文/印南敦史

『すべての不調は自分で治せる! ひとり整体』(パク・ソンフン 著、SBクリエイティブ)の著者は、兵庫県尼崎市で慢性腰痛・自律神経専門整体院「つながり整体院」の代表を務めている人物。

開業以前には理学療法士として病院勤務をしながらデイサービス、訪問リハビリなどの業務に携わっていたそうだ。そして知識や技術が向上したころ、慢性の腰痛を抱える人たちを数多く担当するようになった。

そこでは、腰に湿布を貼ったり、電気をあてたりしても腰痛が改善されないという現実に直面することになる。が、そんななかで「人間の体はつながっているから」ということに気づいたのだという。特定の部位が痛めば、そこにばかり意識が集中してしまうものだが、たしかにその視点は重要かもしれない。

骨格、筋肉はバラバラにあるのではなく、すべてがつながっています。
どこかの筋肉が硬くなり、本来の機能を果たせなくなると、その筋肉につながっている骨格に負担がかかり、位置がずれます。反対に、骨格がずれれば筋肉が引っ張られ、痛みが出ます。
そこで、痛みの出ている骨格につながっている「筋肉」に働きかけると痛みが改善するのです。(本書「はじめに」より)

こうした「つながりの視点」を持って施術をすると、慢性的な痛みが和らぎ、解消するという好結果を得ることができたのだという。そこで本書においても、「つながりの視点」を軸として、自身が考案したセルフでできる「ひとり整体」を紹介しているのである。

ここではPART 4「食事や姿勢を正して、死ぬまで若々しく健康に! 老けない習慣編」のなかから、「姿勢」についてのトピックを抜き出してみよう。

腰痛や膝痛、首の痛み、四十肩や五十肩などのさまざまな痛みは、姿勢の悪さが大きな原因。姿勢が悪いと、筋肉の硬さを取ったとしても再発しやすいため、著者も整体の施術をする前には必ずその人の姿勢を見るのだという。

筋肉は骨格についている。そして悪い姿勢をとっていると骨格の配列に狂いが生じ、筋肉が張ってくる。いうまでもなく、筋肉に負担がかかっているからだ。つまり姿勢を正さない限り、こりはなかなか改善しないのだ。

よい姿勢とは、首、肩、骨盤が一直線になり、体重を骨で支えられる状態です。
反対に悪い姿勢は、あごが突き出ていたり、巻き肩になっていたり、ねこ背や反り腰になっていたり、首、肩、骨盤が直線になっていない姿勢です。
(本書132ページより)

したがって、あごを引いた背伸び動作で、正しい姿勢を習慣化する必要がある。

また、座るときの姿勢にも気をつけたい。座っているときのほうが、立っているときより姿勢は悪くなりがちだからだ。

たとえばデスクワークの際、椅子に浅く腰掛け、視線を下げてパソコンを打つと首と手が前に出る。すると肩は内側に入って巻き肩になり、肩、首の筋肉が引っぱられ、張っていくことになる。

ここで見逃すべきでないのが、「首の筋肉は、表情筋などの顔の筋肉とつながっている」という著者の指摘だ。悪い姿勢から首の筋肉の働きが悪くなると、表情筋に悪影響が出るため、顔のたるみやシワ、エラが張るなどの原因になってしまうというのだ。これは、なかなか気づきにくいことではないだろうか。

座るときには深く腰掛けるようにしましょう。腰と背もたれの間にすき間があると、そこを埋めてねこ背になりがちなので、タオルなどを使ってすき間を埋めてもよいでしょう。
パソコンを打つときには、目線がまっすぐになるようディスプレイを配置するといいでしょう。また手や肩が前に出ないよう、キーボードはなるべく手前に置きましょう。肩の上にちょうど頭が来るような姿勢をとります。(本書133ページより)

そのため、座面が低い椅子やソファなどにはなるべく座らないようにしたほうがよいようだ。座面が低く膝が上がってしまうと、骨盤がうしろに倒れやすくなってしまうからだ。骨盤がうしろに倒れると、首、肩、骨盤が直線にならないため、座面が低いと感じた場合は調整する必要がある。

座ったときに股関節が曲がる角度が90度というのが最適な角度です。それ以上、またはそれ以下で座ると骨盤がうしろに倒れやすくなります。(本書134ページより)

なお、姿勢をよくするには、正しい姿勢を維持する筋肉を鍛える「筋力トレーニング」、いわゆる筋トレが必要。高齢者に姿勢の崩れた肩が多いのも、たいていは筋力不足が原因であるようだ。筋力が落ちてくると背中が丸まってくるわけで、納得できる話ではある。

椅子に座り、よい姿勢を保つにはお腹のインナーマッスルが必要です。お腹のインナーマッスルとお尻の筋肉を効かせた状態で骨盤を立てた姿勢を維持しなくてはならないからです。
たとえ80歳、90歳になっても、筋トレはできますし、筋肉もつきます。ムリをする必要はありませんが、年齢に応じた筋トレをしましょう。同時にたんぱく質をきちんと摂る食事を心がけましょう。(本書134ページより)

本書には簡単にできる筋トレの方法も紹介されているので、参考にしてみてはいかがだろうか?  姿勢がよくなれば見た目が若々しくなり、疲れにくくもなる。もちろん体の痛みも改善する可能性が大きいのだから、取り入れてみる価値はありそうだ。

『すべての不調は自分で治せる! ひとり整体』
パク・ソンフン 著
SBクリエイティブ

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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