文/中村康宏
「AGEs」(エージス、エイジス)という言葉を、耳にしたことはありませんか? 「AGEs」とは「終末糖化産物」の略称で、体内のたんぱく質がブドウ糖と結合して変性したものです(この反応を「糖化反応」と呼びます)。加齢によってこの物質が蓄積することから,age(エイジ、加齢)にちなんで“AGE”または“AGEs”と名付けられました(※1)。
加齢に伴い増加するAGEsは、当初は単なる「カラダの焦げ」のように考えられていました。しかし近年の研究で、生活習慣病によってAGEsの増加ペースが早まると、加齢関連疾患のリスクが増すなど、その重要性が認知されてきました。
今回は様々な病気に共通する「AGEs」と、それを生むメカニズムである「糖化反応」について解説します。
AGEsは食べ物に由来する
人間の生体内で問題となるAGEsの身近な例としては、健診や病院採血などで糖尿病の指標で用いられる「ヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)」が挙げられます。これは、通常のヘモグロビンが長時間、高血糖状態に晒された結果、糖化反応を受けてできたものなのです。
糖化反応は、体外でも体内でも起こります。生体内では、糖を利用してエネルギーを産生する反応によってAGEの形成と蓄積が起こります。余分な糖分がAGEをどんどん作ってしまいますので、予防にあたっては「高血糖」を防ぐことが肝要になります。
一方、AGEは体外から摂取する食品にも含まれます。それは例えば、焼く、揚げるなど食品の調理や保存の過程において生じます。コーヒーや醤油、赤ワイン、お味噌など「茶色い食品」にはAGEsが多く含まれていることが知られています(※2)。
AGEsはどんな病気に関連している?
AGEsはタンパク質と糖が結合してできるので、まずは体内のタンパク質が存在する部分に異常が現れます。例えば、人体のタンパク質の1/3は「コラーゲン」として存在しているのですが、実はこのコラーゲンは10種類以上の種類があり、骨や皮膚、軟骨、血管など全身に存在します。また、筋肉を構成する「エラスチン」というのも体内のタンパク質として重要です。筋肉は体を構成する骨格筋のみならず、胃腸や血管・尿管の太さを調整する平滑筋として内臓に分布しています。
このように、人間の体には全身にタンパク質が存在しているため、AGEの蓄積によって、骨折、皮膚のたるみ・シワ、筋力低下、臓器機能障害、アルツハイマー病など加齢性疾患、など全身に影響が現れるのです(※3)。
AGEsの蓄積を防ぐ3つのキーポイント
ではこのAGEsの蓄積を防ぐにはどうしたらよいのでしょう。それには、AGEが蓄積するまでのプロセスを知る必要があります(図参照)。この図の中に、AGEs予防のキーポイントが3つあります。
(1)食事からのAGEs摂取を防ぐ
食品に含まれるAGEsの30%は、食事によって体内に取り込まれます(※4)。それゆえ前述したようなAGEsの多く含まれる食品をたくさん食べることは控えるべきです。
(2)酸化ストレスを減らす
体内でAGEsができるまでの一連の反応は、“前期反応”と“後期反応”の2つに大別されます。ポイントは、前期反応は元に戻ることができる、後期反応は酸化ストレスによって生成が促進される、ということです(※5)。つまり、酸化ストレスを回避し後期反応を完了させないことが、AGEs予防に役立つのです。
(3)腎機能を維持する
体内で生成されたり体外から取り込まれたAGEsは、腎臓から排泄されます。だから、この腎機能が低下すると、体内に蓄積されてしまいますので腎機能を正常に保つことがキーポイントです。
【次ページに続きます】