人の生き方とは様々です。何となく観ていたテレビ番組や新聞の記事などで、とある人物の人生を知り、心打たれることがあります。人様の生き方から学ぶことも多い。また、己の生き方と比べ、恥じることもしばしばです。

どこで、人生の違いが生じたのか? 運なのか、チャンスだったのか……。おそらくは、志と運を呼び寄せる努力、そしてチャンスを物にする能力の違いではないでしょうか?

先人たちが残した名言や金言の中に、その答えを見つけることができるかも知れません。第2回の座右の銘にしたい言葉は「一期一会(いちごいちえ)」 です。

目次
「一期一会」の意味とは
「一期一会」の由来
「一期一会」を座右の銘としてスピーチするとしたら
最後に

「一期一会」の意味とは

「一期一会」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「一生に一度しかない出会い」と説明されています。「一期一会」という言葉は、多くの人にとって馴染み深いものでしょう。文字通りに解釈すると「一つの時期に一度の出会い」となりますが、「一期」とは一生涯、「一会」とは一度の茶会を意味します。この言葉が持つ本質的な意味は、それぞれの出会いが一生に一度きりであるという価値を認識し、その瞬間、瞬間を大切にしようという教えにあります。

この言葉は、茶道の世界でよく引用されます。茶道の師範が弟子に対して、毎回のお茶会をまるで生涯に一度の出会いであるかのように尊重し、精一杯のおもてなしをするよう、教えるのです。しかし、この考え方は、茶室の畳の上だけに留まるものではありません。私たちの日常生活においても、毎日の出会いや経験を大切に生きる姿勢を教えてくれます。

「一期一会」の由来

この言葉の起源は、戦国時代から安土桃山時代に活躍した茶の湯の大家、千利休(せんのりきゅう)にまで遡ります。千利休の弟子である山上宗二の著書『山上宗二記(やまのうえのそうじき)』の、「茶湯者覚悟十躰(ちゃのゆものかくごじゅったい」には、千利休の言葉として「常の茶の湯なりとも、路地へ入るより出るまで、一期に一度の会のように亭主を敬畏(けいい)すべし、世間雑談、無用也」という記述があります。

その後、江戸時代後期に茶人として知られた井伊直弼(いいなおすけ)が「茶湯一会集(ちゃのゆいちえしゅう )」の冒頭で、「一期一会」と記し、世に広まったという説があります。茶会だけでなく人との出会いを尊重し、一期一会の精神を大切にしよう、という思いを込めたとされています。これは、その後も日本の文化や芸術の中で、大切に受け継がれてきました。

「一期一会」を座右の銘としてスピーチするとしたら

座右の銘として「一期一会」を掲げることは、人生における出会いや瞬間を大切にする哲学を表します。スピーチでは、この言葉が私たちにどのような教訓を与えてくれるのかを紹介できます。例えば、「一期一会」の精神を持って日々を過ごすことで、人生がより豊かで意味のあるものになる、というメッセージを伝えることができるでしょう。

具体的な生活の中でのエピソードを交えながら、この言葉を通じて人生をどのように豊かにすることができるのかを伝えることで、聴衆に深い印象を与えるでしょう。以下に「一期一会」をスピーチに取り入れた際の例文を、三つ紹介します。

1:感謝の心を込めたスピーチ例

「『一期一会』という言葉は、私たちに今この瞬間の大切さを教えてくれます。例えば、今日ここで皆さんと共に過ごしているこの時間も、再びは訪れない一度きりの出会いです。この言葉を座右の銘として、私は日々、人との出会いに感謝の心を持ち、一瞬一瞬を大切に生きるよう心がけています。出会いに感謝し、その瞬間瞬間に最善を尽くすことで、私たちの人生はより豊かなものになるのです」

2:一瞬の美しさを見出すスピーチ例

「私が『一期一会』を座右の銘に選んだ理由は、それが教えてくれる、一瞬の美しさを見出す力にあります。例えば、通りすがりに見かけた花の美しさに立ち止まり、その一瞬を心に刻むこと。それは、次にその花を見る時があるとしても、今日見たその花と全く同じ状態ということはないのです。『一期一会』の精神は、私たちに今この瞬間を生き、その全てに価値を見出すよう促します」

3:出会いの大切さを伝えるスピーチ例

「『一期一会』の精神を胸に、私は毎日の出会いを大切にしています。例えば、朝の通勤時にすれ違う人、仕事で関わるクライアント、家族や友人との会話。これらすべての瞬間は、二度と戻ってこない一生に一度のものです。だからこそ、私は一人ひとりとの出会いに感謝し、それぞれの関係を大切に育てていきたいと心から思います。『一期一会』は、私たちが人と接する際の心のあり方を教えてくれる、生き方の指針です」

最後に

「一期一会」という言葉は、私たちに人生での出会いの価値を再認識させ、その瞬間瞬間を大切に生きることの大切さを教えてくれます。この言葉を心に留めて、今日出会う人々に真心を込めた対応をしてみませんか? それが、人生をより豊かにする第一歩かもしれません。

中高年の皆様にとって、この言葉が新たな人生の指針となり、日々の生活に新しい色を加えるきっかけになれば幸いです。

●執筆/武田さゆり

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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