技術と伝統で写真文化を築き上げたライカのデジタルカメラ

世界中の報道カメラマンが写真で歴史を刻み、決定的瞬間といわれる不朽の名作を写してきたライカカメラ。ライカの永年の歴史で培った技術を伝統と革新でデジタルカメラとして凝縮したライカV-LUX5。シンプルなデザインは機能美を極めドイツデザインの真骨頂を感じる。

一眼レフカメラを彷彿とさせるフォルムは手に馴染み、コンパクトカメラのクラスに属しながらも程よい重さバランスもあり所有感を満たしてくれる。撮像センサーは1インチとこのクラスでは大型サイズで、2010万画素の高精細な写真作品を残すことができる。

レンズは25~400mm(35mm判換算)を搭載した16倍ズーム。高倍率の焦点距離をカバーしており、一眼レフカメラのような重たい交換レンズの持ち運びも不要となる。

カメラボディは艶消しブラックで質感が高く落ち着いた印象だ。ダイヤルやボタンは直感的に操作でき、デザインに優れている。Leicaの赤色ロゴが小さいながらも強い存在を示す。
高性能な大口径ズームレンズ「ライカ DC バリオ・エルマリート f2.8–4.0/9.1–146mm ASPH.」は25-400mm(35mm判換算)の16倍ズーム。レンズ鏡胴には50mm・100mm・200mmと表示があり焦点距離を確認でき、撮影時に画角のイメージをつかみやすい。開放f値は広角側でf2.8と明るく、ボケを生かした情緒的な写真表現もできる。
液晶モニターはタッチ操作もでき画面を見ながらピント位置調整もできる。また可動式になっており角度を自由に調整が可能。花の撮影ではローアングル、腕を上に伸ばしてハイアングルも狙え、構図を快適に決めることができる。
人の顔を自動検知し、ピンポイントで瞳に合うオートフォーカスは的確。顔が画面のどの位置にあっても認識し瞬時に瞳へ合焦する。また空間認識技術を導入することで動く被写体を自動でピントを追い続けるモードも搭載している。

最初に光をインプットするレンズは重要

デジタルカメラで重要なポイントとしてレンズの描写性能がある。もちろん撮像センサーの性能も重要であるが、最初に光をインプットするレンズの役割は画質を左右する。広角から望遠まで高精細でシャープに描写し、かつ階調豊かなボケ味を表現できるレンズの役割は大きい。本機のレンズには、非球面レンズとED(特殊低分散)レンズを採用しており、ライカが培ってきた光学技術の粋を極め、焦点距離の全域において高い描写を発揮している。そして開放絞りでのボケ味は美しいグラデーションだ。

広い空を主題にして東京体育館を25mm の広角レンズにて撮影。月が輝いており望遠側400mmで拡大して情緒的に写す。月面の表情が鮮明に写り、遠い月までの距離を感じさせない。薄い雲と組み合わせることで地球の大気を表現し、月と地球の関係性をテーマにした。
高性能ズームレンズは描写力に優れ、直線も歪みなく写し出す。重厚な鉄扉の硬い質感と大理石の光沢感を見事に再現。強い光が照らすハイライトは白飛びせず、明部から暗部まで階調豊かなトーンだ。
手ブレ補正機構を備えており暗い室内でも手持ち撮影ができる。旅行に出掛ける時には三脚を持っていく必要もないため身軽になり疲労の心配もない。画面中央のステンドグラスは落ち着いた発色で画像を記録している。実にライカらしい色合いだ。
接写撮影もでき30cmまで近寄ることが可能。作例写真は古い錠前を接写したもの。100年前の年代物で、重ねた歳月を質感で表現した。天候が悪く雪が降るような寒い日は、自宅の書斎にてテーブルフォトで小物を撮る愉しみもできる。お気に入りの腕時計や万年筆を個性豊かなカメラアングルで狙いたい。
ユニコーンのモニュメントを主題にし、夕焼けに染まる雲を副題にして撮影。旅行先で出会った光景を写真作品としてカメラに収め、旅の思い出として残したい。
モノクローム設定にして光の印象を強調した。いつも見慣れた光景も心象的になり、スポットライトで照らす建物を望遠レンズで切り取った。シーンモード設定は24種類あり「夜景をアーティスティックに撮る」モードもある。

これまでの100年、これからの100年

最新デジタルカメラの撮像センサーのフルサイズ基準は、35mm判フィルムの1コマ24x36mmの大きさ。ライカ判ともいわれ約100年前のライカ製カメラが世界標準になったと言われている。100年続く基準をつくった功績は大きい。

冒頭で紹介したようにライカは技術と伝統を重んじている。流行を追わず時代に流されない孤高な存在だ。その一例として、撮影画像の発色は派手さが抑えられており、しっとりとした落ち着いたトーンとなる。100年以上の歴史を持つ「ライカ哲学」とも捉えることもでき、ライカの矜持だ。これからの100年も変わることがないであろうライカ哲学を感じ、21世紀の現在の光景を後世に伝えられる写真作品を残したい。そのための機能は「ライカV-LUX5」には備わっている。

ライカV-LUX5
撮像素子:1インチMOSセンサー 有効画素数:2010万画素
焦点距離:25 – 400 mm相当(35mm判換算)
サイズ:幅136.7×高さ97.2 ×奥行き131.5 mm
重量:812g (バッテリーを含む)
価格:20万9000円
ライカ公式ウェブサイト
https://leica-camera.com/ja-JP/photography/cameras/v-lux/v-lux-5-black

写真・文/福永仲秋(写真家) 公益財団法人 日本広告写真家協会 正会員

 

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