝授したはずです。そういうのはなかなか史料には記載されませんが、重要といえば重要ですよね。

Ｉ：なんか詰め込みでした。もともと将軍の弟という気楽な立場からの急登板ですから、慌ただしかったんですね。

Ａ：さて、今週は武蔵の国を狙う時政（演・坂東彌十郎）の野望があらわになりました。比企能員（演・佐藤二朗）を滅ぼして、武蔵の比企領を手中にした際のうまみが忘れられなかったのでしょうか。それともかなり前から狙っていたのでしょうか。畠山重忠（演・中川大志）も時政にとっては婿で、重忠嫡男の重保は孫。にもかかわらず、時政は武蔵の国に色目を使う。現代の価値観からは違和感だらけかもしれませんが、これがこの時代の武士のスタンダードなんでしょうね。

Ｉ：ここで畠山重忠の「惣検校職（そうけんぎょうしき）」という職掌が登場しました。劇中では、〈武蔵守を支えるのが惣検校職だ。自分で自分を支えるなんて変じゃねえか〉という時政の台詞で説明されました。

Ａ：「惣検校職」とは、聞きなれない職掌なので、ざっくり説明します。実態はともかく国守の武蔵守が持っているのが行政権。一方の惣検校職は武蔵国内の武士たちを統率したりまとめるといったところでしょうか。この時の武蔵守は、時政女婿で劇中にも登場している平賀朝雅（演・山中崇）。畠山重忠も時政の女婿になりますけど、りく（演・宮沢りえ）所生の娘の婿で源氏の貴種でもある平賀朝雅の方が時政としては上に遇しているのでしょう。

Ｉ：惣検校職は、代々畠山家が世襲していたのですか？

Ａ：いえ、畠山家というより、畠山家の出身母体である「秩父一族」です。重忠の前は、一族嫡流の河越重頼が務めていたようです。

Ｉ：河越重頼といえば、比企尼次女を妻とし、劇中では、娘の里（演・三浦透子）を義経（演・菅田将暉）に嫁がせていた有力御家人ですね。しかも義経追討の混乱渦中に討たれるという悲劇に見舞われた人。

Ａ：うーん。なぜ「惣検校職」という小難しい職掌を登場させたのか多少疑問に思っていたのですが、こうして調べてみると、もしかしたら、「義経追討」の頃から「時政の野望」が発動していたのではないかとさえ思えてきました。義経を失脚させることで、秩父一族の嫡流・河越重頼を追い込み、畠山重忠を「惣検校職」に据えたのではないかと。

Ｉ：そうした「時政の壮大なる野望」があったことを気づかせるために、作者が敢えて「惣検校職」を持ち出して来たということですか？

Ａ：いや、もしかしたらそうかも、と感じたという程度ですが……。

北条家の嫡男が京都で突然死の衝撃

Ｉ：今週はいろいろなところで陰謀、策謀の芽が出ていました。〈この若さで左馬権助とは素晴らしい〉と平賀朝雅が北条政範（演・中川翼）のことを絶賛していました。時政の婿である平賀朝雅と政範は義理の兄弟になります。

Ａ：実朝の御台所をどうするかということで、政子（演・小池栄子）などが談合していました。『吾妻鏡』には、源義家の血を引く足利義兼の娘が候補に上がったという記述があります。足利には時政の娘が嫁いでいますから、源氏と北条をつなぐということだったんでしょうが実現しませんでした。劇中で政子が言っていたように、坂東から正室をもらうと比企と北条の争いのように権力闘争に発展する可能性がありますし。

Ｉ：実朝の御台所は結局、京の公家から嫁いで来ることになりました。そのお迎えのために北条政範が上洛することになりました。

Ａ：ここで、後鳥羽上皇（演・尾上松也）、源仲章（演・生田斗真）らがなにやら策謀を談じ合っていました。２代目鎌倉殿の頼家（演・金子大地）が亡くなってまだ間もない時期ですから、鎌倉も京も不穏な空気が漂い、人々も浮足だっていたに違いありません。源仲章の〈上皇様は北条が嫌いでね〉という台詞が響きますね。平賀朝雅を必死になって寝返らせようとしていました。

【上洛したばかりの政範が京都で急死。次ページに続きます】