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健康

病気になるまで気づかれない!万病の元「慢性炎症」にご注意【予防医療の最前線】

文/中村康宏

生活習慣病やがんを含む加齢関連疾患に共通するメカニズムとして、「慢性炎症(まんせいえんしょう)」が注目されています。

「炎症がなぜ病気と関係があるの?」とお考えの方もいらっしゃると思います。炎症は本来体を守るためのメカニズムなのですが、このコントロールがうまくいかなくなると組織の破壊、そして臓器の機能低下や発がんにつながることがわかってきたのです。

そこで今回は、炎症とは何か、そして慢性炎症がなぜ問題で、私たちの体にどのような影響を及ぼすかについて解説します。

炎症には2種類ある

そもそも炎症というのは、医学的には“内的・外的ストレスに対する生体防御反応”のことです。炎症が起こるということは、正常に免疫機能が働いていることを意味します。つまり本質的には、炎症というのはストレスに対する正常な保護的・適応的な応答なのです(※1)

この炎症は、その経過から「急性炎症」「慢性炎症」に分けられます。

急性炎症は、細菌・ウィルスへの感染や外傷などにより誘導され、典型的な症状として発赤(赤み)、腫脹(腫れ)、発熱(熱感)、疼痛(痛み)が現れます。

一方の慢性炎症は、急性炎症のような症状を示さないものが多く、くすぶるように炎症が慢性化している状態を指します(※2)

慢性炎症はどのように発生するのか

カラダは組織の異常(ウィルス感染やがん細胞)に対して、様々な反応を起こします。その一つに、異常部位から「炎症性サイトカイン」と呼ばれる炎症シグナルが出て、免疫細胞を当該部位に集める反応があります。集まった免疫細胞は、活性酸素を用いて異物を攻撃します。その後は「線維芽細胞」と呼ばれる細胞が集まってきます。線維芽細胞は欠損した組織を修復するために「コラーゲン」などの線維を分泌し穴を埋めて行きます。これを足場として毛細血管や元の細胞が再生してきます(※3)

この免疫細胞をコントロールするメカニズムに異常が起こると、慢性炎症が発生します。急性・慢性を問わず、炎症が起きた場所では下図のような組織修復が起こりますが、慢性炎症では炎症のブレーキが効かず、免疫細胞が活性酸素を出し続けます。

炎症が元に戻るまで:(A) 傷口が止血される (B) 免疫細胞が傷口にやってくる (C) 免疫細胞が炎症を起こす (D) 線維芽細胞がやってくる (E) コラーゲン等の線維や血管が新しく作られる (F) 修復が完了する

本来、活性酸素は異物を除去するために必要なものですが、活性酸素が出続けると周囲の組織を破壊してしまいます。さらに、組織傷害と同時に上記の修復サイクルが続くことによって、組織の線維化(コラーゲンの沈着)や細胞増殖が異常に進み、最終的には不可逆的な臓器機能障害がもたらされてしまう、という本末転倒な結果に至ってしまうのです。

これを「組織リモデリング」と呼び、慢性炎症が様々な病気を引き起こす元凶の一つと考えられています(※4)。では組織リモデリングの例として、気管支喘息で何が起こっているのか見てみましょう。

上の画像は、健常者(左)と喘息患者(右)の気管支断面の病理画像(細胞を見る検査)です。一目瞭然で両者が異なることがわかると思います。

まず、気道の広さが異なりますね。そして、右側は白色の部分が多いのに対して、左側はピンク色が大部分を占めることにも気づくと思います。それらの原因は、上皮の種類が変わってしまったこと、平滑筋細胞が異常に増えてしまったことです。さらに、基底膜から気道までの距離が、喘息患者では長くなっています。それは、血管や細胞の増加、コラーゲン等による線維化が進んだことが要因です。

このように、リモデリングの過程で線維化と細胞の異常増殖が起こり、気管支の本来の「空気の通り道」としての役割が障害されてしまっているのです(※5)

慢性炎症はDNAも傷つける

また再生される細胞も、活性酸素によりDNAに異常が起こりやすくなり、発がんしやすくなります。

例えば、ピロリ菌に感染すると胃粘膜が破壊されてしまう「慢性胃炎」が起こります。胃がんは慢性的な炎症を背景に発生することが知られており、胃がんの実に99%がピロリ菌感染によるものなのです(※6)

他にもヒトの悪性腫瘍の少なくとも20% 以上が慢性炎症と関連があるとされており、消化器がんに限っても、胃がんだけでなく、肝細胞がん、膵がん、大腸がん、胆嚢がん、食道がんなど、慢性炎症を発生母地とするがんは数多く存在します(※4)

慢性炎症は病気になるまで気づかれにくい

生活習慣病を含む加齢関連疾患を引き起こすメカニズムとしても、慢性炎症の関与が指摘されています。慢性炎症は、老化、関節リウマチなどの自己免疫疾患や動脈硬化、メタボリックシンドローム糖尿病アルツハイマー病、COPD(慢性閉塞肺疾患)、がんなどと関連し、現代人に増えているさまざまな病態・病気にも炎症が関わっていることが明らかになってきています(※7)

以上、「慢性炎症」の何が問題になるか、そしてどのような病気を引き起こすかについて解説しました。

慢性炎症の経過は非常に長く、急性炎症のような症状がないだけに病気になるまで気づかないことも多々あるという、まさに「くすぶる」という表現がぴったりな病態です。この慢性炎症が起こる原因と特徴、予防については、次回解説したいと思います。

【参考文献】
※1.日老医誌 2017: 54; 105-13
※2.Nat Rev Immunol 2013; 13: 875-87
※3.Mol Biol Cell 2002: 13; 4279-95
※4.日消誌 2011: 108; 1374-82
※5.Nature Review 2015. DOI: 10.1038/nrdp.2015.25
※6.Digestion 2012; 86: 59-65
※7.J Gerontol Series A 2014; 69: S4-9

文/中村康宏
関西医科大学卒業。虎の門病院で勤務後New York University、St. John’s Universityへ留学。同公衆衛生修士課程(MPH:予防医学専攻)にて修学。同時にNORC New Yorkにて家庭医療、St. John’s Universityにて予防医学研究に従事。

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