専門家の後見人が多いなか、約2割は親族が後見人に選任されていると知ったときに「それなら、私たちでもできるのでは?」と思われる方もおられるでしょう。「でも、約2割ということは選任されないかもしれない 。もし、後見人に選任されたとしても、何をすればいいのかわからない」。このような疑問に答えるべく、今回は成年後見人になる方法や、成年後見人の仕事について解説します。

目次
成年後見人になる方法は2通り
成年後見人の仕事とは
まとめ

成年後見人になる方法は2通り

成年後見人が選任される場合は、大きく2通りあります。(1)法定後見制度に基づいて選任される場合と(2)任意後見制度に基づいて選任される場合です。

(1)法定後見制度に基づいて選任される場合
法定後見制度とは、認知症や知的障がい、精神障がいにより、判断能力が不十分な本人を支援する制度です。すでに、本人の判断能力が不十分な段階で、法律で定められた申立人(本人・配偶者・4親等内の親族など)が後見人選任の申立てを行うことになります。

(2)任意後見制度に基づいて選任される場合
任意後見制度とは、本人の判断能力が十分なときに、認知症などにより判断能力が衰えたときに備えて、予め決めておいた後見人候補者(正確には任意後見受任者といいます)に、本人の望む支援をしてもらうことを契約しておく制度です。契約の時点では、本人に判断能力があります。しかしながら、認知症などで判断能力が低下した段階で、後見人候補者が後見人に正式になるために、任意後見人監督人選任(後見人の仕事をチェックする人)の申立てを行うことになります。

(1)と(2)の違いは、後見人候補者に本人の意思が十分に反映されているかどうかです。(1)の場合、後見人候補者に親族がなることはできますが、最終的には家庭裁判所が本人の後見人にふさわしい人物を選任します。反対に(2)の場合は、本人の意思が十分に反映された後見人候補者となります。

成年後見人になるには(1)の場合は、後見人選任申立てで、後見人候補者となり選任されることが必要です。(2)の場合は、任意後見契約でもって予め後見人候補者(任意後見受任者)を定めておく必要があります。

成年後見人は家族でもなれるの?

成年後見人になるには特に資格などは必要ありません。法律で定められた欠格事由(未成年者・破産者・過去に後見人を解任された者など)に該当しなければなることができます。

(1)法定後見制度に基づいて後見人を選任する場合
後見人候補者に家族を挙げることは可能です。実際に家族が成年後見人に選任されることもあります。ところが、後見人の約8割が専門家後見人、約2割が親族後見人というデータからわかるように、専門家(司法書士・弁護士・社会福祉士等)が選任される確率が高いようです。

特に本人の保有財産額が高額である場合や、相続手続・不動産売却等が申立の理由の場合は、専門家が後見人に選任される、もしくは、家族が後見人に選任されても後見監督人(司法書士や弁護士)が選任されることが多い傾向にあります。

このように、後見人の選任申立てをしたものの、家族が後見人になれなかったというパターンはよくあります。そして、後見人の申立ては一度出してしまうと取り下げるのに家庭裁判所の許可が必要となるため注意が必要です。

(2)任意後見制度に基づいて選任される場合
任意後見制度に基づいて選任される場合は、あらかじめ後見人候補者(任意後見受任者)を家族にしておけば、本人の判断能力が低下し、任意後見人監督人選任(後見人の仕事をチェックする人)が選任された段階で、そのまま後見人候補者である家族が、正式な後見人に就任することになります。

従って、成年後見人に家族が就任することを希望する場合は、本人の判断能力が十分なうちに、任意後見契約を結んでおくことをお勧めします。

成年後見人の仕事とは

無事に家庭裁判所から成年後見人に選任された場合、これからは後見人として本人のために仕事をしていかなければなりません。ここでは成年後見人の仕事について解説していきます。成年後見人の仕事は、大きく3つ「財産管理」「身上保護」「事務報告」に分類されます。それでは、詳しく見ていきましょう。

「財産管理」の仕事

民法には「後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する」と定められています。成年後見人は、家庭裁判所の審判により成年後見人に選任されて1か月以内に、本人の保有する財産を調査しなければなりません。保有財産を財産目録にまとめ、家庭裁判所に提出します。

その後は、後見人自身の財産と本人の財産が混在しないように、注意しながら財産管理の仕事を行っていきます。具体的には「預貯金管理」「収支の管理」「有価証券・金融資産等の管理」「不動産の管理」「確定申告などの税務処理」が挙げられます。

(1)預貯金管理
成年後見人は、本人の預金を適正に管理し、第三者の不正な出金等を予防するために、金融機関に対して成年後見人が就任したことの届出をします。この後見人届出の提出後に、金融機関で成年後見人が本人名義の預貯金の入出金等の手続きができるようになります。

(2)収支の管理
成年後見人は、本人の収支を把握する必要があります。年金・各種手当金・賃料収入や金融資産からの収入・生活保護費などの収入。家賃・食費や水道光熱費や日常生活費・介護施設費用や介護サービス費用・通院入院費用・扶養親族の生活費などの支出。毎月の収支を算出し、中長期的に収支を把握しなければなりません。

(3)有価証券・金融資産等の管理
成年後見人は、本人の財産を保護しなければならないため、新たに元本保証のない金融資産等の取引は禁止されていると解されています。しかし、本人が以前から保有していた有価正面や金融資産等については、この限りではありません。成年後見人は、そのまま有価証券や金融資産を保有するか、必要に応じて売却するかを検討する必要があります。

(4)不動産の管理
本人が、不動産を所有または賃貸借している場合は多くあります。不動産を所有している場合は、管理や修繕・固定資産税の支払い、また賃借している場合は、家賃や管理費の支払い・賃貸借契約の更新等が必要になります。不動産も上記(3)と同じ理由で、新規の購入や建物の新築は原則認められません。

それに対して、すでに所有している不動産や賃借している家屋で、本人が居住や利用をしておらず、固定資産税や家賃の支払いが負担となっている場合は、売却や解約を検討する場合もあります。

(5)確定申告などの税務処理
本人に相当の収入がある場合などに必要となります。

「身上保護」の仕事

「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない」と民法で定められています。財産管理の仕事を行うと、本人の生活に必要な収支が把握できます。そのうえで、中長期的な見通しに立って、療養看護の計画と収支の予定を立てます。

療養看護の仕事の具体的な例としては下記のようなことが挙げられます。

・治療や入院、投薬などの医療に関する契約の締結・費用の支払い
・本人の住居に関する契約の締結(賃貸借契約の締結や解約、所有不動産の売却など)・費用の支払い 
・施設の入退所に関する契約の締結・費用の支払い・本人に対する処遇のチェック 
・介護や日常生活に関する契約の締結・費用の支払い

身上保護の仕事=実際に介護や日常生活の介助を行うことではありません。本人がきちんと生活を送れるように、今後の生活や療養看護の方針を決定し、それを実現するためのサービス等の契約を行うことが身上保護の仕事です。

「事務報告」の仕事

成年後見人は、家庭裁判所の審判により、成年後見人に選任された後、本人のために後見人としての仕事を行うことになります。そして、成年後見人は家庭裁判所に対して、後見人の仕事についての報告をするよう定められています。

このような報告を「事務報告」といい、就任時に行う「就任報告」、年に一度の一年間の仕事について報告する「定期報告」、報告事由が発生した場合や判断に困る場合などに行う「臨時報告」、後見終了時に行う「終了報告」の4種類があります。

家庭裁判所は事務報告を通して、後見人が権限を逸脱することなく、適切に仕事を行っているかどうかを判断します。従って、この「事務報告」の仕事は、欠かすことができない大切な仕事です。それぞれの報告について詳しく見ていきましょう。

(1)就任報告
成年後見人に就任した後、本人の財産を調査し、本人の保有する財産の目録を作成します。次に財産調査の結果を踏まえて、今後の本人の生活の収支計画を立て、収支予定表を作成します。財産目録と収支予定表に、本人の財産や収支のわかる資料のコピーを添付し、今後の身上保護の計画等を記載した報告書を提出します。成年後見人に就任して最初のこの報告を、就任報告といいます。

(2)定期報告
年に一度、1年間の後見人として行った仕事について、定期的に報告することが必要です。主に前年と異なること(健康状態や生活状況、財産の増減)について報告します。後見事務報告書と現時点での財産目録を作成し、関係資料を添えて提出します。この定期報告と同時に報酬付与の申立てをした場合、家庭裁判所が1年間の後見人としての仕事に対する報酬を決定します。

(3)臨時報告
成年後見人が就任した後、定期報告以外に報告することを臨時報告といいます。後見人や本人が死亡した場合、本人が転居した場合、本人の居住用不動産を売却する場合、遺産分割協議を行う場合、特別代理人を選任する場合などに報告します。その他に、後見人として判断に迷う場合にも報告することがあります。

(4)終了報告
本人が死亡した場合など、後見の終了後に、終了した事由と残った財産を相続人等に引き継いだ旨を報告します。終了報告書と終了時の財産目録、相続人等に財産を引き継いだ旨のわかる引継書に、関係資料を添えて提出します。この終了報告と同時に報酬付与の申立てをすると、前回の報酬付与の対象期間後から後見終了時までの後見人報酬が家庭裁判所から決定されます。

まとめ

成年後見人になる人と後見人の仕事に中心に解説していきましたが、いかがでしたか? 成年後見人の仕事が理解できれば、家族が成年後見人の候補になるという選択肢を取りやすくなるかもしれません。さらに詳しく知りたい方は、お近くの専門家に是非ご相談ください。家族にとって、より良いサポートの形が見つかるかもしれませんよ。

●構成・編集/内藤知夏(京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

●取材協力/坂西 涼(さかにし りょう)

sakanishi

司法書士法人おおさか法務事務所 後見信託センター長/司法書士
東京・大阪を中心に、シニア向けに成年後見や家族信託、遺言などの法務を軸とした財産管理業務専門チームを結成するリーガルファームの、成年後見部門の役員司法書士。
「法人で後見人を務める」という長期に安定したサポートの提唱を草分け的存在としてスタート、
全国でも類をみない延べ450名以上の認知症関連のサポート実績がある。認知症の方々のリアルな生活と、多業種連携による社会的支援のニーズを、様々な機会で発信している。日経相続・事業承継セミナー、介護医療業界向けの研修会など、講師も多く担当。

司法書士法人おおさか法務事務所(http://olao.jp

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