コロナ禍の影響で我慢する生活が長引き、メンタル面の不調を訴える人が増えています。厚生労働省も「コロナうつ」の実態把握や対策に乗り出しましたが、自律神経の専門医で順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、「いちばん危ないのは子どもたちのメンタル」と危惧しています。最新刊『本番に強い子になる自律神経の整え方』で、子どもたちの深刻な現状について訴える小林教授に、今、大人は子どもたちのために何をするべきなのか、聞きました。

文/小林弘幸 イラスト/大塚砂織

目安は1日に1.5リットル、少しずつこまめに水を飲む

緊張すると口の中が乾き、水を飲みたくなります。これは、乱れてしまった自律神経を整えようとする自然な反応です。水を飲むと、胃腸の神経が刺激されて副交感神経が活発になります。副交感神経が活発になれば、私たちはリラックスに向かいます。緊張したときに水を飲むのは、とても理にかなっているわけです。自律神経を整えるために、普段から水を積極的に飲みましょう。

そもそも、私たちの体はその60%が水分で、水の摂取が足りないと、健康上のさまざまな不都合が起きます。まず想起されるのが、血液がドロドロになることでしょう。ドロドロの血液は、血管に大きなダメージを与えます。「まだ子どもだから血管系の心配はしなくていい」というのは大間違い。しなやかな血管の中をさらさらした血液が流れているという状態が、大人にとっても子どもにとっても理想なのです。さらに、水分が不足すれば便秘になります。便秘になって腸内環境が悪化すると、自律神経は乱れます。

体がむくむのも水分不足が原因です。多くの人は「水分を摂るとむくむ」と勘違いしていますが、水分が足りないことで細胞の中の余計な水が排出されずにむくんでしまうのです。私は、起床後、食事前、帰宅時、入浴後、さらには仕事中にも定期的に、コップ1杯の水を飲むようにしています。

1日に1.5リットルを目安に、親子ともども水をしっかり飲みましょう。1度にまとめてがぶがぶ飲むのではなく、少しずつこまめに飲んでください。子どもの外出先には、ペットボトルや水筒を持たせましょう。そして、「1時間ごとに飲んでね」などと、喉が渇いていなくても飲む癖をつけてもらいましょう。大人だって、なにかに集中していると水を飲むことなど忘れてしまいます。子どもなら、なおさらです。

言うまでもないことですが、水の代わりに甘い清涼飲料水などを飲ませるのは絶対にNGです。経口補水液やスポーツドリンクの摂りすぎにも注意してください。それらには思いのほか糖分と塩分が入っており、熱中症対策にたくさん飲んでいた子どもが糖尿病にかかるといった事例も報告されているからです。糖分の入っていないお茶であっても、カフェインによって子どもの自律神経はいらぬ刺激を受けてしまいます。一番のおすすめはミネラルウォーター。「心身の健康のための飲み物は水がベスト」という意識を持ってください。

人間の体の60%は水分。水の摂取が足りないと、健康上のさまざまな不都合が起きる。がぶがぶ飲まずに、少しずつこまめに飲もう。

ぬるめのお湯に15分間を基本に、ゆっくり湯船に浸かる

入浴は、単に体を清潔にするための行為ではありません。1日の終わりに、リラックスして副交感神経を高め、質のいい睡眠へと導く非常に重要な習慣です。

また、湯船にゆっくり浸かることで血流が改善され、全身に酸素が行き渡り、疲労回復効果が期待できます。それを知識として、あるいは経験的に理解している大人は、入浴剤に凝るなどしてバスタイムを大事にしています。ところが、子どもにも同様のリラックスが必要だということを、ややもすると忘れがちです。夕刻にもなれば、子どもなりに1日の疲れと緊張を溜めています。入浴タイムを活用して、それを取り除いてあげましょう。

自律神経の安定にいいのが、39〜40度くらいのちょっとぬるめのお湯に、半身浴で15分間浸かること。熱いお湯が好きな人もいますが、42度を超えるようだと交感神経を刺激して、かえって興奮状態に陥ります。連続15分間が長いと感じる場合は、最初に肩まで浸かって5分間、その後、みぞおちまでの半身浴を10分間行うといいでしょう。

なお、入浴タイムは、ベッドに入る1時間くらい前に持つのが理想です。私たちは、深部体温(体の奥のほうの体温)が下がっていくときに、スムーズに眠りに入ることができます。入浴によって一度上昇した深部体温は、徐々に下がっていくので、そのタイミングに合わせればいいわけです。まだ深部体温が高い状態では、なかなか寝付くことができませんから、就寝直前の入浴は避けましょう。

入浴の習慣は家庭によってまちまちで、とくに暑い時期はシャワーで済ませてしまうというケースも多いようです。親がそうなら、必然的に子どももそうなります。しかし、自律神経をいい状態に保ちたいなら、家族みんなが湯船に浸かる習慣を持つことが大切です。

部活動などから帰ってきた子どもが泥だらけでいたなら、そのときは一度シャワーで体を洗い、寝る1時間前に改めて湯船に浸かるようにしましょう。それほど入浴は自律神経を整えるために重要な役割をしています。

幼い子どもの場合、どうしても早く湯船から出たがる傾向にあります。そんなときは、親が一緒に入って、その日の報告などを聞いてあげるのもいいでしょう。あるいは、お風呂用のおもちゃを用意したり、防水機器で音楽をかけたりして、子どもにとって楽しい時間にしてあげてください。

自律神経の安定のためにいいのは、39〜40度のお湯に、半身浴で15分間浸かること。就寝1時間前くらいに湯船に浸かると、なお良い。

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小林弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任する。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」としても知られ、腸内環境を整える味噌汁や自律神経を整える呼吸法やストレッチを考案するなど、健康な体と心をつくるためのさまざまな方法を提案している。

 

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