文/印南敦史

『心の不調の9割は食事で治る』(溝口 徹 著、フォレスト出版)の著者は本書の冒頭で、新型コロナウイルス流行の影響により心の不調を訴える人が増えていることに触れている。

充分に考えられることではあるが、とはいえ、病院で診てもらえば解決するというようなものでもないようだ。

医者にかかるよりも、自律神経を整えることのほうが大切だというのだ。なぜなら自律神経は、「自分の意思でコントロールできない体機能をつかさどる神経」だから。

自律神経が整えば、不安なときでも動機やしびれなどの身体症状を伴わなくなり、“自分をコントロールできない状態”がほとんど解消されるということである。

自律神経を整える方法としては、「休息をとる」「お風呂に入る」「睡眠をとる」「リラックスする音楽を聴く」などが挙げられることが多い。ところが、そうしたやり方では根本的な解決にはならない。

必要なのは簡単かつ安全に改善する方法であり、それは「食事」を改善することにあるというのだ。

私はオーソモレキュラー(orthomolecular medicine)という栄養医療の専門家として、数多くの自律神経失調症やうつ病などの心の不調を抱える人の治療を行ってきた。だからこそ断言できる。
「心の不調の9割は、食事改善で治る」
(本書「はじめに」より引用)

だとすれば、具体的にどうすればいいのだろうか?

著者は「自律神経を整え、心の不調を改善する食事として意識すべきこと」として、次の4つを挙げている。

1 血糖値の急上昇を起こさないようにする
2 同じ種類のタンパク質が連日になることを避ける
3 朝を整えるような食材を選ぶ
4 脂質のバランスを考える
(本書194ページより引用)

まず(1)について考えるべきは、食材に糖質が含まれているか否か。なお、その際には、甘いか甘くないかではなく、糖質の量で見ることが大切だそうだ。

たとえば白米は若干の甘みを感じる程度だが、茶碗1杯(150g)に約55gの糖質が含まれており、これは角砂糖約14個分に相当するという。角砂糖にはブドウ糖だけではなく果糖(フルクトース)という糖質が含まれているとはいうものの、白米の糖質量が多いことは間違いないだろう。

また糖質の甘さという点で、盲点になるのは果物。たとえばリンゴ1個にも、約30gの糖質が含まれているからだ。したがって、食後のデザートに旬の果実を少しだけ食べる程度に留めたい。

いずれにしても、インターネットで「食品 糖質」などと検索すれば、糖質量は簡単にわかる。また食品表示を確認すれば含まれる素材がわかるので、「炭水化物」の量を見てほしいと著者はいう。

続いて(2)。タンパク質によるアレルギーを防ぐには、同じタンパク質が3日以上続かないようにするべきだそうだ。

注意が必要なのは牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳タンパク。牛乳を飲まない日を設けても、その日にヨーグルトやチーズを食べてしまうと、結局乳タンパクが入ってしまう。
そこで、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳タンパクを一切摂らない日を週2、3日は儲けるといいだろう。
(本書196ページより引用)

次の(3)は、腸を整えるためには、食物繊維を摂ることが重要だということ。腸内の善玉菌は、食物繊維を餌にしてエネルギーをつくり活動する。そのため、腸内細菌のバランスを整えるためにも、便通をよくするためにも食物繊維の摂取を意識すべきだというわけだ。

食物繊維を摂るコツは、熱を加えることである。そのほうが量を摂れるためだ。ただし、加熱すると野菜に含まれる酵素が壊れてしまうため、繊維と酵素のどちらを優先するかで調理法を調整するとよい。
(本書198ページより引用)

ちなみに、ここでいう野菜とは葉物野菜のことだそうだ。ジャガイモ、ニンジン、ゴボウ、タマネギなどの根菜類には相応の糖質が含まれるため、ここには含まれていない。

最後の(4)、脂質について重要なのは、オメガ3系かオメガ6系かに注意すること。たとえば、トランス脂肪酸を含むマーガリンは極力控えるべきだ。

昨今は油脂を主成分とする「ファットスプレッド」も多いが、これは油脂が80%以上であればマーガリン、80%以下ならファットスプレッドという分類をしているにすぎない。トランス脂肪酸を含んでいることに変わりはないため、控えるべきなのだ。

ケーキ、クッキーなどの洋菓子に使われるショートニングも、トランス脂肪酸を含む脂質の代表なので注意が必要。また当然ながら酸化した油もよくないので、出来合いの揚げ物は避けたほうがよいようだ。

もちろん、毎日きちんと油を替えている惣菜店などであれば問題はないが、家庭でも揚げ物はなるべく新しい油でつくるようにしたいものである。

『心の不調の9割は食事で治る』

溝口 徹 著
フォレスト出版

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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