2025年には、 65歳以上の5人に一人が認知症になるとされ、 介護が必要になる人の数が爆発的に増えることが予想されています。そこで、脳科学者・薬学者の杉本八郎先生と栄養学の専門家、博士(栄養学)の松崎恵理先生が最新エビデンスをもとに考案した健康スープレシピ『認知症研究の第一人者がおしえる脳がよろこぶスープ』から、認知症予防の効果が期待できるスープをご紹介します。
文/杉本八郎・松崎恵理
最新のエビデンスをもとに作った「脳がよろこぶスープ」
脳科学者・薬学者である、私、杉本八郎は、これまで認知症を根本的に治療できる薬を開発するために、膨大な数の物質を調べ、世界中の研究論文に目を通してきました。いわば認知症のプロフェッショナルです。1961年に製薬会社のエーザイに入社して現在に至るまで、60年以上にわたって薬の研究・開発を続けてきました。
1999年、世界初となるアルツハイマー型認知症の治療薬「アリセプト」が承認・販売されましたが、きっかけは私の母が73歳のときに脳血管性の病に倒れ、認知症になったことでした。
母は、昼間はガラス工場で働き、夜は内職をしながら、9人の子どもを苦労して育てました。75歳で生涯を閉じるまでに、残念ながら私の新薬の開発は間に合いませんでしたが、母のためにも、そして母と同じように認知症になった方々とそのご家族のみなさんのためにも、必ず薬を開発するという強い信念がありました。
いまなお新薬開発のために、アルツハイマー型認知症の根本治療をする薬の「種」となる物質を求め、つねにアンテナを張って情報を集め続けています。
本書では、最新の研究データをもとに、栄養学の専門家である松崎恵理先生とともに「脳がよろこぶスープ」を考えました。
認知症予防に効くというエビデンスのある物質を含む食品の代表が、次の4つです。
1.抗酸化作用の強いβ-カロテンを含む「ニンジン」
2.認知機能の維持に役立つケルセチンを含む「タマネギ」
3.脳の機能維持に欠かせないビタミンB1を含む「かつおぶし」
4.動脈硬化を予防するイソフラボンを含む「きなこ」
この4つの食材で作ったのが、「脳がよろこぶスープ」のスープベースです。電子レンジで簡単に作れ、作り置きもできるものです。
「脳がよろこぶスープ」基本のスープベースの作り方
認知症予防に最適な栄養素がたっぷり入ったスープの素。脳にいいだけでなく、かつお出汁が効いてうまみもたっぷり。冷凍庫に作り置きをしておけば、数分でおいしい認知症予防スープが完成します。
材料(約6杯分)
タマネギ 1個
ニンジン 1/2本
かつおぶし 4g
(かつおぶし粉を使う場合は小さじ2)
きなこ 大さじ2
本書で使用している計量スプーンは、大さじ15ml、小さじ5mlです。また、1ml=1ccです。
レシピ内に表示しているカロリーは、スープ1人分です。
電子レンジの加熱時間は、600Wで加熱した場合の目安です。電子レンジの機種や出力に合わせて、加熱時間を調整してください。
1.タマネギとニンジンは皮をむき、すりおろす。
2.1を耐熱容器に入れて軽くまぜ、ふんわりとラップをかけて電子レンジで3分加熱する。
3.2とは別に耐熱容器を用意し、かつおぶしを入れ、ラップをせずに電子レンジで1分加熱する。かつおぶしを指ですりつぶすようにして粉状にする(かつおぶし粉を使う場合は、この工程は不要)。
4.2に3(もしくはかつおぶし粉)ときなこを加え、スプーンやへらなどで混ぜ合わせる。
5.チャック付きの食品用保存袋(Mサイズ/冷凍保存可能なもの)に、空気を抜きながら薄く広げるようにして入れる。しばらく置き、粗熱が取れたら袋のまま冷凍する。
6.凍ったら、袋のまま折るようにして6等分(1片あたり約45g)にすれば完成。スープを作るときは、1人分あたり1片を使う。
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『認知症研究の第一人者がおしえる脳がよろこぶスープ』(杉本八郎、松崎恵理 著)
アチーブメント出版
杉本八郎(すぎもと・はちろう)
薬学者、脳科学者。1942年、東京生まれ。世界初のアルツハイマー病治療薬「アリセプト」の開発に成功し、薬のノーベル賞と称される英国ガリアン賞特別賞を1998年に受賞。化学・バイオつくば賞(1998年)、恩賜発明賞(2002年)など受賞多数。エーザイ株式会社退職後、京都大学薬学部薬学研究科寄附講座教授などを経て、現在、同志社大学生命医科学部客員教授。グリーン・テック株式会社代表取締役。
松崎恵理(まつざき・えり)
一般社団法人日本栄養検定協会代表理事。栄養学博士、料理家、女子栄養大学栄養科学研究所客員研究員。専門は栄養疫学。栄養士養成校にて「統計学」の非常勤講師。ル・コルドン・ブルー(代官山校)にてグラン・ディプロム取得。本書では料理制作と栄養計算も担当。