ダイエット中は小腹が空いても間食を我慢することが多いもの。しかし、食べる内容や食べ方さえ気をつければ、間食は体にいい栄養素を補給する、最高の機会となるのです。
間食に高カカオチョコレートを食べるというシンプルなダイエット法で、4か月で24キロものダイエットに成功した医師・鈴木幹啓先生の著書『医師が教える最強の間食術』から、間食を利用し、効率的に痩せるダイエット法をご紹介します。
文/鈴木幹啓
間食を利用すれば、ラクに栄養補給できる
私は9年間、地域の総合医療に従事し、和歌山県新宮市に小児科クリニックを開院しました。また、診療の傍ら、地域の親子3代が過ごせる場所を作りたいと、介護施設を中心としたテーマパークも2016年にオープンさせるなど、子どもから高齢者まで、幅広い年代の人たちの健康に関わってきました。
いろいろな人たちの体を診てきた中で、思うことがあります。それは、健康のベースは食事を踏まえた日常生活の過ごし方にあるということです。どんなに治療をほどこしても、体によくない食事を摂ったり、日常生活を送ったりしていれば、また、病気になってしまう……。
「自分の健康のためにも食生活を、日常生活を見直してほしい」
そう訴えてはいるものの、それができない人を私は責められません。
「1日30品目食べなさい」
「健康を保つためには、毎日〇〇という栄養素をしっかり摂りましょう」
「睡眠時間をしっかりととりなさい」
などと矢継早にいわれて、実際のところできるでしょうか。メニューを考えるのが面倒くさくなって、結局、途中で挫折して、食生活が元に戻る。食生活で必要な栄養素を補うのは無理だから、サプリメントを利用しようとするけれど、ついつい忘れてしまう。仕事や家事で忙しい時はどうしても、睡眠がおろそかになってしまう……。
数日はできても、毎日、何年も健康習慣を続けるのは難しいですよね。続けるには、強い意志と労力、時間が必要であるし、生活状況によってはできないこともあるのは十分に理解できます。なぜなら、私も完璧にはできていないのですから……。
しかし、特に健康的な食事は、続けなくては意味がありません。いくら健康効果が高い食事でも、数回食べただけで体の不調がきれいに消えることはないからです。また、実践するのが大変で、ストレスがかかっては明らかに逆効果です。長くラクに続けられるものこそ、本当に役に立つ健康法なのです。
そこで、私が着目したのが「間食」です。もちろん、入っている食材や調理法を工夫しながら、できるだけ健康的な食事を摂ろうとすることは大切です。しかし、体にいい栄養がたっぷりと詰まった「間食」をパクッとつまんで栄養素を補うほうが、メニューを考えたり手間をかけたりする必要がないので、ストレスなく続けられるのではないでしょうか。
「間食」で食べたい食材の3つのポイント
間食=太る=不健康であり、つい誘惑に負けて食べるもので、食べるとなんとなく心の片隅に罪悪感が芽生えてくるという方も少なくないのではないでしょうか。
ですが、間食が健康を害するのは、砂糖がたっぷりと含まれたものやカロリーの高いスナック菓子をバクバク食べるといった、「不適切な間食」をしている場合です。当然ながらこれは健康によくありません。ですが、食材や量を適切なものにすれば、「間食」で主に次のような効果が期待できるのです。
・空腹による食事でのドカ食いを防ぐ
・食後血糖値の急上昇を防ぎ、血糖値が安定する
・空腹によるストレスや集中力の低下が防げる
特に食後血糖値の急上昇を抑えられるのは、大きなメリットです。食後血糖値が急上昇すると、脂肪の蓄積を促進し、さらに動脈硬化、認知症などを引き起こす危険性がありますが、「間食」を取り入れることで、そのリスクを低減することができるのです。
ちなみに、アメリカでも間食を食事に取り入れる「ヘルシースナッキング」という新習慣が注目されていると聞きます。「間食」=太るという、一方的な決めつけで避けるのではなく「適切な間食を摂る」時代が来ていると感じています。
では、「適切な間食」とはどのようなものでしょうか。一番大切なのは、何を食べるかということです。
私がおすすめするのは、次の3つの要素を含んだ食べ物です。
・老化を防ぐ「ポリフェノール」がたっぷり入ったもの
・太りにくいもの(GI値が低いもの)
・おいしくて、手軽に食べられるあまいもの
それぞれ詳しくは後述しますが、ひとつずつここでも簡単に説明していきます。
体にいい栄養素というのは世の中にたくさんありますが、人生100年時代といわれ、長生きする時代に特に必要なのは、体の「老化」を防ぐものではないでしょうか。老化によって、血管、内臓、さまざまな器官の働きが衰え、うまく機能しなくなることで、さまざまな症状や病気が引き起こされます。血管が老化すれば、血の巡りが悪くなり、高血圧、糖尿病といった生活習慣病、心筋梗塞や脳梗塞といったもののリスクが高まりますし、脳の老化によって認知症、免疫細胞の老化によってがんなどが引き起こされることもあります。
そんな体の老化を防ぐ成分として、私が注目するのが「ポリフェノール」です。名前は聞いたことがあるという方も少なくないかもしれません。ポリフェノールは、植物が光合成によって作る抗酸化物質の総称で、現在数千の種類が発見されています。植物の色や苦味の元になっており、ポリフェノールを生成することで、紫外線や乾燥、害虫などから身を守っています。
つまり植物が、外敵から自分の身を守るための強力なバリアがポリフェノールというわけです。そんなパワーのある物質ですから、体に悪いはずがありません! さまざまな健康効果が謳われていますが、総じていわれているのが、体の老化の原因となる増えすぎた活性酸素から身を守る抗酸化作用です。
そしてポリフェノールは、体内で蓄積ができず、摂取してから効果が続くのが3~4時間なので、できるだけこまめに摂りたい栄養素です。つまり、間食で補給するには、ぴったりな栄養素だといえるのです。
次に太りにくいものということですが、肥満が健康に及ぼす影響は、あえて述べなくても皆さんご存じではないでしょうか。
総じて、「間食は太る」というイメージをお持ちかもしれませんが、一概にそうとはいえません。太る、太らないの食べ物の指標として、ひとつ知ってほしいのが、GI値です。「GI」とは、Glycemic Index(グリセミック・インデックス)の略で、その食品を食べた後にどれだけ血糖値が上がるかを示した指標であり、その数値が低いと食後の血糖値の上昇が少ないということになります。
食べた後には、すい臓からインスリンというホルモンが出ます。このインスリンは「血糖値を下げる」という重要な役割を担っている一方で、脂肪を作る・脂肪の分解を抑制するという働きもあります。
食後に一気に血糖値が上がってしまうと、このインスリンが必要以上に大量発生してしまい、脂肪を作る、脂肪の分解を抑制するという働きが高まり、肥満へとつながる危険性が出てくるのです。ですから、食後血糖値を急激に上げない、GⅠ値が低い食品を選んで食べることが、とても大切になります。ちなみに、食後血糖値の急上昇は、肥満だけでなく、認知症や脳卒中、心筋梗塞のリスクも高めるといわれています。
また、脳のエネルギー不足を引き起こし、集中力や記憶力の低下などにもつながるともいわれており、健康面はもちろんのこと、生活の質の向上という面を考えても、GI値が低いものを食べることはメリットがあります。
「間食」は、GI値の上がりやすい砂糖や小麦、米をたくさん使っているものが多いので基本、GI値が高いものが多いですが、低いものもあります。具体的な食材は、後ほど詳しくご紹介しますが、GI値が低いものであれば、太ることはあまり気にせずに「間食」として摂っていいのです。
もうひとつは、手軽であまさとおいしさがあるものです。糖質制限が一般的になり、「あまいもの=悪いもの」というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、悪いことばかりではありません。あまいものを食べると、脳では幸せホルモンが分泌されて、幸福感に満たされます。
さらに、ついついあまいものを食べるのは、あまいものには中毒性があるからです。中毒性があるということは裏を返せば、習慣化しやすいということです。
先ほどからいうように、大切なのは続けられること。幸福感を満たしてくれ、習慣化しやすい「あまいもの」であることは、とても大切です。さらにいえば、調理などをさほど必要とせずに食べられることも、継続するためにはとても大切な要素となります。
* * *
『医師が教える最強の間食術』鈴木幹啓 著
アスコム
鈴木幹啓(すずき・みきひろ)
日本小児科学会認定小児科専門医。すずきこどもクリニック院長。株式会社やさしさ代表取締役。株式会社オンラインドクター.com代表取締役。自治医科大学卒業。2010年、卒業しわずか9年で現在のクリニックを開業。和歌山県新宮市(人口約2万7000人)の地方都市にもかかわらず、1日200人近く診察し、日本一忙しい小児科医と称されるにいたる。診察に従事する傍ら「親・子・孫の三世代が集まれるような地域づくりをしたい」という思いから、2016年4月に、介護サービス付き高齢者住宅や子どもが遊べる公園、さらには商業施設がそろった「海賊公園スクエア」をオープンさせた。また、「患者ニーズを徹底的に追求する」ことを理念に掲げ、オンライン診察実施医療機関と患者をマッチングさせるオンライン診療システム、「イシャチョク」を運営している。