文/印南敦史

栄養療法の専門家である『サートフード・ダイエット あなたが持っている「痩せ遺伝子」を刺激する方法』(エイダン・ゴギンズ&グレン・マッテン 著、矢能千秋 訳、光文社)の著者によれば、ここ数年のダイエット業界では断食が大人気であり、そこには正当な理由があるのだそうだ。

毎日、適度なカロリー制限をしたり、あるいは頻度を下げて断続的に厳しいカロリー制限をしたりすると、半年で6kgもの減量が見込まれるという。そればかりか病気の発症リスクを大幅に減少させる効果が期待できることも、研究で実証されているようなのだ。

端的にいえばそれは、体内のエネルギー貯蔵が減少することがメリットをもたらすためだ。しかし、当然ながらそこにはデメリットもある。エネルギー摂取量が減ると、空腹感、イライラ、疲労、筋肉の減少が生じるわけである。

うまくやれば結果は出るものの、結局は続かなかったというケースが少なくないのだ。だとすれば、過激なカロリー制限や副作用なしに、同じような効果は得られないのだろうか?

著者は、その答えが「サートフード」にあるという。

この新たに発見された食品群ではある栄養素が豊富で、摂取すると断食したときと同じようにスキニー遺伝子(痩せ遺伝子)が活性化する。スキニー遺伝子はサーチュイン遺伝子と呼ばれるもので、2003年に発表された画期的な研究で初めて脚光を浴びた。赤いぶどうの皮や赤ワインに含まれるレスベラトロールと呼ばれる化合物が、酵母菌の寿命を劇的に延ばすことが明らかになったのだ。これはカロリー制限で得られるのと同じ結果なのだが、レスベラトロールを摂るだけでよく、エネルギー摂取量を減らす必要はなかった。(本書「はじめに」より)

その後の研究では、赤ワインに含まれる他の化合物にも似たような効果があることがわかったそうだ。たしかに昔から、「赤ワインは健康にいい」「赤ワインを飲む人は太りにくいかもしれない」という話はよく聞く。

ともあれ必然的に、「この栄養素(レスベラトロールおよび、これと似た効果を持つ化合物)を豊富に含む食品は他にもあるのか?」ということへの関心が高まり、研究が進められていった。その結果、“パワフルな食品群”であるサートフードが少しずつ明らかになってきたというわけだ。

なかには、伝統的なイギリスのハーブであるラビッジのように、あまり馴染みがなく注目される機会が少ないものもある。しかしその一方には、よく知られており、よく食べられている食材も多い。たとえば、EVオリーブオイル、赤玉ねぎ、パセリ、チリペッパー、ケール、いちご、くるみ、ケイパー、豆腐、ココア、緑茶、コーヒーなどだ。

なお、サートフードのポテンシャルに着目した著者らが調べてみた結果、他にも明らかになったことがあったようだ。サートフードの栄養素が豊富な食材は、世界でも病気や肥満の発症率が低いことで有名な食習慣と大きく関連していることがわかったというのである。

たとえばパナマに住む先住民クナ族は、サートフードのココアを多く摂取することで高血圧を免れているようで、肥満、糖尿病、がん、早期死亡の率が驚くほど低い。日本・沖縄の伝統食もサートフードの栄養素を含んだ食べ物が多く、ほっそりとした体型と長寿をもたらしている。(本書「はじめに」より)

沖縄の伝統料理は長寿食として知られるだけに、これは説得力のある主張ではないだろうか?  だが当然のことながら、これはパナマや沖縄の食生活だけに限った話ではない。

たとえばインドでは辛い食べ物が好まれるが、カレー粉の主原料であるターメリックはサートフードであり、とくにがんの抑制作用があるといわれているのだ。

また、EVオリーブオイル、葉野菜、ナッツ、ベリー、赤ワイン、ナツメヤシ、ハーブなどサートフードの栄養素を含む食品を日常的に取り入れている地中海地域でも肥満は一般的ではなく、慢性疾患も珍しいのだとか。

減量のためにカロリー計算をしたり、病気のために調合薬を飲んだりするよりも、地中海地域でポピュラーな食習慣を続けたほうが健康効果があったという意見もあるそうだ。

そんなサートフードは、著者らが提唱する「サートフード・ダイエット」の発祥地である今日のイギリスでは主流ではないようだ。だが興味深いのは、かつてのイギリスの食卓では欠かせないものだったということ。そこで本書では、それらを取り入れるための簡単な方法を明らかにしているのである。

成功への秘訣が「無理なく続けること」であることは間違いないが、前述したように「続ける」ことがハードルでもあった。だが、サートフード・ダイエットの最大の利点は持続可能であること。健康的な食習慣と栄養補助の基礎を理解し、毎日の食事にサートフードをもっと取り入れるコツを覚えたら、生涯続く恩恵を手に入れられるというのだ。

・筋肉からではなく、脂肪から痩せる。
・長期的な減量に成功するように体を整える。
・見た目も気持ちも健康で、もっと元気になる。
・厳しい断食や過度の空腹に耐えなくてもよい。
・辛い運動ノルマもない。
・長生きして、健康で、病気をしない人生へのきっかけとなる。
(本書「はじめに」より)

サートフード・ダイエットでは、これらが手に入るという。たしかに続けられそうではあるので、本書を参考にしながら取り入れてみてはいかがだろうか?

『サートフード・ダイエット あなたが持っている「痩せ遺伝子」を刺激する方法』
エイダン・ゴギンズ&グレン・マッテン 著、矢能千秋 訳
光文社

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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