取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆

還暦を目前に絵を描き始めた異色の絵師は、じゃがいもが大好物。週に一度は自分で作る、そのガレットが元気の源泉だ。

【木村英輝さんの定番・朝めし自慢】

前列中央から時計回りに、じゃがいものガレット、玄米パンのトースト、トマトサラダ(玉葱・ブロッコリースプラウト)、天日海塩とオリーブオイル(共に『アンズテーブル』電話:090・3488・0186)、コーヒー。玄米パンはトーストするだけで充分に美味なので、バターやジャムはつけない。ガレットとトーストの器、コーヒーのマグカップは、ドイツのマイセンを愛用。トマトサラダは海塩とオリーブオイルでいただく。

前列中央から時計回りに、じゃがいものガレット、玄米パンのトースト、トマトサラダ(玉葱・ブロッコリースプラウト)、天日海塩とオリーブオイル(共に『アンズテーブル』電話:090・3488・0186)、コーヒー。玄米パンはトーストするだけで充分に美味なので、バターやジャムはつけない。ガレットとトーストの器、コーヒーのマグカップは、ドイツのマイセンを愛用。トマトサラダは海塩とオリーブオイルでいただく。

ガレット用のメークインは皮付きのまま千切りにし、太白胡麻油で炒めて塩、胡こ しよう椒で味付け。そのまま置くと、じゃがいものでんぷんでまとまる。美しい焼き色がついたら裏返す。愛用の フライパンは『錦見鋳造』(電話:0120・893・114)の「魔法のフライパン」だ。

ガレット用のメークインは皮付きのまま千切りにし、太白胡麻油で炒めて塩、胡椒で味付け。そのまま置くと、じゃがいものでんぷんでまとまる。美しい焼き色がついたら裏返す。愛用のフライパンは『錦見鋳造』(電話:0120・893・114)の「魔法のフライパン」だ。

まだ5歳ぐらいの頃、道端に蝋石で描いた絵が原点だった。木村英輝さんが幼少期を振り返る。

「近所のおばちゃんのリクエストに応じてすぐ描いて、みんなをびっくりさせたものです」

昭和17年、大阪・泉大津市に生まれた。絵が好きな少年はやがて京都市立美術大学(現・市立芸術大学)図案科に進み、卒業後は同大講師を務める。時は1960年代後半、’70年安保の前夜で大学は荒れ、教え子らも時代の空気に浮き足立ち、流されつつあった。

「美術系の学生が右や左やいうてどうするんや。僕らは文化的な革命を起こそうやないか」

そんな思いで企画したのが、日本初のロックフェスティバルである。その成功が海外での評価に繋がり、美大講師は日本初のロックプロデューサーとなった。プロデューサーとして社会と関わったのは、“紙に絵を描く”ことより“社会に絵を描く”ことを志したからだ。内田裕也・樹木希林夫妻との交流が始まったのもこの頃である。

’70年代後半~’80年代はポスターのデザイン、また伝説的なイベントの仕掛人として活躍するが、

「60歳を目前に、無性に絵が描きたくなった。それも美術館や画廊に飾られる絵ではなく、いろんな人が偶然に見てくれるような絵が描きたいと思ったんです」

こうして平成13年、友人の新社屋に描いた「犀のファミリー」が壁画第1号。その4年後には、青蓮院門跡華頂殿の襖絵「蓮三部作」という大作が誕生するのである。

京都・粟田口の青蓮院門跡(電話:075・561・2345)の襖に木村さんが描いた「蓮三部作」。庭園に面した座敷には「青の幻想」(下写真の手前)、その隣の部屋には「生命賛歌」(下写真の奥)、一番北の座敷には「極楽浄土」(上写真)と名づけられた蓮が咲く。

京都・粟田口の青蓮院門跡(電話:075・561・2345)の襖に木村さんが描いた「蓮三部作」。庭園に面した座敷には「青の幻想」(下写真の手前)、その隣の部屋には「生命賛歌」(下写真の奥)、一番北の座敷には「極楽浄土」(上写真)と名づけられた蓮が咲く。

京都・粟田口の青蓮院門跡(電話:075・561・2345)の襖に木村さんが描いた「蓮三部作」。庭園に面した座敷には「青の幻想」(下写真の手前)、その隣の部屋には「生命賛歌」(下写真の奥)、一番北の座敷には「極楽浄土」(上写真)と名づけられた蓮が咲く。

阿弥陀経の教えに枯れる、朽ちるの世界はないことから、青蓮院の襖絵では幻となった枯蓮が、旧友・樹木希林さん宅の板戸に蘇よみがえった。これで木村さんの「蓮四部作」が完成した。

阿弥陀経の教えに枯れる、朽ちるの世界はないことから、青蓮院の襖絵では幻となった枯蓮が、旧友・樹木希林さん宅の板戸に蘇よみがえった。これで木村さんの「蓮四部作」が完成した。

外はカリッと、中はホクホク

絵を描き始めて17年。特段の健康法はないが、自分が“カッコいい、面白い”と思うことだけをするのが健康の秘訣だという。

そんな木村さんの朝食には、大好きなじゃがいもが登場する。

「といっても週に1~2回は、僕が作るじゃがいもの千切り炒め(ガレット)が欠かせません。北海道のじゃがいも農家の息子から教わった料理で、簡単に作れて、外はカリッと中はホクホクで、一度食べたらハマる味です」

知位子夫人が担当する朝は、ガレットに代わって卵料理やソーセージ、チーズなどが食卓に。加えて、季節の野菜サラダと玄米トーストが、木村家の朝の定番だ。

朝5時前には起床し、朝食は8時頃。「夫婦ふたりなので、簡単な献立です」と、木村英輝・知位子夫妻。窓ガラスの絵は北方の守護神である亀。もちろん原画は木村さんだ。

朝5時前には起床し、朝食は8時頃。「夫婦ふたりなので、簡単な献立です」と、木村英輝・知位子夫妻。窓ガラスの絵は北方の守護神である亀。もちろん原画は木村さんだ。

名誉や権威、伝統に囚(とら)われない“ロック”な絵が襖に壁に躍る

今までに描いた襖絵や壁画は、国内外に200点以上を数える。

「僕が壁画を描くようになったのは大学の恩師、リチ・上野=リックス教授の影響。講師時代に彼女の壁画制作を手伝ったのが原点です。場所は、東京・日生劇場の『レストラン・アクトレス』でした」

木村さんの絵は、いずれも明快な輪郭線と大胆な色使いが特徴だ。

「僕が図案科卒業というのもあるけど、線を突き詰めて形を創るというのが京都市美大の伝統。それに対して、東京藝大は面を追求する傾向にあります」

構図を決めるには“方位”を重視するという。自然とともに生きてきた人間にとって、その空間の光と風を素直に取り入れたいと考えるからだ。

「東と南の辰巳の方位、または西と北の戌亥の方位を軸に構図を考える。そこの方角に絵を向かわせるか、その方角から光や風を感じるか、その流れが決まればぐずぐず考え込むことはありません」

依頼された屏風に、大地に息づくたくましい野菜を描く木村さん。方位を基に構図が決まったら、迷いはない。アクリル・ガッシュとネオ・カラーが相棒の絵の具。京都市内のアトリエで。

依頼された屏風に、大地に息づくたくましい野菜を描く木村さん。方位を基に構図が決まったら、迷いはない。アクリル・ガッシュとネオ・カラーが相棒の絵の具。京都市内のアトリエで。

絵の具も、すぐ乾くアクリル製。地位や名誉、権威や伝統に囚われない、“ロック”な生き方が絵にも投影されている。

木村さんの大胆な図案と個性的な色が、Tシャツや足袋となって登場。一澤信三郎帆布や宮脇賣扇庵と組んだトートバッグや扇子もある。Ki-Yan Stuzio(キーヤンスタジオ) 祇園本店/京都市東山区祇園町北側296 電話:075・746・3777

木村さんの大胆な図案と個性的な色が、Tシャツや足袋となって登場。一澤信三郎帆布や宮脇賣扇庵と組んだトートバッグや扇子もある。Ki-Yan Stuzio(キーヤンスタジオ) 祇園本店/京都市東山区祇園町北側296 電話:075・746・3777

躍動感ある蛙が描かれた大判トートバッグ(縦40×横36×マチ8.5cm、1万1800円)。ショルダーベルト付きで、特に男性に人気だ。

躍動感ある蛙が描かれた大判トートバッグ(縦40×横36×マチ8.5cm、1万1800円)。ショルダーベルト付きで、特に男性に人気だ。

『Ki-yan Kyoto もうひとつの京都探訪』(第三書館)は、木村さんの襖ふすまえ絵や壁画が彩る名所やグルメスポットを京都の文化人が案内。『外国人が見つけたKYOTOグルメ&アート』(ミシマ社)は、木村さんの絵に魅せられたポーランドの女性記者が案内する、グルメとアート巡り。

『Ki-yan Kyoto もうひとつの京都探訪』(第三書館)は、木村さんの襖ふすまえ絵や壁画が彩る名所やグルメスポットを京都の文化人が案内。『外国人が見つけたKYOTOグルメ&アート』(ミシマ社)は、木村さんの絵に魅せられたポーランドの女性記者が案内する、グルメとアート巡り。

取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆

※この記事は『サライ』本誌2019年11月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。

 

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