2025年には、 65歳以上の5人に一人が認知症になるとされ、 介護が必要になる人の数が爆発的に増えることが予想されています。そこで、脳科学者・薬学者の杉本八郎先生と栄養学の専門家、博士(栄養学)の松崎恵理先生が最新エビデンスをもとに考案した健康スープレシピ『認知症研究の第一人者がおしえる脳がよろこぶスープ』から、認知症予防法と、認知症予防の効果が期待できるスープをご紹介します。
文/杉本八郎・松崎恵理
認知症のリスク因子は12個改善すると40%が予防可能に
では、そもそも認知症が発症しないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。認知症の予防・介入・ケアに関する2020年のランセット委員会の報告によると、認知症のリスク因子として次の12個があげられました。
1.(食事や栄養など)教育不足
2.高血圧
3.聴覚障害
4.喫煙
5.肥満
6.うつ
7.身体活動不足
8.糖尿病
9.社会的接触の少なさ
10.過度のアルコール摂取
11.外傷性脳損傷
12.大気汚染
これらの12個のリスクが、じつに世界の認知症の発症リスクの40%を占めています。リスクを避けることで、認知症の予防や、発症を遅らせる可能性があると、ランセット委員会は報告しています。高血圧については、血圧が高くなるほど、脳血管性認知症のリスクが高まります。ステージ2の高血圧症の人は、正常な人に比べ、リスクは約10倍以上になります。
肥満においては、認知症リスクが2.44倍というデータがあり、北米神経科学学会が60代の人を対象に8年にわたって調査した研究結果によると、記憶にかかわる海馬が肥満体型の人は1年で2%近く縮小していることがわかりました。これは標準体型の人の約2倍の縮小率です。
社会的接触の少なさについては、「友人や親族と週1回以上会う人」に比べて、「友人や親族と週1回未満しか会わない人」は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが8倍高いことがわかっています。
様々な因子がありますが、適切な食事や適度な運動などを心がければ、認知症のリスクを減らすことができるのです。糖尿病のリスクについては次項でご紹介します。
生活習慣病を改善すると認知症の3分の1を予防できる
そもそも生活習慣病とはなんでしょうか。厚生労働省のホームページでは、次のように記されています。
「生活習慣病とは、食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる疾患の総称です。日本人の死因の上位を占める、がんや心臓病、脳卒中は、生活習慣病に含まれます」
がん、心疾患、脳血管疾患は3大疾病とされ、日本人の死因の上位を占めています。
これに糖尿病、高血圧、肝硬変、慢性腎不全を加えたものが7大疾病とされ、入院する人の3人にひとりは7大疾病のいずれかというデータもあります。
がんや心血管疾患、動脈硬化、さらには老化現象とされるしみ、シワなどの原因はなんでしょうか。
老化現象の原因のひとつとされているのが活性酸素です。
活性酸素と、生活習慣病や老化との関連が注目されています。発生する原因は、喫煙や多量飲酒、過度な運動、食品添加物、紫外線など様々です。
活性酸素は、殺菌力が強いため、体内で細菌やウイルスをやっつける大切な役目をしています。しかし、過剰に作られると正常な細胞を攻撃(酸化)し、生活習慣病などの原因となるのです。
認知症のリスクを上昇させる生活習慣病を予防・改善するためには、活性酸素の働きが過剰にならないよう、抗酸化成分が含まれる食べ物を積極的にとることが大切なのです。
「脳がよろこぶスープ」基本のスープベースの作り方
認知症予防に最適な栄養素がたっぷり入ったスープの素。脳にいいだけでなく、かつお出汁が効いてうまみもたっぷり。冷凍庫に作り置きをしておけば、数分でおいしい認知症予防スープが完成します。
材料(約6杯分)
タマネギ 1個
ニンジン 1/2本
かつおぶし 4g
(かつおぶし粉を使う場合は小さじ2)
きなこ 大さじ2
本書で使用している計量スプーンは、大さじ15ml、小さじ5mlです。また、1ml=1ccです。
レシピ内に表示しているカロリーは、スープ1人分です。
電子レンジの加熱時間は、600Wで加熱した場合の目安です。電子レンジの機種や出力に合わせて、加熱時間を調整してください。
1.タマネギとニンジンは皮をむき、すりおろす。
2.1を耐熱容器に入れて軽くまぜ、ふんわりとラップをかけて電子レンジで3分加熱する。
3.2とは別に耐熱容器を用意し、かつおぶしを入れ、ラップをせずに電子レンジで1分加熱する。かつおぶしを、指ですりつぶすようにして粉状にする。(かつおぶし粉を使う場合は、この工程は不要)
4.2に3(もしくはかつおぶし粉)ときなこを加え、スプーンやへらなどで混ぜ合わせる。
5.チャック付きの食品用保存袋(Mサイズ/冷凍保存可能なもの)に、空気を抜きながら薄く広げるようにして入れる。しばらく置き、粗熱が取れたら袋のまま冷凍する。
6.凍ったら、袋のまま折るようにして6等分(1片あたり約45g)にすれば完成。スープを作るときは、1人分あたり1片を使う。
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『認知症研究の第一人者がおしえる脳がよろこぶスープ』(杉本八郎、松崎恵理 著)
アチーブメント出版
杉本八郎(すぎもと・はちろう)
薬学者、脳科学者。1942年、東京生まれ。世界初のアルツハイマー病治療薬「アリセプト」の開発に成功し、薬のノーベル賞と称される英国ガリアン賞特別賞を1998年に受賞。化学・バイオつくば賞(1998年)、恩賜発明賞(2002年)など受賞多数。エーザイ株式会社退職後、京都大学薬学部薬学研究科寄附講座教授などを経て、現在、同志社大学生命医科学部客員教授。グリーン・テック株式会社代表取締役。
松崎恵理(まつざき・えり)
一般社団法人日本栄養検定協会代表理事。栄養学博士、料理家、女子栄養大学栄養科学研究所客員研究員。専門は栄養疫学。栄養士養成校にて「統計学」の非常勤講師。ル・コルドン・ブルー(代官山校)にてグラン・ディプロム取得。本書では料理制作と栄養計算も担当。(エージェント:株式会社アップルシード・エージェンシー)