六君子湯で改善されるのですね。もう少し詳しく教えてください。
「胃は普段はぺちゃんこですが、いったん食べ物が入ってくると、それを貯めるために膨らみます。機能性胃腸症の原因は、この胃を膨らませる機能が障害されていることです。胃が膨らまないと食べ物が食道からおりてきても、かき混ぜることもできなければ、胃の外(十二指腸)に送り出すこともできないので、いつまでも食べ物が胃の中にとどまったままになります。そうすると胃もたれや胸焼けといった症状が出現し、空腹感がなく、食事の時間になったから仕方なくお腹に入れる、という状態になってしまいます。
こうした場合の西洋医学の治療は、胃酸の分泌を抑えて胸焼けなどを改善しようとするものです。六君子湯は胃酸を抑えるお薬とは別の働きで症状を改善させます。具体的には、まず胃を膨らませる機能を回復させます。
膨らむことで縮むことが可能となり、食べ物を混ぜあわせて十二指腸に送り出すことができるようになります。六君子湯は膨らまなくなった胃を膨らませることができる唯一の薬です。すなわち、漢方にしかできない治療なのです」
漢方にしかできない治療があるのは知りませんでした。この漢方薬はどこで手に入りますか?
「漢方薬を手に入れるには、やはり漢方医の診察を受けた上で、ご自身に合っているものを処方してもらうのが一番です。特に、すでに病院を受診されている場合は、主治医にまず相談してみましょう。ちょっと試してみたいというのであれば、漢方薬局やドラッグストア、インターネットなどでもお求めになれます」
気になる方はぜひ六君子湯を試してみてくださいね。次回は漢方薬以外の食欲改善方法にも触れてみる予定です。
六君子湯に含まれる「陳皮」という生薬は、写真の温州ミカンの果皮を乾燥させたもの。
文/葉山茂一(はやま・しげかず)
漢方デスク株式会社代表取締役。漢方・薬膳の総合ポータルサイト「漢方デスク(http://www.kampodesk.com)」を企画・運営。
取材協力/渡辺賢治(わたなべ・けんじ)
慶應義塾大学環境情報学部教授医学部兼担教授。漢方デスクの漢方医学監修を務める。
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