対本願寺戦で撃たれた信長(左/演・染谷将太)を、同時進行の丹波攻略で疲労困憊の光秀(右/演・長谷川博己)が救う。

今週放送の第39話を終え、残り5話となった『麒麟がくる』。前週の丹波攻略から一転、信長を約10年にわたって苦しめた本願寺との戦いが描かれた。

* * *

編集者A(以下A):今週は、冒頭から信長(演・染谷将太)を苦しめた本願寺との戦いが描かれました。顕如(演・武田幸三)が信徒に檄を飛ばす場面で〈進者往生極楽 退者無間地獄(進むは往生極楽、退くは無間地獄)〉という旗を持つ武者が目につきましたね。

ライターI:(以下I):あの旗差しは、広島県竹原市の長善寺に伝わるものを参考にして作られたのではないでしょうか。あの武者はきっと毛利からの援軍なんでしょうね。

A:本願寺と信長の戦いは、約10年に及んだ戦いでした。その概要をわかりやすく記述した文章を『信長全史』(小学館刊)から引用します。

〈「織田信長が本願寺をつぶすと宣言してきた。信徒ならこれに屈せず、身命を顧みずに信長と戦うべきだ。参加しない者は、もはや本願寺の信徒とはいえない」

 元亀元年(1570)九月、本願寺法主顕如の檄が全国に飛ぶ。
 以降、「進むは往生極楽、退くは無間地獄」を旗印に、退くことを知らず、各地で一向一揆が織田軍を襲った。それは、信長が初めて経験する異質な戦いだった。

それまで、信長は調略を駆使することで相手を内側から崩し、不要な戦闘を避けてきた。美濃や伊勢を平定した際も、正面からの戦いのみならず、内通者をつくることで効率的に攻略している。

だが、一般的な戦国大名とその家臣団が利害関係で結ばれているのに対し、顕如と一向一揆を結び付けていたのは、信仰の力だった。

門徒たちにとって、親鸞(浄土真宗開祖)の直系の子孫である顕如は、いわば生き仏ともいえる存在だ。その命令は絶対で、何よりも重い。信長に内通すれば、地獄行き――そんな信仰の力の前に、信長の調略は通じない。

退かない、裏切らない。兵士としては理想的ともいえる門徒たち。その異質な軍団は、信長を大いに苦しめ、恐怖させたのだった〉

I:『信長全史』はAさんが編集した本ですね。信長が上杉謙信に贈ったマントの写真も載っていますし、〈信長の金平糖〉の記述もありました。ところで、信長が〈坊主の鉄砲はあたらぬ〉といって前線に立って、鉄砲で撃たれるシーンがありましたが、信長の狂気を際立たせました。狂気といえば、討ち死にした原田(塙)直政の家臣を〈家臣の中に一向宗の信徒がいた〉と足蹴にするシーンもありました。本当にひどい仕打ちですが、ここに来てこのようなシーンが続くのはなぜでしょう?

A:時代考証の小和田哲男先生が11月に福知山市で行なった講演で本能寺の変の動機について〈「朝廷が決める暦への口出しや高僧快川紹喜の焼殺などを行った信長の非道を阻止するのが狙いだった」と強調>(両丹日日新聞より)していたそうです。いわゆる「非道阻止説」です。小和田先生の説を採用するならば、「信長はこんなに非道だった」という伏線なのかとも読めます。本能寺の変がどう描かれるのか、こんがらがった糸がますますこんがらがって、読めなくなってきました。

【光秀倒れる! そして愛妻煕子の死。次ページに続きます】

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