布団に入ってもなかなか眠りにつけない……、いったん眠りについても夜中に何度も目が覚めてしまう……、起床予定の時間よりも早く目覚めて、そのあと眠れない……、眠りが浅く熟睡した感じがしない……。
睡眠の悩みを抱える人が多く、ストレスフルな現代社会において、日本人の睡眠時間は世界で最下位というデータもあります。あなたも年齢を重ねるとともに、そんな睡眠への不満が高まっているのでは?
これまで2万人以上の睡眠に悩む人を治療してきた睡眠専門医・白濱龍太郎医師の最新刊『「寝つきが悪い」「すぐに目が覚めてしまう」人のお助けBOOK』(主婦の友社)は、そんな「眠れない人」に手を差しのべてくれる一冊です。今回は、深い眠りがかなうストレッチをご紹介します。
文/白濱龍太郎
ぐっすりストレッチで、深睡眠をしっかりとれるようになる
次の日に疲れを残さない「深睡眠」をしっかりととるためのカギとなるのが、“眠るタイミングに向けて深部体温を下げること”です。寝たはずなのに疲れがとれない人は、深部体温のリズムが乱れています。夕方に深部体温のピークがなく、夜眠る時間になっても深部体温が高いままという人はけっこういます。また、現代人は夜に深部体温を下げるために働く睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌量が少なくなってきています。
そこでおすすめしたいのが、私が考案した「ぐっすりストレッチ」。入浴によって意識的に深部体温を上げ、そこから眠るタイミングに向けて深部体温をスムーズに下げると、朝まで起きずにぐっすりと眠れるようになります。ぐっすりストレッチの基本は、「首もみストレッチ」「腕まわしストレッチ」「足首曲げ深呼吸」の3つです。
首もみストレッチ
首の後ろにシャワーを当てながらマッサージをする方法です。首の後ろに熱めのシャワーを当てると、血管が拡張して血行が促進されます。すると深部体温が上がり、その後急に下がることで深く眠れるようになるのです。
(1) シャワーを固定し、ほんの少しだけ熱めのお湯(43℃程度)を首の後ろに5〜10分程度長めに当てる
(2) 両手で親指以外の指を組む
(3) シャワーを当てたまま、首の横のくぼみを親指で軽くもんで、上下にゆっくりと1分ほど動かす。首のこりを解消することで、血行を促進し、深部体温が上がりやすくなる
腕まわしストレッチ
布団に入る前に行なう「腕回しストレッチ」は、肩甲骨まわりを刺激するために行ないます。左右の肩甲骨をひきつけるように腕をゆっくりまわすと、肩甲骨の周辺の筋肉をほぐすことができて血行がよくなるので、深部体温がさらに上がりやすくなり、深い眠りを得るのに役立ちます。
(1) 腕を曲げ、わきを開いてひじを上に上げる
(2) 腕をそのまま後ろに向かって大きくゆっくりぐるりと回す
(3) ひじが体の前にきたら手を組み、ひっくり返して腕を前に伸ばす
(4) (3)から腕をそのまま頭の上に伸ばし、2秒ほどキープする。(1)~(4)を5~6回ほど(1分間)ゆっくりと繰り返す
足首曲げ深呼吸
布団の上で行なう「足首曲げ深呼吸」は、足首を曲げたり伸ばしたりすることで、足の血行がよくなり、熱が放散されて深部体温が下がりやすくなります。
(1) あお向けに寝て、3秒くらいかけてゆっくりと大きく鼻から息を吸い込む。同時に、足首をぐっと手前に曲げる
(2) 口をすぼめ、3~5秒くらいかけてゆっくりと息を吐ききりながら、足首を下向きに伸ばす。(1)、(2)を1分ほど繰り返す
イラスト/宮重千穂
すっきり目覚める、寝たままストレッチ
ぐっすり眠れば、朝の目覚めもすっきり。起きたばかりの体をストレッチで適度に刺激すると、自律神経が活動モードの交感神経優位に切り替わり、その日を活動的に過ごせます。すると、夜もすんなり眠りにつけます。また、日の光を浴びながら行なうとセロトニンが分泌しやすくなります。このセロトニンは、夜になって眠気を生み出すメラトニンに変化するので、自然に眠気が訪れやすくなってくるのです。このような正しいリズムにするためにも、起き上がる前に寝たままストレッチを行なって、心と体をすっきり目覚めさせましょう。
寝たままストレッチの方法の1つが、「寝起きで全身ストレッチ」。一晩中、同じ姿勢で寝ていると、全身の筋肉がこわばって血行が悪くなります。そこで、起床時に思い切り「伸び」をして筋肉をほぐしてみましょう。すると、全身の血行がよみがえり、気持ちよく目覚められるはずです。
次に、「グーパーぶらぶら」。長時間横になって眠っていると、体内のあちこちで血液が滞ります。このとき、手を真上に上げて「グー、パー」と動かし、末端にたまった血液を心臓に戻しましょう。仕上げに手首をぶらぶら振ると、さらに血行がよくなります。
もう1つ行ないたいのが、「寝たまま自転車こぎ」。下半身にたまった血液を全身に循環させるエクササイズです。あお向けのまま、自転車をこぐように両脚を大きく動かせば、体中がポカポカしてきます。
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「寝つきが悪い」「すぐに目が覚めてしまう」人のお助けBOOK
著/白濱龍太郎
主婦の友社 1,540円(税込)
白濱龍太郎(しらはま・りゅうたろう)
医学博士、産業医。医療法人RESM新東京・新横浜理事長。日本オリンピック委員会・医科学強化スタッフ、TOKYO2020選手用医師。日本睡眠学会評議員、総合診療専門医、社会医学系指導医。福井大学客員准教授。
筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学修了。東京共済病院、東京医科歯科大学附属病院を経て、2013年に「RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック」を開設。睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシーなどの睡眠にまつわる病気を適切に診断するために、最新の医療機器を導入し、日本睡眠学会認定施設として専門医療を提供している。主な著書・監修書に『1万人を治療した睡眠の名医が教える 誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』『ぐっすり眠れる×最高の目覚め×最強のパフォーマンスが1冊で手に入る 熟眠法ベスト101』『ぐっすり眠る習慣』(以上、アスコム)、『こんなに怖い 図解 睡眠時無呼吸症候群』(日東書院本社)など多数。