企業にも人間のように病気にかかることがある。「大企業病」とよばれるものがそれだ。マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp/)」から、「大企業病」の意味と対応方法を知ろう。
* * *
「大企業病」という言葉をあなたは聞いたことがありますか? 組織が大きくなるに連れ、縦割り文化により意思決定のスピードが遅くなることを指します。日本では、大企業病により「イノベーションのジレンマ」が発生しており、他国に商品開発で引けを取ることも増えました。
本記事では日本企業の深刻な問題のひとつ「大企業」の症状や改善方法について詳しく解説します。
大企業病とは
大企業病とは、会社内での風通しが悪く、意思決定を行うまでに多くの時間を必要としてしまう状態のことです。大企業病が侵攻すると、社員のモチベーション低下などの弊害が生じるため、予防と改善が重要になります。
「大企業病」は、大きい企業にだけ起こる問題だと考える人が多いでしょう。しかし、大企業病は中小企業でも起こり得ることです。全体主義でルールが多すぎると、中小企業でも大企業病に陥る可能性があります。
以下の症状がで始めたら危険信号です。大企業病の症状から、自分の会社が当てはまっていないか確認しましょう。
それぞれの症状について詳しく解説します。
内部志向が強い
大企業の主な症状として、内部志向が強くなることが挙げられます。内部志向とは、顧客よりも自社内部の業務効率化を最善とする考え方です。本来、企業ではお客さま本位を徹底し、お客さまのための商品開発や商品改善を行っていく必要があります。しかし、大企業病に陥ると、お客さまのことよりも自分がリスクを取らないことの方が重要になり、無難な当たり障りのない施策しか打てなくなります。
チャレンジができなくなる
大企業病が進行すると、新しいことを始めるための意見を受け入れられず、否定される割合が増えます。チャレンジによるリスクを避け、現状維持を望むようになったら注意が必要です。社内に「チャレンジをすることで、新しい業務を増やしたくない」と考える人が多いときは、改善を試みましょう。
顧客を優先しなくなる
大企業病は顧客を大事にしなくなる要因にもなります。大企業病が進むと、社内政治や派閥争いに注意が向いてしまうのが原因です。ビジネスにおける基本がブレてしまっていては会社の成長は見込めません。社内のことにだけ意識が向いてると感じたら、大企業病を疑ってください。
形式主義に陥っている
形式主義に陥っている場合も、大企業病の傾向があります。社内向けの報告書や意味のない会議が多いと思ったら注意が必要です。形式主義になると「意味のないこと」に時間を使ってしまいます。意思決定が遅くなり、重要な業務が進まなくなるため、早期改善を試みるようにしましょう。
成果をあげている人が評価されない
成果を上げている人が適正評価されなくなったら大企業病を疑いましょう。大企業病は挑戦する人よりも、無難に過ごせる人を重視する傾向があり、社内政治を重んじる悪しき風潮があります。したがって、成果を上げている人を評価できない状況に陥ります。
大企業病による弊害
大企業病による弊害は以下の通りです。ビジネスおいて様々な弊害を引き起こすため、注意が必要です。
それぞれの弊害について、詳しく解説します。
新事業に乗り遅れる
大企業による弊害として、新事業に乗り遅れる危険性があります。大企業病の症状で、チャレンジ精神が欠乏するからです。社内にチャレンジを避けるムードが漂うと、新しい事業を思い付いても「どうせ却下される」という思考に陥ります。会社にとっては機会損失に繋がるだけでなく、世の中の変化について行けなくなり、会社の優位性を失う危険性もあるため注意が必要です。
優秀な人材を失う
大企業病を患っている企業では、優秀な人材が離れてしまう傾向があります。なぜなら、大企業病になっていると成果を正当に評価されなくなるからです。優秀な人材を失うと、顧客とのビジネスが円滑に進まないだけでなく、企業内に仕事ができる人間がいなくなってしまいます。結果として、仕事を正確に教えられる人がいなくなり、育成すらまともに行えなくなる可能性があるため、公平な評価制度を整えることが重要です。
生産性が低下する
生産性の低下は形式主義から引き起こされます。形式主義が普及してしまうと、無駄な作業に時間をかけすぎて、重要な意思決定が即座に行われないという弊害が生まれます。生産性の低下を防ぐために、社員のモチベーション向上に力を入れてください。
大企業病の原因
大企業の原因として挙げられるのは以下の5つです。それぞれの原因について詳しく解説します。
事業が安定している
展開中の事業が安定していると、大企業病に陥る可能性が高くなります。もちろん事業の安定は、企業が目指す目標のひとつでありそれ自体が問題ではありません。
しかし、事業の安定は、リスクがある選択肢を選べなくなる要因になり得ます。
リスクと現状の維持を比べたときに、安定思考になりすぎていないか、再度確認しましょう。
企業が掲げている理念が浸透していない
企業が掲げる理念は、経営にとって重要な要素ですが、会社が大きくなるにつれて、組織が拡大し、ビジョンや理念が共有しづらくなります。社内の人数が少数の場合、会社が目指している目標に共感して入社してくれる人も多いのですが、会社の規模が増すと福利厚生や制度を目当てに入社する人も増加します。会社の理念に対してどんな印象を抱いているのか、採用段階で見極めが必要です。
新しい挑戦に対する評価制度がない
挑戦に対する評価制度がないと、社員のモチベーションが上がらず、大企業病になる確率も高くなります。すでに決まっている制度にだけ縛られると、現状維持に固執する要因となるため、新しい評価制度の制定も視野に入れましょう。
ルールが無駄に多い
社内のルールが無駄に多すぎると、ルールの見直しなどに時間を取られてしまいます。結果的に、社員のモチベーション低下や形式主義に陥る危険性があるため、注意が必要です。明確に定められているルールだけでなく、暗黙の了解も含め、そのルールが本当に必要なのか再検討しましょう。
風通しがよくない
社内の風通しがよくないということは、コミュニケーションが円滑に行えない状況になっている可能性が高いです。社内のコミュニケーションが上手くいっていないと、生産性の低下につながってしまいます。立場が低い社員が上司に意見をしっかり言えるような体制を整えることが重要です。
大企業病の克服方法
もしうちは大企業病かも、と思ったら以下の方法を取るのがおすすめです。
自社が大企業病だと判断したら、改善方法をしっかりと理解し対策を試みましょう。それぞれの改善方法について、解説します。
管理職の意識を変える
大企業病を改善するには、管理職の意識を大きく変える必要があります。管理職は、一般の社員と経営者の間に立つ重要な存在です。管理職が上手く機能していないと、大企業病は改善できません。一般の社員の意見が経営層に届かない企業では誰も声を上げないからです。社内に漂っている諦めの雰囲気を打破するためには、管理職の意識から変えていくことが重要です。
企業文化を見直す
企業文化とは「企業と従業員の間にある意識的、もしくは無意識的な行動規範」を指します。企業文化を見直すことで、現状の問題の把握、改善ができます。特に、企業が培ってきた伝統は、企業を支える礎になることもありますが、時に組織の硬直化を招くこともあります。今一度、自社の企業文化がポジティブに働いているのか、確認するようにしましょう。
社内コミュニケーションを活発にする
社内のコミュニケーションの有無は、大企業病に直結する大きな要因です。コミュニケーションを活発にすることで、会社が抱えている問題への理解や解決への糸口が見つかります。また、コミュニケーションを行える会社だと認知されれば、立場に関係なく、事業の展開についても活発な議論が行われるでしょう。定期的にグループワークを行い、意見交換の場を作るとよいでしょう。
人事制度を見直す
人事制度の見直しも大企業病の改善には有用です。人事制度の中でも、昇格や評価制度を再度確認することをおすすめします。昇格や評価に関する制度が明確でないと、社員のモチベーションは著しく低下します。評価制度を明確にし、仕事の目標を明確にすると「何をやっても評価されないから意見を言わない」という、大企業病の弊害を回避できます。定量的な人事制度が明確に定まっているかを再度確認し、社員のモチベーション管理を計りましょう。
まとめ
大企業病は、大企業だけでなく、中小企業などにとっても大きな問題です。大企業病が深刻化すると、社内だけに意識が向いてしまい、社員のモチベーション低下や機会損失に繋がってしまいます。自分の会社が大企業病になっていないか再確認し、適切な改善を試みることが重要です。大企業病を克服した事例からも学び、より具体的な改善方法の策定も行っていきましょう。
【この記事を書いた人】
小林カズシ/コンテンツディレクター
金融出身のコンテンツクリエイター。 三井住友銀行退職後、フリーランスとして活動。 現在は、電子書籍の執筆からクリエイティブ作成、ディレクター業務、ライティングまで幅広く行っている。 所持資格は簿記2級など。
* * *
いかがでしたか?。企業の規模に関係なく「大企業病」は発生します。自社が「大企業病」を発症していないか、再確認と適切な改善を行うようにしていきましょう。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/