皆さんは、漢方薬と聞くとどんな印象がありますか? 「苦いけど体によさそう」「葛根湯は知っているけど……」など、「そもそも漢方ってどんなもの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。
そんな基本的な漢方に関する疑問や基礎知識を、漢方の専門家にわかりやすく解説してもらいます。 第14回のテーマは、「六腑(ろっぷ)の機能」です。あんしん漢方(オンラインAI漢方)の薬剤師、篠原明宏さんに教えてもらいました。
六腑とは?
前回の記事(https://serai.jp/health/1065723)では五臓六腑の「五臓」を紹介しましたが、今回は「六腑」です。東洋医学における五臓六腑は西洋医学とは少々異なり、単なる臓器ではなく、もっと大きな意味合いを持ちます。
漢方では、五臓は体に必要不可欠な気・血(けつ)・水(すい)を作って貯蔵し、六腑は飲食物から栄養をとり出し、エネルギーを集めると考えられています。そして、五臓六腑がバランスをとり合い、人体が成り立っていると考えられています。
六腑それぞれが指す場所
六腑は「胆(たん)・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦(さんしょう)」からなります。それぞれの働きと、異常があった場合にみられる症状について解説していきます。
1.胆(たん)
胆は、胆のうと肝(かん)の一部と考えられています。胆には、肝から分泌された胆汁を貯蔵、小腸に排出し、食べ物の消化吸収を助ける働きがあるのです。
「肝がすわる」という言葉があるように、決断力や行動力に関わるといわれています。胆に不調が生じると、食欲不振や吐き気などがあらわれます。
2.小腸
小腸は、胃で消化されたものをさらに吸収消化し、栄養分を五臓の脾(ひ)に、食べ物のかすを大腸に、不要な水分を膀胱に送ります。また、心(しん)と関係があると考えられていて、問題があると腹部や膀胱、水分代謝に不調が生じます。
3.胃
胃は飲食物を受け入れて消化するほか、小腸や大腸に下ろす役割もあります。脾と関係が深い部分です。胃が不調な場合はとくに上腹部に異常があらわれやすく、胃痛や食欲不振、吐き気のほか、便秘の原因にもなります。
4.大腸
大腸は、小腸から送られた食物のかすから余った水分や養分を吸収し、便にして、直腸、肛門を経て体外に排出します。漢方医学では肺と関係が深いと考えられています。大腸の調子が悪いと、便秘、下痢、痔の原因になります。
5.膀胱
膀胱は、腎臓でろ過された不要な水分が貯蔵されるところで、それを体外に排出する役目があります。漢方では膀胱は腎と密接な関わりがあり、尿がたまるとその刺激が脳に伝わり、尿意が起きます。膀胱が不調になると頻尿や尿もれのほか、残尿感が起きやすくなります。
6.三焦
三焦は東洋医学独特の考え方で、西洋医学で置き換えられる臓器はありません。三焦は気と水を体の隅々に届け、不要なものを尿や便で排出させます。
三焦は「上焦・中焦・下焦」の3つの部位にわけられ、上焦は胸から上、中焦は胸からおへその間、下焦はおへそから下をあらわします。上焦は心と肺、中焦は脾と胃、下焦は腎と膀胱に関わります。三焦の働きが鈍ると、水分代謝が低下し、むくみや尿の量が減るなどの不調が出てくるのです。
五臓六腑からみる自分の体質
東洋医学において、六腑は五臓と密接なつながりを持ち、表裏関係にあります。それぞれの関係性をあらわすと以下のようになります。
■肝と胆
■心と小腸
■脾と胃
■肺と大腸
■腎と膀胱
これに、西洋医学の概念にはない「心包(しんぽう)」と「三焦」を加えたものが東洋医学における五臓六腑の表裏関係です。また、五臓六腑のどこの臓器に不調が出やすいかで、体質を知ることができます。
部位ごとに、不調が起きるとどんなトラブルが多くなるか、影響を受けやすい食べ物も併せてご紹介します。
■肝と胆
肝と胆が不調だと、思考活動や決断力が鈍ります。酸っぱいものの摂り過ぎを避けましょう。
■心と小腸
心と小腸が不調だと、排尿痛や血尿などの症状が起きます。苦いものの摂り過ぎを避けましょう。
■脾と胃
これらに不調が生じると、胃の働きに影響します。甘いものの摂り過ぎを避けましょう。
■肺と大腸
肺と大腸が不調だと、便秘や下痢の症状が起きます。からいものの摂り過ぎを避けましょう。
■腎と膀胱
腎と膀胱が不調だと、尿の停滞や尿失禁が起きます。塩分の摂り過ぎを避けましょう。
五臓六腑のどこにどんな不調があらわれるかで、体質の傾向を知ることができます。体質は漢方薬の処方に関わる重要な部分です。その理由は次の章で解説します。
漢方は「体質との相性」が重要
漢方には、体質を診断するための複数の「ものさし」があります。五臓六腑をはじめ、さまざまな観点から人それぞれの体質を判断し、それにあった漢方薬の処方を行い、服用するというのが正しい流れです。
漢方薬はきちんと体質に合ったものでないと、効果を実感できなかったり、思わぬ副作用が起きたりすることもあります。そういったリスクを避けるために、漢方の知識を持った医師や薬剤師に診断してもらうことが大切です。
もっとお手軽に漢方を使ってみたいという方には、「あんしん漢方」がおすすめです。プロの漢方アドバイザーがあなたの体質・症状に合った漢方薬を選んでくれます。気になる部分やお悩みは漢方サポートドクター(医師)にオンラインで相談できるので、不安を感じることなく漢方薬を継続できます。
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五臓六腑は体質を知るための重要な手がかり
今回は、「六腑の機能」について解説しました。東洋医学における五臓六腑は西洋医学とは違い、もっと広い定義を持ちます。それぞれの役割や、五臓との表裏関係、出やすい症状や傾向など、六腑は体質を測るためのものさしとしても重要な要素です。
さて、次回のテーマは「八綱(8つの基本原則)ってなに? 」です。ぜひご覧ください。
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