今週放送分を含め残り6話となって一瞬たりとて見逃せない展開になっている『麒麟がくる』。怒涛の進行の中で、長篠の戦いがスルーされる事態に発展した。
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ライターI:(以下I):第39話では久しぶりに登場した徳川家康(演・風間俊介)と家康正室の築山殿(演・小野ゆり子)とのシーンで、築山殿から衝撃的な台詞が発せられました。
編集者A(以下A):〈長篠の戦以来、織田様はこの三河には一顧だにせぬご様子〉ですね。なんと長篠の戦いが完全スルーでした。そのことが今週初登場の築山殿の口から発せられるとは。
I:尺が足りないんですからしょうがないです(きっぱり)。
A:第1話では、光秀(演・長谷川博己)が松永久秀(演・吉田鋼太郎)から鉄砲を譲られるシーンがあり、その後も鉄砲鍛冶の伊平次(演・玉置玲央)を探したり、斎藤道三(演・本木雅弘)や帰蝶(演・川口春奈)に鉄砲の打ち方を指南するシーンもあったり、さらには、斎藤道三と信長の正徳寺での会見の際には女軍師帰蝶が鉄砲を調達する場面もあったりで、鉄砲がキーアイテムになっているという印象でした。だとしたら、鉄砲の流れで長篠の戦いはしっかり描かれるとばかり想像していました。
I:予想が外れたわけですね。それは残念でした。しかし、家康と築山殿のやり取りは意味深でした。比叡山焼き討ち、本願寺との戦いが続いたことに関して、築山殿は〈神仏も恐れぬ所業。身も心も震えまする〉とあからさまに嫌悪感を示しました。
A:比叡山は、それこそ白河院(1053年~1129年)の時代から為政者を悩ませる存在でしたが、信長の時代にあっても多くの僧兵を擁していました。本願寺もまた将軍義昭が号令した「信長包囲網」の一方の旗頭。神仏の住まう聖地などではなくて、その実態は一大軍事拠点。革新勢力の信長と衝突するのは必然でした。
I:今でこそ、それがわかりますが、同時代を生きた人々にとってはやはり〈神仏も恐れぬ所業〉だったんでしょうね。しかし、風間俊介さんの家康もなかなかにいい味を出しています。もっと登場してほしかったですね。
怪しい菊丸の動き。本能寺の変に家康関与はあるのか?
A:その家康のもとを菊丸(演・岡村隆史)が訪ねて京の様子などを報告していました。〈信長様はこの徳川をどうみておる〉〈今はこの三河のことなどお忘れではないかと〉というやり取りの後に〈信じるに足るのはやはり明智様かと〉と。
I:なんだか、怪しいですよね。家康自身が信長のことをどう思っているのか読めないですよね。
A:家康が織田家に人質になっていた竹千代時代には、信長と将棋をともに打つ親しい関係でしたが、劇中では、信長が家康の父広忠を暗殺していました。いわば信長は父の敵(かたき)。信長に対して恨みを覚えるようになっていたとしても不思議はないわけです。
I:築山殿がでてきて、家康嫡男信康と信長息女徳姫との間に姫が生まれている。築山殿が〈姫君か。どこまでも役に立たぬ嫁御じゃ〉と切り捨てました。
A:今後、築山殿と信康が排除されることになるわけですが、どのような説が採用されるのか、それによって本能寺の変への家康関与もありうるのでしょうか。
I:非道阻止説とか家康関与説とか、いったいどんな流れになるのでしょうか。
【次週松永久秀がどのような最期を迎えるというのか? 次ページに続きます】