なかなか治らない慢性腰痛では『ろっ骨の固さ』が原因になっているケースがあります。
簡単なストレッチで背中の筋肉や背骨がゆるみ、腰痛が改善します。
ろっ骨とは?
細長く弓状の骨であり、胸椎から胸骨にかけて内臓を取り囲む形で付いている。後端では胸椎のろっ骨窩および横突ろっ骨窩と関節を形成し、前端では肋軟骨となり胸骨と結合する。人間のろっ骨は全部で左右12対あり、合計24本存在する。
看護師の用語辞典 | 看護roo![カンゴルー]より
https://www.kango-roo.com/word/20840
ろっ骨の動きが固くなる
『ろっ骨の固さが腰痛の原因になる』と言われると、意外に感じる方も多いかもしれません。
筆者の腰痛トレーニング研究所を訪ねてこられる腰痛患者さんの半分くらいに、ろっ骨が固いケースが見受けられます。
より正確に言うならば、骨そのものの固さではなく、『ろっ骨の動き』が固いのです。
ろっ骨は先ほど見たように、左右12対24本の骨が、カゴのように肺や心臓などの重要な臓器を収めて守っています。
それぞれのろっ骨とろっ骨の間には『肋間筋』という筋肉があり、ろっ骨を拡げたり締めたりすることで肺を動かし、呼吸に関わっています。
また、胸や肩、肩甲骨周囲の多数の筋肉もろっ骨につながっています。
運動不足や長時間のデスクワーク、不良姿勢、睡眠不足、ストレスなどがあると、この肋間筋やろっ骨周囲の筋肉が固くなり、ろっ骨の動きが悪くなってしまうのです。
そしてろっ骨の動きが固くなると、次のような影響があらわれ、腰痛が起こることがあるのです。
■背中や腰などの筋肉が固くなる
■姿勢が悪くなる
■背骨の動きが悪くなり、腰に負担がかかる
■呼吸が浅くなり、全身や脳の血行が悪くなる
ろっ骨が固くなると、なぜ腰痛が起こるのか?
ろっ骨は背骨につながっていますので、ろっ骨が固くなると背骨(胸椎)が固くなります。
背骨はブロック状の椎骨が繋がった構造をしています。
背骨が動く時、例えば身体を前に曲げたり後ろに反らしたりする時は、一つひとつの椎骨が少しずつ曲がったり反ったりして、全体として大きな動きが生まれます。
しかし、ろっ骨が固くなると、胸椎部分の動きが悪くなってしまいます。
その状態で動こうとすると、他の部分、つまり腰(腰椎)や首(頸椎)がその動きを補うため、そこに大きな負担がかかります。
また脊柱起立筋など背骨の周囲の筋肉もろっ骨に付着しているものが多く、それらの筋肉も固くなってしまいます。
背骨やその周囲の筋肉が固くなると、背中から腰にかけて血行が悪くなり、疲労が回復しづらくなったり、老廃物がたまって発痛物質という痛みの原因となる物質が増えてしまったりします。
それだけでも腰に痛みがおこりますし、さらに腰や背中の筋肉にトリガーポイントと言われる発痛点が生じたりすると、そこから強い痛みがおこってしまいます。(下図)
上の図は、背骨を支える脊柱起立筋のトリガーポイントの好発部位と、そこから痛みが起こる範囲(赤い部分)を表しています。
脊柱起立筋が腰からろっ骨につながっているのがわかると思いますが(上図右)、これらの筋肉が固くなったり血行が悪くなったりすると、このような痛みがおこるのです。
このような痛みをトリガーポイントによる筋筋膜性疼痛症候群と言います。
トリガーポイントについては本連載ではおなじみですが、詳しくは以下のページをご覧ください。
腰痛・坐骨神経痛のトリガーポイント治療(https://www.re-studio.jp/backpain/pg122.html)
そしてこのような状態になると、ますますろっ骨の動きが固くなり、さらに周囲の筋肉が固くなり…、という悪循環に陥ってしまいます。
呼吸が浅くなると、脳や全身の血行が悪くなる
また、肋骨が固くなると知らずしらずのうちに呼吸が浅くなってしまいます。
呼吸が浅いと十分に酸素がとりこめず、自律神経の働きも悪くなるため、全身的に血行が悪くなりやすくなります。
それにより脳にも、痛みを感じやすくなってしまったり、意欲が減退したり、落ち込みやすくなったり、といった影響があらわれてしまいます。
とくに、脳には“疼痛抑制系”という痛みをやわらげる機能があるのですが、この働きが悪くなってしまうと、痛みを感じやすくなったり、痛みが治りにくくなったりして慢性化してしまうのです。
このようなことから、ろっ骨の動きが固いために腰痛がおこり、治りにくくなってしまうのです。
痛みと脳について詳しくは以下のページをご覧ください。
脳から治す腰痛治療 痛みに強い脳への回復法(https://www.re-studio.jp/backpain/brain.html)
ろっ骨は簡単にほぐすことができる
ろっ骨が固くなってしまっても、簡単なストレッチや体操で柔軟性を取り戻すことができます。
今回は寝ておこなえるろっ骨ほぐしストレッチをご紹介します。
ストレッチをする前に、クッションや座布団、丸めた毛布などをご用意ください。
ヨガマットをお持ちでしたら、半分ほど丸めた状態で使うとちょうど良いと思います。
アスコム『腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい』より
ストレッチ(1)
背中にクッションを当て、仰向けになります。
クッションの位置は上の画像のようにわきの下ぐらいの位置で、両手を横に開きます。
この位置に当てることで自然にろっ骨が開きます。
そのまま身体の力を抜き、楽に大きく深呼吸をしてください。
なるべくろっ骨を大きく開くように息を吸い、楽に吐いていきます。
ゆっくりと10回から20回ほどおこなってください。
※この姿勢で顎が上がり過ぎてしまったり、頭が床につかない場合は枕を入れておこなってみましょう。
※首や肩などに痛みやその他症状がある場合、この姿勢をとると症状が悪化することがありますので、注意しておこなうか、またはこのストレッチをおこなわないでください。
ストレッチ(2)
次に、そこから膝を立て、ゆっくりと左右に倒しながら楽に呼吸を続けます。
10回~20回ほどおこなってください。
足だけを左右に倒すのではなく、脇腹のあたりから大きくひねるように動かし、ろっ骨が動くようにしてください。
ストレッチ(3)
次に、(2)の状態から片側に膝を倒したままで、ゆっくり大きく深呼吸をします。
この姿勢で深呼吸をすることで、普段あまり動かないろっ骨の部分に息が入って動くような感覚があると良いです。
5回~10回ほどおこなってください。
片側が終わりましたら反対側も同じようにおこないます。
最後にまた(1)姿勢に戻って脚を伸ばし、楽に深呼吸を繰り返します。
5回~10回おこなってください。
終わったあとはクッションをはずして仰向けになってみましょう。
ストレッチをする前より呼吸が楽になったり、背中や腰が楽になったりする感覚があると良いです。
このストレッチをおこなうことで痛みが出たり、または痛みのためにこのストレッチ自体ができないようでしたらやめてください。
拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
ろっ骨をほぐして腰痛を改善する方法を多数ご紹介しておりますので、お読みいただけると幸いです。
以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。
腰痛改善ストレッチ ろっ骨をゆるめると腰痛が良くなる【川口陽海の腰痛改善教室 第37回】
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文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html