自由に気ままに生きる動物――そう思われてきた猫。ところが最新の研究では、どうもいろいろと様子が違うようです。
社会性があり、人間に併せた生活スタイルに順応し、飼い主さんに遊んでもらいたくてあの手この手で工夫もするし、こころの葛藤もあればストレスもたまる……。そうした猫の行動学の情報満載の『猫が幸せはならばそれでいい』(動物行動学者・入交眞巳著)の中でも、猫好きさんに注目されているのが「キャットアジリティー」に関する情報です。
猫の学習&運動能力を生かすトレーニング
猫は忘れっぽい動物と思われがちですが、実は脳科学的には猫も犬と同じように学習能力があり、トレーニングをすればいろんなことができる動物だといいます。
今、注目を集めているのが、猫の学習能力と運動能力を存分に生かしたトレーニングとして「キャットアジリティー(cat agility)」。アジリティー(agility)は直訳すると「敏捷性」「俊敏性」「機敏」「軽快」といった意味があります。
芸を覚えさせるの? そんなの猫に必要ある? と思われるかもしれませんが、こうした運動をさせることは、実は猫の心身の健康にもとても効果的。一緒にトレーニングをする飼い主さんとの絆も深めることができるコミュニケーションの一種でもあります。
実際に、どのようにトレーニングをするのでしょうか。入交先生に聞きました。
「犬のトレーニングなどでも使われるクリッカーという音の出る道具を使うのが一般的です。一定の合図を与えた時に、教えたことが上手にできると、すかさずクリッカーをカチッと鳴らして、その後でおやつを与えて褒めます。おやつがもらえるようなトレーニングをすると、猫は嬉しくなって、その動作を覚えるようになります」
入交先生によると、これは「オペラント条件付け」による学習による行動なのだとか。報酬や刺激に反応して、自発的に特定の行動をするよう学習することを意味するそうです。
「でも、クリッカーがなくても学習できます。高度な技を教える時には猫にわかりやすい一定の音がするクリッカーを使うのが便利ですが、おやつだけを使いながら教えていくこともできます」
基本的な方法はクリッカー使用時と同じで、何かの合図によって行動を指示して、それが成功したら褒めてもらえる、おやつがもらえる、優しくしてもらえるということを学習させます。
例えば「ここに飛び乗って」といって椅子をとんとんと指の先で示して、猫が椅子に飛び乗ってくれたら、ご褒美におやつをあげます。
本当に、猫にそんなことができるのでしょうか?
【次ページに続きます】