■ラジオを聴く
老人性難聴で耳が聞こえにくくなると、認知症リスクが増大する。これは、外部から脳への刺激が減ってしまうせい。逆に、聴力を働かせる刺激を与えることで、そのリスクを減らせるが、それに最適なのはラジオを聴くことだという。
「ラジオはテレビと違って耳しか使わないため、聴覚系脳番地をフルに働かせます。加えて音だけでしっかりと内容を聴き取るには集中力が必要になるので、理解系脳番地も活性化します」(本書212pより)
また、ラジオを聴きながら、食事の支度や掃除をするのもすすめられている。同時に2つのことをすると、単にラジオを聴くのとは別の脳番地が活性化されるというのがその理由。
■加藤院長自身のセルフケア
本書には、58歳の加藤院長が日頃心がけている「脳の若さを保つため」の方法が載っている。それは、以下の3つ。
1. 50歳からの人生の思い出を作っていく
2. 嫌な人とはできるだけ交流しないし、嫌なことはしない
3. 毎晩早く寝る
2と3は分かりやすいが、最初の思い出作りというのは、50歳を人生における大きな区切りとして、これ以降の思い出を積極的に作り、振り返るようにすること。これは、自分の人生に意義を見出すのに大事なことで、「人生にやり残していることや、今後やりたいことが明確になり、それが残りの人生の羅針盤」になるという。
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このように、加藤院長のメソッドには、同時並行で何かをするというものが多いのが特徴。脳が持つ膨大なキャパシティを考えれば、これくらいは必要ということなのだろう。定年後、もしも「家でテレビの前に座っているだけ」の時間が多いようなら、脳が一直線に老化するのを黙認しているようなもの。腰が重い(これも脳の老化のサインだという)のは最初のうちだけなので、本書のセルフケアをできるものから始めるとよいだろう。
【今日の健康に良い1冊】
『50歳を超えても脳が若返る生き方』
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000312000
(加藤俊徳著、本体880円+税、講談社)
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。