・骨盤が前傾し過ぎていることが主な原因
・腸腰筋のストレッチと骨盤後傾エクササイズで改善できる
あお向けに寝た時に、腰に痛みが出たり、仙骨や尾骨に痛みが出たりすることがあります。
横向きに寝たり、座っていたり立っている時などにはあまり痛みは出ません。
しかし夜寝る時や、体操をしようとあお向けに寝たりすると、腰や骨盤(仙骨や尾骨)に痛みを感じます。
このような症状でお悩みの方は少なくありません。
その原因はいったい何なのでしょうか?
原因は骨盤の過度な前傾
下の画像を見てください。左が正常な骨盤、右が過度に前傾した骨盤です。
骨盤の前傾とは、右のように骨盤が体の前方に倒れるように傾いていることです。
右のような状態になると、あお向けに寝た時、のみならず、腰や足の痛み全般の原因にもなってしまいます。
この状態であお向けに寝ると、下の画像のようになります。
正常な状態(画像上)であれば、お尻から腰にかけて広い面積で体重を受けやすいので、負担は少なくなります。
前傾が強いと(画像下)、尾骨など一部があたったり、腰の反りが大きいため背骨や腰周囲の筋肉に大きな負荷がかかったりして痛みがおこります。
あお向けになった時の痛みの原因は、骨盤の過度な前傾だとおわかりいただけたでしょうか。
ではなぜ骨盤の前傾が強くなってしまうのでしょうか?
骨盤を前傾させるのは腸腰筋
骨盤の前傾が強くなってしまうのはいくつか原因がありますが、主に股関節の屈筋と腰椎の伸展筋が原因となることが多いです。
股関節屈筋とは股関節を曲げる筋肉のことで、主な筋肉は腸腰筋などです。
腰椎伸展筋とは腰を反らす筋肉のことで、脊柱起立筋などがあります。
例えば下の画像のように、長時間デスクワークなどで座りっぱなしが続くと、股関節屈筋と腰椎伸展筋の両方が緊張してしまい、骨盤が前傾したまま固まってしまいます。
そして骨盤が前傾して固まったまま寝ようとあお向けになると、痛みが出てしまうのです。
あお向けに寝た時の痛みを改善するには、腸腰筋のストレッチをすることが効果的です。
腸腰筋のストレッチで骨盤前傾を改善する
腸腰筋が緊張すると、骨盤が前傾して痛みをおこしやすくなってしまいますから、逆に腸腰筋をゆるめれば痛みは起こりにくくなります。
それにはストレッチが効果的です。
腸腰筋のストレッチにもいくつかやり方がありますが、次の方法が比較的安全性が高く効果があります。
(1)片膝をついて片足を立てる姿勢をとる
(2) そこから股関節を前後に広げるように、前足に体重をかけて伸ばす(下画像)
(3)そのポーズで30秒ほどキープする。呼吸は楽に、体の力をできるだけ抜く。股関節の前側に伸び感があればOK
(4)ゆっくり戻す。これを片足2~3回ずつ繰り返す
この図ほど股関節が広がらなくても、股関節の前側に心地よい程度の伸び感があり、戻した時に腰や股関節周りが楽になる感じがあれば大丈夫です。
※このストレッチをおこなうことで痛みが出たり、または痛みのためにこのストレッチ自体ができないようでしたらやめてください。
骨盤後傾エクササイズをおこなうと更に効果的!
腸腰筋のストレッチだけでも効果が出ると思いますが、骨盤後傾エクササイズをおこなうと更に効果的です。
骨盤後傾とは、前傾の逆で骨盤が体の後方に倒れるように傾くことです。
骨盤後傾エクササイズとは、次のように腹筋を使って骨盤を後継させるエクササイズです。
筆者の腰痛トレーニング研究所では、次のような方法で、体幹インナーマッスルの強化と骨盤後傾エクササイズを同時におこなっています。
以下を参考におこなってみてください。
※画像では専用のポールに乗っておこなっていますが、床に寝たままおこなっても同じような効果があります。
1.床にあお向けになり両膝を立てた姿勢をとる。
2.腹式呼吸の要領で、鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、口をすぼめて天井に息を吹きかけるようにしっかりと吐き切る。
息を吸うのは軽く、吐くときはお腹の底からしっかりと吐き切ります。
3. 息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締める
うまくしっかり吐き切りながら肛門を締められると、下腹部に強く力が入り、固くなるのがわかります。
4.息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締め、恥骨を引き上げて腰を丸め、床に押し付ける。
恥骨を引き上げるとは、みぞおちの方に向けて腹筋で引き上げるようにすること(下画像オレンジ矢印)です。
すると骨盤は後傾方向に回転します(黄色矢印)。
5.このトレーニングを1日30回を目標におこなってみましょう。
いっぺんに30回でも構いませんし、10回ずつ朝昼晩のように分けても構いません。
トータルで30回が目安です。
30回以上できるようなら、やればやるほど効果は出ます。
しかし、腰や背中、脚などに余計な力みがあると、かえって痛みを起こすことがありますので、その点はご注意ください。
また効果が出てくるまでには少し時間がかかります。2週間から1ヶ月程度は根気よくトレーニングを続けてください。
このトレーニングをおこなうことで痛みが出たり、または痛みのためにこのトレーニング自体ができないようでしたらやめてください。
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拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
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