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文/小林弘幸

「人生100年時代」に向け、ビジネスパーソンの健康への関心が急速に高まっています。しかし、医療や健康に関する情報は玉石混淆。例えば、朝食を食べる、食べない。炭水化物を抜く、抜かない。まったく正反対の行動にもかかわらず、どちらも医者たちが正解を主張し合っています。なかなか医者に相談できない多忙な人は、どうしたらいいのでしょうか? 働き盛りのビジネスパーソンから寄せられた相談に対する「小林式処方箋」は、誰もが簡単に実行できるものばかり。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説します。

【小林式処方箋】「1日1カ所15分間」と決めて、やってみる。

小さな怒りから解放される方法

数年前から「片付けブーム」が続いていますが、自律神経の専門家から見ると、片付けを欲するのは理にかなっていると思います。なぜなら、「デスク回りが乱れている」「部屋が汚い」「片付けるのが面倒」という感情は、実は「小さな怒り」だからです。たとえ小さくとも、怒りはあなたの自律神経を蝕むことは、繰り返し述べました。

「片付けをしなきゃ」と思うこと自体がストレスですし、「しよう」と思っているのに忙しくてできないでいると、その焦りからイライラしてしまいます。片付けができない自分に嫌気がさして、気分が落ち込んでしまうこともあるでしょう。

たかが「片付け」ですが、されど「片付け」なのです。「片付けで人生が変わる」という片付け専門書のキャッチコピーは、あながち間違っていません。

でも、どうしたら忙しい中、片付けを習慣化できるか?

私がお勧めするのは、「1日1カ所、15分間だけの片付け」です。もちろん、集中力の増す午前中のゴールデンタイムは避け、午後のスキマ時間から15分間を捻出します。

先に「45分間+15分間」で1時間を区切る話をしましたが、このうちのどこか15分間を充てるのもいいでしょう。

「1カ所」と限定するのには理由があります。

すべてをきれいにしようとすると、「片付けのための片付け」「整理のための整理」になってしまい、本末転倒になってしまうからです。目的はあくまで、「心を整えること」です。

デスクを見回して、「ちょっと気になるな」という1カ所だけをピックアップし、そこだけを上限15分間で整理します。デスク上だけでなく、パソコン内の不要データの整理なんかもいいですね。

片付けを始めると、「小さな怒り」から解放されますので、副交感神経が上がり始めます。そして15分間ほどで交感神経が上がり始めるので、バランスがちょうど良くなるのです。

身の回りが片付くと、余裕が生まれます。余裕が生まれるということは、自律神経のバランスが整い、冷静かつ落ち着いて物事を考えられるような状態になっているということです。「1日1カ所、15分間だけの片付け」を習慣づければ、常に安定的な1日を送ることができるというわけです。

片付けで心身のバランスを整える

片付けで心が落ち着く、という作用を利用する方法もあります。

私の場合、憂鬱なスケジュールが続き、心身ともに疲労が蓄積してくると、意図的に「片付け」をするようにしています。「今日は引き出しのいちばん上を片付けよう」といった具合に、片付けに集中すると、自律神経が整ってきます。私の研究室が片付けられすぎている時は、裏を返せば、心身の乱れがひどかったということなのです。

逆に言うと、多少散らかっていても、それで集中できるなら、何の問題もありません。「片付けなければいけない」という強迫観念のほうが問題です。それがストレス過多となり、心身に悪影響を及ぼします。

ただし、「使いたいのに見つからない!」となると、これはこれでストレス。「すぐに取り出せる」程度に整理しておくのがいいでしょう。私などは、いつもはさみを探してイライラしてしまうので、部屋に3本用意してあります。これが最もストレスのかからない方法だと気づいたからです。

毎日片付けができない場合は、「あれ? ちょっと変だな」と思った時にだけ片付けても十分でしょう。すると、それまで気づかなかった自分の精神状態や、見えなかった心身のバランス状態が、わかってくるようになります。

私の場合は、心身が整っている時のほうが、どうも身の回りが多少、乱れているようです。心身が変調をきたしてきた時に、バランスを整えるために身の回りを片付けます。こうすることで、心身のバランスをもう一度元に戻すのです。

「1日1カ所、15分間だけの片付け」を続けてみながら、自分の中のベストバランスを見つけるといいでしょう。

人助けで幸せになるメカニズム

家庭を持っている場合は、「自分以外の誰かのために、片付けをする」というのも、心身を整えるひとつの方法です。

実は専門用語で「ヘルパーズ・ハイ」という言葉があります。

アメリカの心理学者アラン・ラックスによる、健康と幸福、ボランティア習慣についての大規模調査によれば、人助けや人に親切にすると95%もの人が「気分が良かった」、80%の人が、「プラスの感情が何時間(何日)も続いた」と答えています。つまり、自分以外の誰かのために行動すると、満足感や幸福感が得られるのです。

ひとつには、人助けをすると「オキシトシン」という脳内ホルモンが分泌され、幸福感がアップするからだと言われています。

また「β−エンドルフィン」という神経伝達物質が脳内で分泌されることがわかっています。これは「脳内モルヒネ」とも言われるホルモン物質で、俗に言う「ランナーズ・ハイ」の時にも分泌され、幸福感を作り出します。

「あいつのせいで……」とイライラするよりは、「あの人のために……」と行動したほうが、周囲もハッピー、あなたもハッピーというわけです。

  『不摂生でも病気にならない人の習慣』

小林弘幸 著

小学館
定価 924 円(本体840 円 + 税)
発売中

詳細はこちら

文/小林弘幸
順天堂大学医学部教授。スポーツ庁参与。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。また、日本で初めて便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」でもある。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説した『不摂生でも病気にならない人の習慣』(小学館)が好評発売中。

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