安土城の大セットは大河史上最大規模!
I:そうなると安土城のセットがどうなるか楽しみです。安土城も三浦先生の監修ですか?
山内:安土城の外観は三浦先生の案ですが、城の内部は完全に創作です。
A:(図面の上段床の間を指さして)これは何が描かれているんですか。
犬飼:今回番組のコンセプトとして、安土城と坂本城は信長と光秀の最後の対比として作っています。天体のイメージのようなものです。信長が上り詰めて、安土桃山時代らしい装飾も含め豪華絢爛、自分の上にはもう天しかないという感じを美術として表現しました。
I:金箔で天体を表しているんですね。
犬飼:黒漆に金箔を貼った様に作りました。この大広間は、スタジオ内に作ったんですが、スタジオほぼ全部で一部屋という、大河史上類を見ない壮大な規模になっています。普通は部屋の途中に欄間などがあったりするんですが、今回はそれもなく、本当にだだっ広い一部屋なんです。まあすごいですよ。240畳あります。
A:240畳!それは凄い。このセットを組み立てるのにはどれくらいの時間がかかるんですか。
犬飼:あ、でも、それは一晩ですよ。一晩といっても、この週のスタジオセットを建てるのに、だいたい土日で建てて、月曜日くらいに装飾や造園が入るんですが、この広間に関しては、前日には全く違うセットで撮影していて、一晩でこれに作り替えています。
I:一晩ってすごいですよね。一夜城のようです。
山内:そう。まさに一夜城。
山内:このドラマ内での話ではありますが、上段は、帝と将軍の間以外で初めて登場ということになります。一段高いところの間で、成り上がった感じを表現しています。
A:この上段の間はどれくらい本編で映り込みますか。
山内:実はたった3シーンしか撮っていないんです。とても大事な3シーンなんですが。といってもそのうちの2シーンはほぼ同じシーンなので、実質2シーンですかね。先程も言いましたが、黒漆に金で天球を描いていて、この天球が、太陽にも見えるし月にも見える。あえてどちらに見えてもいいかなと思っています。
A:坂本城の広間には三日月が描かれていますね。
山内:はい。安土城の天体と、光秀の坂本城の広間の三日月とを対比させています。信長の天体は金、光秀の方は銀なんですね。仮に信長の方が満月だとしたら、光秀の方は三日月みたいな。ただ、あまり月、と言い切らない方がいいかなとは思っています。何に見えてもいいかなと。でも、三日月というのは、満月に向かっていく最初の瞬間、これが月であるとわかる最初の瞬間なので、このドラマの光秀に相応しいかなと思っています。逆にこちらの信長の方は、もうすでに月に行ってしまったとか、天を目指した男というイメージです。信長の方は壁面も金箔で、派手な花鳥の絵の襖などがありますが、光秀の方は地味で、そういう対比をさせています。
I:こういうセットのデザインというのは、脚本をもとに、こういうシーンだからこういうセットにしようとか考えてされるわけですよね。
山内:脚本にはそこまで細かい指示は書かれていないので、割と自由にデザインしています。広い部屋とか、金であるとかいったことも脚本には書いていません。
犬飼:いろいろ考えたんですよ。最初は信長の座る上段の間の背後には、金で描いた織田の木瓜紋をあしらうのはどうか、とか。でもそれはありきたりかなと皆で話し合って、もっとおもしろいものがいいと、もっとエンターテーメントに振ろうと。
山内:今まで信長って、龍をいつも背負って描かれていたんですが、もはや龍でもないなっていう域まできてしまっているなという感じで。
I:昇り詰めすぎて。龍はこれから昇る感じですものね。
山内:そういう具体的なものよりも、もっと抽象的で、いっちゃってる感じにできないかなと思って。もう、天ですよね(笑)。染谷さんもこのセットを見て、すごく喜んでくれて、セットに負けないように芝居しないとなっておっしゃって頂いたみたいです。
「麒麟がくる」の図面を基に坂本城を復元してほしい
A:距離的、地形的には坂本城から安土城は見えたのではないかと思うのですが。
山内:現地に取材に行った際、地元の人は坂本城から安土城は見えたんじゃないかと言っていました。実は、お互いに見えるように建てたんじゃないかと思うんですよね。
A:ああ、それは歴史浪漫を感じますね。(改めて図面を見ながら)しかしこの図面は、すごい図面ですよね。
山内:この図面をもとに実際に(坂本城を)建てられるんじゃないかっていうくらいすごいです。
A:坂本城跡地に復元してもらいたいくらいです。
山内:そうなんですよ、あそこに坂本城が復元されたら行きますよね。
A:行きます、行きます(笑)。ぜひこの図面で建てて欲しいです。滋賀県や大津市がやってくれないですかね?
※安土城の大広間は、1月10日放送の第40回から登場予定です。
●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。猫が好き。
●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。 編集を担当した『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』(藤田達生著)も好評発売中。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり