文/印南敦史

コロナ禍が長引いているだけに、「さすがにリモートワークにも慣れた」という方は少なくないだろう。しかしその一方では、「座りっぱなしのリモートワーク のせいで、腰痛がひどくなった」という方も増えているようだ。

そうなると、「1日も早く腰痛を治したい」と感じるのは当然の話だ。だが、『「腰が痛い」と思ったらとにかく読む本』(福井 聖 監修、福谷直人、伊藤かよこ 著、日経BP)の著者は違った考え方を提案する。

「治したい」という思いの裏側には、「痛み=悪いもの」というイメージが少なからずあるに違いない。「痛みは悪いもの」だから、「治したい」「消したい」と感じるわけである。

しかし、「体に起こることには、必ず理由がある」という事実にこそ目を向けるべきだというのだ。

痛みは、なぜ起こるのかというと、「この状態を放置すると危険だ」と知らせるため。つまり痛みは体からのサインなのです。
どれほど健康的な生活をしていても、痛みがいっさい起こらない体はないといってもいいでしょう。大切なのは、そのサインを放置しないことです。(本書37〜38ページより引用)

したがって、「痛みを治したい」という思いはいったん置いておき、まずは「普段の生活ややりたいことが腰痛によって制限されない状態」を目指すべきだということ。

注目すべきは、著者がそれを「痛みをマネジメントする」と表現している点である。

「痛いか、痛くないか」と目くじらを立てるのではなく、「痛みというサインが起こったら、適切に対処する、マネジメントする」というふうに考え方を変えていきましょう。(本書39ページより引用)

生活習慣を少し変えるだけでも、痛みが軽減し、できなかったことができるようになるなど、ポジティブな変化が起こることがわかっているそうだ。だとすれば、たしかにそれはマネジメントの効果だといえよう。

たとえば著者は、“腰痛を自分でマネジメントしていくための日常習慣”として「早歩き(有酸素運動)」を勧めている。

早歩き(有酸素運動)をすると、“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンやドーパミンなど、痛みの閾値(いきち 痛みを感じるレベル)をコントロールする脳内伝達物質の分泌が適正化するそうなのだ。

単純化すれば、早歩き(有酸素運動)には、痛みを感じにくくなるという効果が期待できるということだ。

興味深いのは、同じ有酸素運動でも、ランニングやジョギングは、循環器系を強くするというメリットこそあるものの、痛みの抑制効果としては疑問視されているという点。

つまり腰痛対策には、やはり「早歩き」がいちばん適しているということなのだろう。

とはいえ厚生労働省が推奨する「1日1万歩」は、いままで歩く習慣があまりなかった人にとっては高いハードルでもある。

そのような方は、一気に増やすのではなく、先月の平均歩数より+5%を目安に増やしていくとよいでしょう。たとえば、1月の1日の平均歩数が5000歩だったならば、2月は1日5250歩を目指すという方針です。2月に1日平均5250歩を歩けたならば、3月は1日5500歩程度を目指します。(本書103ページより引用)

ポイントは、大股で、少しハアハアいうくらいのペースで歩くこと。リズム運動や楽しみとセットになるとセロトニンの分泌がさらに高まるため、歩行テンポに合った音楽や、自分の好きな音楽を聴きながら歩くのもいいようだ。

他にも、楽しんで続けられる工夫も取り入れてみたいところ。とくに、もともと運動習慣がない人や、体を動かすことが苦手な人には効果的だという。

たとえば、お気に入りのコースを見つける、あるいは逆に毎回コースを変えて新しい発見を求める、犬を飼っている人は今までよりも長めに愛犬との散歩を楽しむ、など。こんなふうに「好きなことを楽しんでいて、気づいたら腰痛が軽減していた」というストーリーが理想的です。(本書103ページより引用)

とはいえ、「腰が痛いから歩けない」「いきなり歩くと、腰に加えて膝まで痛くなりそう」というような不安を感じている方もいるはずだ。

もちろん、腰に大きな負担がかかるような運動は控えるべきだろう。しかし早歩き(有酸素運動)なら、むしろ体は痛みを感じにくくなっていくという。

そういう意味では、「痛みがあるから歩けない」ではなく、「痛みがあるからこそ、できるだけ歩こう」と発想を切り替えることが大切であるようだ。

いずれにしても、こうした「痛みをマネジメントする」という発想と方法であれば、無理なく日常生活に取り入れられるのではないだろうか。無理をせず、楽しみながら腰痛を軽減させていけるのだから、ぜひとも取り入れてみたいところである。

『「腰が痛い」と思ったらとにかく読む本』

福井 聖 監修、福谷直人、伊藤かよこ 著
日経BP

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)などがある。新刊は『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

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