文/鈴木拓也

日本で初の「薬やめる科」の医師が提唱する「減薬・断薬のすすめ」とは?病院に行くことが、「薬をもらう」こととほぼ同義になっている、現代医療の趨勢に異を唱える医師がいる。その人の名は、松田医院和漢堂の松田史彦院長。

松田院長は、6年ほど前に世界で初めて「薬やめる科」を開設。減薬・断薬によって健康を回復させる診療を行っている。

投薬治療を完全否定しているわけではないが、「コレステロールが少し高い。じゃあ、お薬飲みましょう」などと、ポンポンと薬を出す風潮は問題あり、としている。

そして、著書の『日本初「薬やめる科」の医師が教える 薬の9割はやめられる』(SBクリエイティブ)の中で、持論の根拠として「薬が不要な3つの理由」を挙げている。

理由の1つめは、「明らかに病気ではないのに、病気と診断され薬を飲んでいるケースがよくある」こと。

2つめは、ほとんどの薬には副作用があり、このせいで新たな不調が発生すること。

3つめは、「なぜか突然、〇〇症候群、〇〇病といった新しい病気が提唱され、テレビで宣伝され、まるでそれに合わせたかのように、新しい薬が準備されている」という、ウラのありそうな社会現象の多さ。

こうした理由から、「薬が病気をつくる」ことが多々あると論じている。

■高血圧の薬は必要か?

例えば、高血圧。厚労省の調査(2015年)では、高血圧の患者は約1千万人。高血圧に相当する人は4300万人と推計されている。こんなに患者が多いのは、WHOと国際高血圧学会が定める適正な血圧の基準値が、時代とともに厳しくなっているというのが背景にある。

他方、日本人間ドック学会が提示した緩やかな基準だと、高血圧の人の推計は4300万人から一気に860万人に減る。

松田院長は、「基準を少し変えるだけで、高血圧とされる人が一気に増えたり、減ったりする。基準とはその程度のもの」とし、「そもそも高血圧は病気なのか」と指摘する。

本書では、慶大医学部による百寿者(100~108歳)を対象にした調査では、食事やトイレなどの自立度が高いのは、収縮期血圧が156~220のグループであったという。また、認知症の程度も「血圧の高い人のほうが軽かった」と報告されている。

中年期以降の年齢層の人たちが血圧が高いのは、動脈硬化で狭くなった血管で血流をスムーズに流すための適応であり病気ではない。よほど高い血圧でない限り、「医師から処方された降圧剤を、ありがたがって無理に服用することもない」と、松井院長は述べている。

同様のことは、血糖値やコレステロール値についても言えるそうで、少々数値が高くても問題ないとしている。

■薬をたくさん飲むほど不調が増える

松田院長は、「副作用のない薬はない」と言う。とりわけ問題なのは、「抗〇〇薬」や「〇〇拮抗剤」といった名前のついた薬剤。体内の酵素や神経伝達物質などの働きを部分的にブロックして、症状を抑える作用がある。こうした薬について、松田院長はこう警告する。

「何か体に不具合があって出る症状は、だいたいがそこを自然治癒させようとして生じるもの。健康になるために必要な体内システムの働きです。それを薬でムリヤリ止めるのは、自然な治癒力を奪うことにもなります。また、体に悪さをする物質を『選択的に』ブロックするとはうたっていますが、そう都合よくいくものではありません。人体はたった一つの細胞が繰り返し分裂してできたものですから、薬として内服した化学物質は胃腸で吸収され、全身に行き渡ります。結果、悪くない臓器まで傷めてしまう場合もあります」(本書54pより)

薬がはらむ別の問題は、シニア層に多い多剤併用。何種類もの薬を飲んで、かえって身体を悪くしている患者がたくさんいるという。さらに、他の医師が出した薬の副作用を病気の症状と勘違いして、新たな薬が出されるといったこともまかり通っているとも。

■市販薬は一時的な使用と心得る

ドラッグストアで気軽に買える風邪薬や胃腸薬などは、どうなのだろうか?

これらについては、松田院長は「緊急対応として、短期間服用する」のが原則だとしている。例えば、頭痛や咳など風邪の諸症状がひどくて、とにかく緩和したいときに風邪薬を服用するのはいいが、「大した症状も出ていないのに予防を兼ねて飲むとか、もう症状がおさまっているのに飲み続ける」のはNG。やがて薬が効かなくなるリスクもあるという。

■薬を減らす・やめるで健康に

本書で薬の問題を切々と訴えている松田院長が創設した「薬やめる科」は、その名のとおり、薬をやめる、もしくは減らすことに軸足を置き、健康を取り戻すことをねらう。そして、できるだけ安全な薬(漢方薬が主)や代替療法に切り替えてゆくのが方針だという。
方針でキーとなるのは、「腸内フローラの改善」、「化学物質、有害金属などのデトックス」、「体温の維持と免疫力の向上」など9つの治療ポイント。また、気功のような他の医師が踏み込まない手法も否定せず、積極的に取り込んでいる。

具体的な施療については、通院する必要があるが、エッセンスについては本書からでも得るものは多い。「自分は薬を飲み過ぎている」と自覚している方は、読んでみることをお勧めしたい。

【今日の健康に良い1冊】
『日本初「薬やめる科」の医師が教える 薬の9割はやめられる』

https://www.sbcr.jp/products/4797395570.html

(松田史彦著、本体1,300円+税、SBクリエイティブ)

日本初「薬やめる科」の医師が教える 薬の9割はやめられる

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

 

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