文/小林弘幸 イラスト/大塚砂織

朝の散歩はいいことだらけ。親子で一緒に歩こう

大人も子どもも、朝はギリギリまで寝ているという家庭が結構あります。親が早起きなら子どもを早く起こすことはできますが、親が寝坊していれば子どもはそれに従うしかありません。そういう状況は、親子揃って自律神経を乱してしまいます。

眠っている間は副交感神経が優位だったのが、目覚めて活動し始めると交感神経の働きが活発になっていきます。つまり、朝の時間帯に自律神経のスイッチが切り替わるのですが、それは「徐々に」であることが大切です。気持ちよく目覚めて、朝の日差しを浴びて、洗顔して、食事を摂って……という間にゆっくりと切り替わっていくのが理想です。

ところが、寝坊していればそんな余裕はありません。ドタバタと身支度をしているうちに、急激に乱暴に切り替えが行われてしまいます。すると、その日はずっと、自律神経が安定しません。朝は、時間に余裕を持って起き、副交感神経が優位な状態から緩やかに交感神経が優位な状態へと移行させましょう。

そのときにおすすめなのが、親子揃っての朝の散歩。起床後15〜30分程度、子どもと一緒に散歩に出てみましょう。とくに公園などに出向かなくても、歩道を歩くだけで十分です。都会でも朝は小鳥のさえずりが聞こえ、車も少なく空気もきれいです。五感を働かせて、そういう街の美しさを感じながら、歩いてみましょう。

「気持ちいいな」と感じることで、脳内にオキシトシンなどのホルモンが分泌され、それだけで自律神経は整います。また、歩くことで血流が良くなり、全身に酸素が回って、脳の働きも活発になります。腸の動きも良くなりますから、朝食後のスムーズな排便にもつながります。朝の散歩はいいことだらけです。雨の日まで無理して出かける必要はありません。そういうときは、窓を開け、散歩しているときと同じように外の新鮮な空気を吸うようにするといいでしょう。

歩くときには姿勢に気を配りましょう。頭のてっぺんが空から引っ張られているかのように背筋を伸ばし、肩の力を抜き肩甲骨を寄せるように胸を開きましょう。すると気道がまっすぐになり、取り込める酸素の量が増えます。この状態で、まっすぐに前を向きリズミカルに歩けば、自律神経もばっちり整い、自然とポジティブな気分になれます。

この15〜30分の時間を持ってから学校へ向かう子と、「もっと寝ていたい」とぐずぐず言いながら飛び出していく子どもとでは、あらゆる面で差がついていくはずです。

自律神経を整えるのにおすすめなのが、朝の散歩。起床後、15~30分程度、歩道を歩くだけで十分。自然とポジティブな気分になる。

理想は朝晩20〜30回! いつでもどこでもスクワット

子どもに運動をさせたいけれど、実際のところ時間も場所もない。こんなときに、ぜひ取り入れてほしいのが「スクワット」です。私自身、仕事が忙しくなかなかまとまった運動時間が取れないので、毎日スクワットを行っています。手軽にできる運動の中で、スクワットは最強と考えているからです。案外知られていないことですが、私たちの血液の70%は下半身に集まっています。それなのに、座りっぱなしで下半身を動かさないでいれば、全身の血流が滞ってしまいます。

スクワットでは、大腿(だいたい)四頭筋や臀部(でんぶ)の筋肉など下半身の大きな筋肉を動かすので、それだけ血流も良くなり、全身にたくさんの酸素を送り出すことができます。結果的に脳の血流が良くなり、自律神経が整うのです。また、あらゆる筋肉は連動しており、大きな筋肉を鍛えると、小さな筋肉にもいい影響を与えることがわかっています。

つまり、スクワットはいろいろな面で効率がいいのです。しかも、畳半畳ほどのスペースがあれば、いつでもどこでも行えます。時間も3分とかかりません。ただし、間違ったやり方をすると膝や腰を痛めてしまいますから、ここに紹介する正しい方法を習得してください。

両足を肩幅に開いて立ち、両手を頭の後ろで組みます。その状態で、背筋を伸ばしたまま、息を吐きながら膝が90 度になるまで腰を落としていきます。そして、息を吸いながら、ゆっくりと膝を伸ばし、もとの姿勢に戻ります。曲げた膝がつま先より前に出ていたり、背中が曲がっていたりするのはNGです。

正しい姿勢でできているか、親子でお互いにチェックし合いながら行ってください。スマホで動画を撮影して確認してもいいでしょう。うまくできない場合は、壁に背中をつけて腰を落としていく方法をとってもかまいません。

朝晩20〜30回ずつ行うのが理想ですが、勉強の合間の隙間時間を利用して、ちょこちょこやるだけでも効果があります。子どもが勉強に疲れてきた頃合いを見計らって、「お母さん(お父さん)とちょっとだけスクワットしようか」と持ちかけてみてください。

大事なのは三日坊主に終わらせずに続けること。子どもが「面倒くさい」と感じることなく取り組めるようにしましょう。

スクワットは手軽にできる最強の運動。間違ったやり方だと膝や腰を痛めるので正しい方法で。壁に背中をつけながらやっても良い。

* * *

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小林弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任する。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」としても知られ、腸内環境を整える味噌汁や自律神経を整える呼吸法やストレッチを考案するなど、健康な体と心をつくるためのさまざまな方法を提案している。

 

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