腰痛や坐骨神経痛の方の姿勢をみると、「反り腰」であることがよく見受けられます。
反り腰は、腰や下半身の筋緊張を強めてしまうため、腰痛や坐骨神経痛の原因となることがあります。
今回は反り腰を改善するためのエクササイズをご紹介します。
腰痛の原因は様々なものがありますので、一概にこれが原因だと言い切ることはできません。
同じような症状でも、人によって原因がまったく異なる場合もとても多いのです。
しかし、共通してみられる特徴があるのもまた事実です。
反り腰も腰痛や坐骨神経痛の方に共通して多くみられる特徴のひとつです。
反り腰とは?
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)にこられる腰痛や坐骨神経痛の患者さんの姿勢をみると、反り腰の方が多く見受けられます。
反り腰とは文字通り腰の反りが強い姿勢のことをいいますが、解剖学的にいうと腰椎の前弯と骨盤の前傾が普通よりも大きい姿勢のことをいいます。
下の画像の左が正常な姿勢、右が反り腰の姿勢です。
反り腰の方は、正常な姿勢と比べて背骨の腰の部分=腰椎の前方への弯曲(前弯)と骨盤の前方への傾き(前傾)が大きいことがおわかりいただけるでしょうか。
このような姿勢になると、腰にかかる負担が大きくなり、また腰だけでなく殿部、下肢にも負担が及んだり筋緊張が強まるなどの影響が出てきます。
筋肉の負担が増え緊張が強まると、次第に筋肉が凝り固まってしまい、さらにそれが続くと筋肉内に「トリガーポイント」といわれる発痛点が生じて痛みがおこってしまいます。このことから腰痛や坐骨神経痛などの慢性的な痛みがおこるのです。
トリガーポイントについては本連載ではおなじみですが、より詳しくお知りになりたい方は、以下のページもご覧ください。
腰痛・坐骨神経痛のトリガーポイント治療(https://www.re-studio.jp/backpain/pg122.html)
反り腰の原因
なぜこのように反り腰になってしまうのでしょうか?
ごく簡単に説明するならば、腰の反りを強める筋肉が過剰に働いてしまい、逆に反りを弱める筋肉が弱くなってしまっているからです。
人間の体は筋肉によって支えられていますが、それは言ってみれば骨を軸としてゴムのような筋肉が前後左右上下からひっぱりあって支えているような状態です。ロープでひっぱりあって支えているテントの支柱を思い浮かべていただくとわかりやすいかもしれません。常に均等な力でひっぱりあえれば良いのですが、片側の力が弱まってしまうと支柱は曲がってしまいます。腰にも反らせる筋肉と反らせないようにする筋肉があるのですが、このバランスが崩れて反らせる筋肉が優位になってしまうと反り腰になってしまうのです。
腰を反らせる筋肉と反らせない筋肉
腰を反らせる筋肉は、腰椎伸展筋の脊柱起立筋や股関節屈筋の腸腰筋、また他に大腿四頭筋などがあります。
これらの筋肉が緊張したり固くなったりすると、腰の反りが強くなってしまいます。
腰を反らせない筋肉には腹筋や股関節伸展筋の大殿筋、ハムストリングなどがあります。
これらの筋肉が弱くなってしまうと、同じく腰の反りが強くなってしまいます。
したがって反り腰を弱めて腰痛や坐骨神経痛を改善するためには、
脊柱起立筋、腸腰筋、大腿四頭筋など → 緊張を弱める
腹筋、大殿筋、ハムストリングなど → 筋力強化する
ことが必要となります。
腰の反りを改善するエクササイズ
筆者の腰痛トレーニング研究(https://www.re-studio.jp/index.html)では、腰の反りを改善するために、腹式呼吸プラス骨盤後傾のエクササイズをおすすめしています。
腹式呼吸によってインナーマッスルによる腹圧を活用できるようにすると、骨盤後傾とあいまって腰を正常な状態で維持しやすくなるのです。
以下を参考に練習してみてください。
自宅で出来る!腰痛トレーニングより(https://www.re-studio.jp/dvd.html)
※画像では専用のポールに乗って行っていますが、床に寝たまま行っても同じような効果があります。
1.床にあおむけになり両膝を立てた姿勢をとります。
2.そこから腹式呼吸の要領で、鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、口をすぼめて天井に息を吹きかけるようにしっかりと吐き切っていきます。
この時に、おへその下あたり(下腹部)をへこますようにしながら息を吐いていきます。
下腹部をへこますようにしっかりと息を吐ききることで、腹横筋に力が入るようになります。
息を吸うのは軽く、吐くときはお腹の底からしっかりと吐き切るようにしましょう。
3. 息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締める
2.ができたら、今度は下腹部(腹横筋)と肛門(骨盤底筋)を同時に締める練習をします。
腹式呼吸で息を吐き切りながら、下腹と肛門を同時に締めるように力を入れてみましょう。
うまくしっかり吐き切りながら肛門を締められると、下腹部に強く力が入り、固くなるのがわかります。
またこの時に背中や腰や脚は力を抜いてください。
背中や腰や脚に力が入ってしまうと、かえって痛みを起こしやすくなりますので注意してください。
4.息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締め、恥骨を引き上げて腰を丸め、床に押し付ける。
恥骨を引き上げるとは、みぞおちの方に向けて腹筋で引き上げるようにすること(下画像オレンジ矢印)です。
すると骨盤は後傾方向に回転します(黄色矢印)。
こうすることでさらに腹圧が高まりやすくなり、腰をしっかり支える姿勢をとりやすくなります。
これらのトレーニングを1日30回を目標に行ってみましょう。
いっぺんに30回でも構いませんし、10回ずつ朝昼晩のように分けても構いません。トータルで30回が目安です。
30回以上できるようなら、やればやるほど効果は出ます。
しかし、腰や背中、脚などに余計な力みがあると、かえって痛みを起こすことがありますので、その点はご注意ください。また効果が出てくるまでには少し時間がかかります。2週間から1か月程度は根気よくトレーニングを続けてください。
このトレーニングを行うことで痛みが出る、または痛みのためにこのトレーニング自体ができないようでしたらやめてください。
以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。
片側の腰が痛いときに効くツボ(トリガーポイント)とストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第75回】(https://serai.jp/health/1044313)
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拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html