良い姿勢にしようとしすぎて腰痛になってしまうケースがあります。
腰痛にならない正しい姿勢が身につく、効果的なストレッチを紹介します。

良い姿勢というと、皆さんはどのような姿勢をイメージするでしょうか?

■体操選手やバレリーナのような姿勢
■警察官や自衛隊員のような姿勢
■お笑い芸人の春日さんのような姿勢

このようなイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。

これらに共通するのは背中を反らして胸を張る姿勢】

しかし、このイメージで良い姿勢にしようと背中を反らした姿勢をしていると、必ずと言って良いほど腰痛を招いてしまいます。

それはなぜか?

背中を反らして胸を張る姿勢】でいると、背中や腰の筋肉を緊張させっぱなしになってしまうからです。

筋肉は、緊張状態が続くと、筋肉内に【発痛点=トリガーポイント】というしこり状の硬結(固まり)ができてしまい、そこから強い痛みやしびれなどが起こります。

例えば背中や腰の筋肉にトリガーポイントが生じると、以下の図のような痛みを起こします。

画像の✖印がトリガーポイントの好発部位、赤い部分が痛みの出やすいエリアになります。

このように筋肉の過緊張=トリガーポイントから起こる痛み症状を、【筋筋膜性疼痛症候群】といいます。

トリガーポイント・筋筋膜性疼痛症候群については本連載ではおなじみですが、詳しくは以下のページをご覧ください。

腰痛・坐骨神経痛のトリガーポイント治療(https://www.re-studio.jp/backpain/pg122.html

なぜ【間違った良い姿勢】になってしまうのか?

筆者の腰痛トレーニング研究所に来られる患者さんの中にも、良い姿勢でいようと普段から気をつけ過ぎて、腰痛になってしまう方がいらっしゃいます。

よくよくお話をうかがうと、

■子供の頃に親御さんや学校の先生に姿勢について厳しく指導された
■部活やスポーツの指導の中で姿勢について間違った指導を受けた
■本やテレビなどで良い姿勢について見たり聞いたりした

といったことで、知らず知らずのうちに【間違った良い姿勢】を身に着けてしまったというケースが多いようです。

形だけ良い姿勢でも、中身、つまり身体の使い方が良くなければ不具合(痛み)を起こしてしまうということですね。

【正しい良い姿勢】とは

それは、背骨や骨盤が反りすぎず丸まりすぎず、自然なS字カーブを描く【ニュートラルな姿勢】のことです。

背中や腰など外側の筋肉だけを使うのではなく、腹部インナーマッスルなどを使って内側からも身体を支える姿勢です。

このような姿勢を取れると、体幹や全身に満遍なく力が入り、どこにも負担がないような感覚になります。

上の図では、左が腹部インナーマッスルが働いたニュートラルな姿勢で、右が腰や背中が緊張して反りすぎた姿勢のイメージです。

左ではインナーマッスルが働き、腹圧(黄色矢印)によって内側からもしっかりと身体が支えられているので、腰や背中の筋肉の力(赤色矢印)が少なくても大丈夫です。

右では、腹圧(黄色矢印)が弱いため腰や背中の筋肉の力(赤色矢印)がたくさん必要になります。

この状態が続くと、腰や背中の筋肉が疲労、緊張し、徐々に痛みが出やすくなってしまうのです。

左のように腹部インナーマッスルをしっかりと使い、腹圧によって内側からも身体を支えられるような姿勢が理想なのです。

腹部インナーマッスルの使い方、トレーニングの仕方については、前回の記事( 腰痛にならない正しい身体の使い方とは?【川口陽海の腰痛改善教室 第62回】 )で取り上げておりますので、そちらもぜひご参考になさってください。

正しい良い姿勢=ニュートラルポジションになる骨盤ゆらしストレッチ

【正しい良い姿勢】をとりやすくするために効果的なストレッチがあります。

筆者の腰痛トレーニング研究所では、骨盤ゆらし・背骨ゆらしとして指導をしています。

以下を参考におこなってみてください。

自宅で出来る!腰痛トレーニングDVDより

※このエクササイズでは、コアヌードルという専用の器具を使用しています。
※半円型のストレッチポールで代用することもできます。
※タオルケットや毛布などを10~15㎝程度に丸めて代用することも可能です。

まずこのストレッチを始める前に、普通に床に仰向けになって、背中の当たり具合や浮き具合、背中の筋肉の硬さなどをチェックして覚えておいてください。

ストレッチを終えたあとに同様にチェックしてみて、変化効果をみてみましょう。

コアヌードルなどの上に仰向けになり、両手両足を広げて大の字になります。

そこから軽くおへその下(下腹部)を引っ込めるように締め、恥骨をみぞおちの方向に引き上げるようにします。

そうすると自然と腰の反りが減り、ポールに腰や背骨全体が軽く押し付けられるような状態になります。

お腹は少し力を入れますが、その他の全身は力を抜いて楽に呼吸を繰り返します。

この姿勢を大の字ストレッチといいます。

これだけでも背骨をニュートラルポジションにする効果がありますので、数分このストレッチをおこなうこともおすすめです。

この姿勢から、骨盤を左右にゆっくりと揺らしていきます。

この時に背中や腰の力は使わず、腹筋で骨盤を動かします。

あまり大きく揺らす必要はありません。骨盤が水平状態から20~30度程度左右に揺れる程度で良いでしょう。

背中や腰を反らさないようにしながら、骨盤をゆっくり左右に揺らすようにします。

腹筋でベルトのラインをポールに押し付けるようにできると、腰や背中が浮きません。

背中や腰が大きく反ってしまう場合は、背中や腰の力(筋肉)を使ってしまっています。背中や腰を使ってしまうと逆効果になりますので注意してください。

これをゆっくりと左右に20~30回、または数分続けてみましょう。

終わったあとに、最初と同じようにポールから降りて床に仰向けになり、背中の状態を比べてみてください。

背中や腰の浮き方が減り、柔らかくぺったりと床につくような感じになればOKです。

このストレッチをおこなうことで痛みが出たり、または痛みのためにこのストレッチ自体ができないようでしたらやめてください。

以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。

ぜひお読みください。

あお向けに寝ると腰や骨盤が痛む原因は?改善する2つのエクササイズ【川口陽海の腰痛改善教室 第49回】

ろっ骨をほぐすと腰痛が改善する理由とは?【川口陽海の腰痛改善教室 第60回】

腰痛・坐骨神経痛を自宅で改善! 自宅で出来る“殿筋ほぐし”【川口陽海の腰痛改善教室 第38回】

腰痛・坐骨神経痛を自宅で改善!(その2)手軽に出来る3つの殿筋ストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第39回】

拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。

文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html

腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(健康プレミアムシリーズ)川口陽海(著/文) 永澤守(監修) 発行:アスコム
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