文/印南敦史
腰痛で悩まれている方は少なくないだろう。『腰痛消滅!』(中村哲也 著、自由国民社)の著者も柔道整復師という仕事柄、患者から「私、腰痛持ちなんです」と相談を受けることが多いという。
問題は、「とにかく、いまのつらい痛みをなくしてほしい」などと訴える人の目的が、現状の痛みを軽減することだけになっていること。つまりその時点で、「腰痛は完治しない」とあきらめてしまっているわけだ。
だが、腰痛持ちの人は腰痛と一生つきあわなければならないわけではないのだという。
腰痛持ちの方のほとんどは、骨や筋肉、神経などには障害が出ていない「慢性腰痛症」(非特異的腰痛症)です。病院で検査を受けても原因がわからないならば、本書をご覧いただき、まずは“正しい姿勢”だけを実践してください。ほぼ全員がいまの腰痛が治り、一生、腰痛から解放されます。(本書「はじめに」より引用)
ポイントは、「腰痛は、姿勢が9割」だという考え方。ひざ痛、腰痛、首・肩こりなどの痛みがどこからきているのかを探るべく、首、方、腰と順を追って診ていくと、必ず「姿勢」に行き当たるというのだ。
二本足で歩く人間は、体重をすべて腰やひざで受け止めて重心バランスをとっている。また、約5キロといわれる頭の重さを支えているのは首や肩だ。そんな体を支えるためには筋肉も必要だが、もっとも大切なのは「重心バランス=姿勢」。筋肉をどれだけ鍛えても、姿勢が悪ければ体を無理なく支えられないわけだ。
特に腰は、体の要。立つ、歩く、座る、横になるなど、腰は日常生活のほとんどの場面で使われている。だからこそ、姿勢の悪い人が支障をきたす部位のナンバーワンは腰だということである。
ところで腰痛を治すためには、医師や療法士などの治療者に、痛みの内容を細かく具体的に伝える必要がある。そのほうが、治療者もより的確な治療ができるからだ。
そこで著者は、治療者に伝えるべき7つのポイントを紹介している。
治療者に伝えること
(1)いつから腰に痛みが起こったのか(痛みの時期)
(2)どうして痛みが起こったと考えられるか(痛みの原因)
(3)痛みを感じるのはどこか(痛みの場所)
(4)どの程度痛いのか(痛みの強さ)
(5)どんなときに、どれくらい痛むのか(痛みの増減)
(6)腰以外に体の変調はあるか(腰以外の症状)
(7)痛みで仕事や家事ができなくなっていないか(日常生活への影響)
(本書「はじめに」より引用)
また、整形外科や治療院ではさまざまな指導を受けることがあるが、なかには腰痛持ちに言うべきではないNGワードもあるのだという。
NGワード(1)「脚を組むな」
たしかに脚を組むことは腰によくないが、しかし著者は腰痛持ちの方に「脚を組むな」と言うべきではないと考えているそうだ。なぜなら、脚を組むから腰痛になるというわけではないから。
脚を組まないことを心がけるよりも、まずは正しい姿勢で座ることが大切だということ。なお脚を組む癖をなおしたければ、お尻(坐骨)の下にクッションなどを挟んで座ると、足が組めず、自然と正しい座り姿勢が保てるそうだ。
NGワード(2)「胸を張れ」
子どものころには胸を張ることを教えられたが、それは絶対にやめるべきだと著者はいう。
よい姿勢をとろうとして胸を張ると、逆に腰が反りすぎている状態(そり腰)になり、腰に大きな負担がかかるというのだ。むしろ正しい姿勢は、「肩の力を抜いて、あごを引く」というイメージ。
NGワード(3)「腹筋・背筋を鍛えなさい」
腰痛持ちの人がやみくもに腹筋・背筋を鍛えると、逆に姿勢が悪くなるのだとか。
一般的な腹筋トレーニングは、仰向けに寝て上体を起こす、起こしたままの姿勢で数十秒耐えるというもの。それは「腹直筋」を鍛えていることになるが、体が前かがみになり、腰痛持ちの人には腰への負担がかかりすぎるということだ。
ただしインナーマッスル(深層筋)をしっかり鍛えている人なら問題なし(もっともインナーマッスルを鍛えている人は、あまり腰痛にはならないそうだが)。
背筋も同じ。一般的な体をそらせる背筋トレーニングは、
* * *
腰痛メカニズム、生活習慣、腰痛改善メソッド、正しい姿勢の身につけ方など、腰痛を改善するために知っておきたいトピックス満載。筆者も腰痛に悩まされているので、できそうなところから取り入れている。
『腰痛消滅!』
中村哲也 著
自由国民社
税込 1,430 円
2019年11月発売
文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。