日本三名泉のひとつに数えられる岐阜県・下呂温泉は、天暦年間(947~957)に傷ついた一羽の白鷺が源泉を発見したという伝説が残る由緒ある温泉です。およそ千年の歴史をもち、江戸時代には儒学者の林羅山(はやし・らざん)が、群馬の草津、兵庫の有馬と並ぶ「天下の三名湯」と紹介しました。
下呂市内を流れる飛騨川沿いに源泉が湧き、川の両岸に旅館やホテルなど約70軒が立ち並んで、のどかな温泉街を形成しています。源泉の最高温度は約84℃。数本の源泉をひとつにまとめて管理する温泉集中管理システムにより、各宿泊施設には加水・加温をせずに約55℃を保った状態で温泉が供給されています。そんな下呂温泉では、貴重な温泉資源の保護と有効利用を早くから取り入れてきました。
温泉の泉質はアルカリ性単純温泉。pH値が9以上という高い数値のアルカリ性で、古い角質を取り、すべすべにしてくれる美肌の湯です。さらに市内の小坂町には天然の炭酸温泉が湧く飛騨小坂温泉郷もあります。日帰り入浴施設「ひめしゃがの湯」では約24℃の源泉そのままの浴場もあります。入浴直後は冷たく感じますが、上がるころにはよく温まり、体のコリがよくほぐれます。
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取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。